コマンダースでプレーすることで「もう一度このゲームが好きになれた」とTEアーツ
2025年01月24日(金) 12:24タイトエンド(TE)ザック・アーツはNFLでキャリアを続けられると信じていたものの、33歳で新たなスタートを切る場所を見つけるのは簡単ではなかった。そんな中、アーツはヘッドコーチ(HC)、クオーターバック(QB)、そしてチームの方向性を一新し、再建途上にあるワシントン・コマンダース――数十年にわたり安定した勝利から遠ざかっているチーム――で新たな挑戦に臨むことにした。
現地22日(水)、アーツは「自分がまだ活躍できる選手であることを証明するチャンスがほしかった」と『The Philadelphia Inquirer(フィラデルフィア・インクワイアラー)』に語った。
アーツはフィラデルフィア・イーグルスで8年以上プレーし、その間にプロボウルに3度選出され、チーム初のスーパーボウル制覇に大きく貢献した。しかし、2021年シーズンの途中にアリゾナ・カーディナルスへトレードされてからは苦しい時間が続いた。度重なるケガに悩まされ、2年半で28試合に出場したものの、イーグルス時代と比べてパフォーマンスは大きく低下していた。
カーディナルスでヘッドコーチを務めていたクリフ・キングスベリーを追ってコマンダースに移籍したアーツは、そこでキャリアを再び軌道に乗せるチャンスを得た。
「コマンダースに来たことで、もう一度このゲームが好きになれた」とアーツは語る。
「プロセスそのものを楽しむことができ、周りには自分を最大限に活かしてくれる人たちがいる。すべてが本当に楽しくて、期待をはるかに超えている。ジェイデン(ダニエルズ)のようなクオーターバックと一緒にプレーできるのも大きい。彼の謙虚さと成長への意欲は本当に素晴らしい」
アーツはイーグルス時代、8年以上にわたり頼れるターゲットとして活躍した。通算579回のレシーブ数を記録し、殿堂入りワイドレシーバー(WR)ハロルド・カーマイケル(589回)に次いでチーム史上2位にランクイン。さらに、タイトエンドとしてのレシーブ数、レシーブヤード(6,267ヤード)、タッチダウン数(38回)はすべてチームの歴代最多記録となっている。
34歳になったアーツは、コマンダースでは以前とは異なる役割を担っている。今は記録を量産する選手というより、必要な場面で確実に結果を出す、チームにとっての頼れるよりどころだ。
「今の自分にとって、数字を稼ぐことはもう重要ではない」とアーツは言う。
「これまでのキャリアで十分なスタッツを積み上げてきた。今は、どんな形であれチームに貢献することが一番大事だ」
アーツは勝負どころでその存在感を発揮している。レッドゾーンでのターゲット数25回、キャッチ数16回はいずれもチームトップ。2024年シーズンには、プレーオフを含めたレッドゾーンでのタッチダウンキャッチ数が8回となり、タイトエンドの中でリーグ同率2位につけている。
脳しんとうや肩の問題、さらに今週の故障者リザーブ(IR)に登録される原因となった肋骨の痛みを抱えながらも、アーツは今シーズン一度も試合を欠場していない。ダン・クインHCの下で急速に活気づいたチームに、冷静で安定感のあるリーダーシップを提供している。
「NFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)チャンピオンシップゲームまで進んできたけれど、まだジェイデンとのQBとTEの関係は発展途上だと感じている」とアーツは話している。
「これからもっと成長していく余地があるということだ」
デトロイト・ライオンズと対戦したディビジョナルラウンドで、アーツはニューイングランド・ペイトリオッツに勝利した第52回スーパーボウル以来となるプレーオフでのタッチダウンを記録した。現地16日(日)の試合で、アーツはスーパーボウルで勝利を決めるタッチダウンを決めた時に属していたチームと、その後プレーオフで対戦する史上2人目の選手となった。史上初となったワイドレシーバー(WR)サントニオ・ホームズは、第43回スーパーボウルでピッツバーグ・スティーラーズの選手として決勝点を挙げた後、2010年のAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)チャンピオンシップゲームでニューヨーク・ジェッツの選手としてスティーラーズに敗れている。アーツはホームズとは異なる結末を迎えることを目指している。
「その場の雰囲気がどんな感じになるかは分かっている」とアーツは語っている。
「前回とは違った扱いを受けることは覚悟している。あの組織やそこに関わる人たち、そして地元コミュニティに対して俺がどう感じているかはみんな知っている。今も勝ち残っているのにはそれなりの理由がある。それと同時に、俺もこのチームが試合に勝つために全力を尽くすつもりだ。試合が始まれば、イーグルスの選手として過ごした9年間は関係なく、今のチームのためにできる限りのプレーをすることだけが重要だ」
「余計なプレッシャーを抱えながら臨むつもりはないし、誰かに何かを証明しようとも思わない。ただ、自分のベストを尽くすことだけを考えている」
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