複数のNFLチームが伝説的なヘッドコーチ（HC）であるビル・ベリチックにカレッジフットボールへの転向を考え直す可能性について問い合わせている。その中にはラスベガス・レイダースも含まれており、情報筋によると、新たにレイダースのマイノリティオーナーとなったトム・ブレイディは最近、かつて同じチームに所属していたベリチックと、レイダースでの再会に向けて必要なことについて話し合ったという。

予想外の動きとして、ベリチックは現地12月11日にノースカロライナ大学のヘッドコーチに就任する5年契約に合意した。NFLでの約50年間のキャリアを経て、大学レベルのコーチとしての初年度に備え、ここ数週間はスタッフとロースターの編成に取り組んでいる。

しかし、レイダースがアントニオ・ピアースの去就を検討していた中で、ブレイディは最近、ベリチックと連絡をとっていた。ピアースはフルタイムのヘッドコーチとして過ごした唯一のシーズンに4勝13敗という成績にとどまったことを受け、火曜日に解雇されている。ブレイディとベリチックは共にニューイングランド・ペイトリオッツで6回のスーパーボウル制覇を成し遂げた。情報筋の話によれば、ブレイディはレイダースが持続的に勝利を収めるチームを確立するためにはベリチックのような専門知識や実績を持つコーチが必要だと考えているという。

ベリチックが結んだノースカロライナ大学との契約には、2025年6月1日（日）以前に退任した場合に支払うことになる1,000万ドル（約15億8,074万円）のバイアウト（契約解除金）が含まれている。ただし、今後数週間のうちにNFLに復帰した場合にこれが適用されるかどうかは明確ではない。いずれにせよ、バイアウトの金額はペイトリオッツ時代の報酬と比べるとわずかなものであり、NFLチームが支払う場合も、ベリチック自身が支払う場合も、契約の解除は比較的容易なものだと言える。

NFLで成功を収めたヘッドコーチがほとんどいない中、ベリチックの動向を注視し続けているチームは他にもある。ニューヨーク・ジェッツ、ニューオーリンズ・セインツ、シカゴ・ベアーズ、ジャクソンビル・ジャガーズ、ペイトリオッツ、レイダースはすでにヘッドコーチに空きが出ており、マイク・マッカーシーHCの契約が1月14日（火）に満了となるダラス・カウボーイズの状況も定まっていない。

レイダース以外に、ジャガーズもベリチックにとって魅力的な環境を提供できる可能性がある。レイダースのオーナーであるマーク・デイビスと同様に、ジャガーズのオーナーであるシャド・カーンはチームへの投資を惜しまない姿勢を見せており、最近では新しいトレーニング施設の建設や、来シーズン以降に建設が開始される14億ドル（約2,213億0,360万円）の“未来のスタジアム”に対する6億2,500万ドル（約987億9,625万円）の民間資金の拠出を行っている。

ある意味、ベリチックの状況は1年前にジム・ハーボーの獲得を巡って起きた競争を想起させるものだ。ミシガン大学をナショナルチャンピオンシップに導いたハーボーは母校からオファーを受けていた傍ら、ロサンゼルス・チャージャーズおよびアトランタ・ファルコンズと面談し、最終的にチャージャーズとNFL屈指の報酬を得るコーチになる契約を結んだ。

もちろん、72歳のベリチックがこれまでに一度もカレッジフットボールの指導を経験したことがないという点は異なる。しかし、ベリチックはハーボーと同様に優勝経験がある上に、ペイトリオッツと合意のもとで決別した後の1年間の休止期間を経て、高いレベルで勝利を追求する意欲を持っている。ベリチックにNFLチームからのオファーを検討する意欲がある場合、ハーボーのときと同じような競争は起こり得ると言えよう。

3年前にNFL復帰に興味を示したハーボーは、ミネソタ・バイキングスと面談を行ったが、バイキングスは最終的にケビン・オコンネルを採用した。ハーボーが選択肢を検討している間、ミシガン大学はそれを待ち続けた。2年前にデンバー・ブロンコス（最終的にショーン・ペイトンを採用）との面談に臨んだハーボーは、昨年に複数の選択肢があった中でチャージャースを選んでいる。

NFLチームは、リーグが近年意図的に遅らせているプロセスの一環として、ルーニールールに従い、ヘッドコーチを採用する前にマイノリティの候補者と複数回面談を行う必要がある。昨年に唯一、ベリチックとの面談を実施したファルコンズは、ベリチックと何度か話し合った後、シーズン最終戦から18日後の1月25日にラヒーム・モリスを採用した。

つまり、ベリチックがNFL復帰を真剣に考えるつもりでも、2025年の最終的な行き先が明らかになるまでには数週間かかる可能性がある。

【RA】