第1シードのライオンズを相手にコマンダースを勝利に導いたQBダニエルズ、「俺は常に信じている」
2025年01月20日(月) 10:42ヘッドコーチ(HC)ダン・クイン率いるチームは現地18日(土)夜に行われたディビジョナルラウンドの一戦に“勝ち目の薄い挑戦者”として臨んだ。しかし、試合後にはただの“強者”となっていた。
ワシントン・コマンダースが第1シードのデトロイト・ライオンズに45対31で圧勝した後、フォード・フィールドの奥深く、ビジター用のロッカールームでは音楽が鳴り響いていた。それは、全米で軽視されていた第6シードチームからのメッセージだった。
新人コーナーバック(CB)マイク・セインリスティルは試合後に「DJキャレドが“みんなは信じてくれなかったけど、神は信じてくれた”って言っていた。俺たちに必要なのは、チーム内の信頼、お互いに対する信頼、ここにある兄弟のような絆だ。兄弟のような絆、つながり、仲間意識。それが俺たちをここまで導いてくれた。俺たちはただお互いのためにプレーしている」と話している。
コマンダースは、相手チームを次々と打ち負かして15勝2敗のシーズンを達成したライオンズのスタジアムに、ただ試合をするために足を踏み入れたわけではなく、何らかの主張をしようとしていた。
ランニングバック(RB)オースチン・エイケラーは「大物になるなら、大物になるつもりであることを証明しなきゃいけない。大物になるには大物を倒さないと。それが(クインHCの)今日のメッセージだった」と語っている。
コマンダースは相手を圧倒し、リーグの大物を打ち負かした。
コマンダース守備陣は4回のインターセプト――うち2回はセインリスティルによるもの――と1回のピックシックス、試合序盤の重要なサックからのファンブルを含め、5回のターンオーバーを誘った。また、クオーターバック(QB)ジェイデン・ダニエルズが率いる中、ビッグプレーを生み出したオフェンスは、481ヤードを獲得し、パントを1回に抑え、5回のタッチダウンドライブを成功させている。
ディフェンスもビッグプレーによって521ヤードを稼ぎ出したライオンズ攻撃陣を押さえ込んだが、ダニエルズとオフェンスの勢いはそれを上回るものだった。コマンダースは3つの曲面すべてで優勢だったと言えよう。
セインリスティルは「誰が何を思うかなんて関係ない」とコメント。
「必要な信頼はチーム内の信頼だけ。俺たちはお互いを信じている。コーチ陣は俺たちを信じ、俺たちはコーチ陣を信じている。コーチQ(クインHC)が言うように、“誰でも、どこでも、いつでも”ということだ」
今回の試合はリーグ最高のオフェンスを相手にデトロイトで行われたプライムタイムの試合だった。
勝利を収めた後、ロッカールームでディビジョナルラウンドの勝利を祝うコマンダースの選手たちの周りに、ワシントンD.C.の著名人が集まった。元プロバスケットボール選手のマジック・ジョンソンは不敵な笑みを浮かべ、オーナーのジョシュ・ハリスは満面の笑みを見せていた。元HCジョー・ギブスはライオンズとコマンダースのジェネラルマネジャー(GM)を務めた経歴を持つマーティン・メイヒューと話しながら、何もかもお見通しだという薄ら笑いを浮かべ、群衆の中で一際目立っていたプロバスケットボール選手のケビン・デュラントは興奮している様子を見せていた。彼らの生き生きとした表情はすべて同じ思い、つまり“自分たちは一過性ではない何かを手に入れた”という考えを反映していた。
コマンダースは次世代のスーパースタークオーターバックを擁している。
土曜夜、ダニエルズの勢いは誰にも止められなかった。新人のダニエルズはパス31回中22回を成功させて299ヤード、タッチダウンパス2回、キャリアハイとなる16回のキャリーで51ランヤードを記録。パサーレーティングは122.9で、サックは一度も浴びなかった。
15勝を挙げた相手チームと、その応援に沸く観客を前にしても、ダニエルズがひるむことはなかった。それどころか、試合を通じてまばたきすらしていなかったかもしれない。終始、24歳のダニエルズは正しい判断を下し、プレッシャーを回避し、チームを不利な状況に追い込むことなく、必要な場面でビッグプレーを決めていた。
ライオンズが巻き返しを図ろうとするたび、ダニエルズはそれを阻止し、急成長を遂げた自身のチームが敗れるのを決して許さなかった。
ダニエルズはアンダードッグの立場について「俺は常に信じている。俺は常に、自分たちが人から評価されている以上のことを達成できると信じているんだ。でも、そのためにはやるべきことをやって、毎日努力し、日々成長していかなきゃいけない。ただひたすら集中して努力し、シーズンが終わる頃にふと顔を上げると、こういう状況になっているかもしれないということだ」と話している。
第3ダウンや第4ダウンでダニエルズがビッグプレーを生み出すたび、ライオンズファンのフラストレーションが高まっていくのが感じられた。このルーキーはルーキーのような振る舞いを見せない。ダニエルズはまさに物語を変える存在だ。
ダニエルズはボルティモア・レイブンズに所属していたジョー・フラッコ(2008年、ディビジョナルラウンドでテネシー・タイタンズを撃破)に続き、プレーオフで第1シードのチームを打ち負かした史上2人目の新人QBとなっている。
クインHCは「彼は他の選手とは違った落ち着きがある、稀有なコンペティターだ」と述べた。
「それについては疑いようがない。彼がもしバスケットボール選手だったら、最後のシュートを決めたいと思うだろう。ボールを扱う選手として、彼は自分の手にボールを持って違いを生み出したいと考え、フットボールで素晴らしい判断を下すのだ。それには真のマインドフルネスが必要だ」
冷静に正しい答えを見つけ出すクオーターバックと、重要なターンオーバーを生み出せることを証明したディフェンスを擁するコマンダースは、このおとぎ話がこれからも続いていくと信じている。
コマンダースは自分たちのことをアンダードッグと捉えているのかと質問されたセインリスティルは「自分たちをどう捉えているかは分からない。俺たちは自分たちのことを、とてもタフなチームだと捉えていると思う。自分たちの運命をコントロールできるチームだ」と答えた。
新人としてのプレーを見る限り、ダニエルズが運命をもコントロールしていたとしても不思議ではないかもしれない。
【RA】