ベンガルズDEヘンドリックソンが現行契約では2025年にプレーしないと発言
2025年05月14日(水) 14:34
シンシナティ・ベンガルズに対する不満を公に表明した翌日、ディフェンシブエンド(DE)トレイ・ヘンドリックソンはチームの施設に姿を現した。
現地13日(火)、ヘンドリックソンはオフシーズンワークアウトに参加しなかったが、新契約獲得に向けた取り組みを継続する機会を得るため、そして、少なくとも自分の立場から事実を可能な限り明確にするために、その場に現れたようだ。
『The Athletic(ジ・アスレチック)』によると、ヘンドリックソンは火曜日に現行契約のままではプレーしないつもりだと報道陣に明かし、それはヘンドリックソンが簡潔な受け答えをした25分間のメディアセッションで出した唯一の答えだったという。ヘンドリックソンは契約最終年にあたる今シーズンに基本給として1,580万ドル(約23億2,099万円)を受け取る予定だ。
また、ヘンドリックソンは6月10日(火)から12日(木)に予定されている参加必須のミニキャンプを約1カ月後に控える中で、ベンガルズのヘッドコーチ(HC)ザック・テイラーから“出席しない場合は罰金を科す”との通知をテキストで受け取ったことも明かしている。これについて「その期間内には何も実現しないことを示唆している」と語ったヘンドリックソンは、こう続けた。
「それだけじゃなくて、ドラフト後にコミュニケーション不足にもなったから、俺たち――妻や息子、代理人といった限られた身内――の間では、これではうまくいかないかもしれないと伝えざるを得ないということが明白になった。残念なことだし、そうなる必要はなかったと思っている。答えが出るまでは最善の結果を願うべきだったと思うけど、そうじゃないことが起きた。俺がOTA(チーム合同練習)に姿を現す重要性が尊重されていないように感じられることもそうだ。俺は多くの敬意を払ってきたつもりだ。誰かの人間性を非難するつもりはないけど、残念ではあった」
ヘンドリックソンはミニキャンプに参加するのだろうか? ベンガルズが妥協点を見出すことを望んでいるヘンドリックソンは、具体的な回答を避け、次のようにコメントした。
「予測分析はできないけど、このプロセスを通してずっと最善の結果を願ってきた。罰金について言及されたのは、昨日ザックから受け取ったメッセージだけだと思う。それが初めてだった。罰金が存在することは知っているし、ここに来てからいろいろな場面でそれを見てきた。罰金はNFLの一部だろ? 罰金を科されたら受け入れることになるだろう。個人的には、罰金の話をするにはちょっと早いんじゃないかと思った。家族を養う術やナショナル・フットボール・リーグでプレーするための環境を与えてくれた組織を守るために自分がとってきた行動を踏まえるとね」
明らかに、ヘンドリックソンは自分が努力、献身、成果という形で組織に示してきたのと同じだけの敬意と感謝を受けていないという感覚に不満を覚えている。それが、公の場で自分の感情を吐露し、火曜日のセッションで報道陣に対応しようと考える動機となったようだ。少なくとも、ヘンドリックソンは罰金を警告するメッセージを受け取った後に、自分の思いを吐き出す機会を得ている。罰金は、チームと選手の間で締結された団体労働協約(CBA)であらかじめ決められている措置だ。
「これまで、多くの選手たちが沈黙を保ち、真実を語ることで自由になれるという価値観に従ってこなかったと思う」とヘンドリックソンは話している。
「その価値観は、キリスト教徒として、子どもの頃に両親から教わったものだ。真実こそ道だとね。だからこそ難しい対話をし、真実を語るんだ」
「俺はフロリダ出身だから、サメの襲撃には“いわれのないもの”と“誘発されたもの”があることを知っている。今言われていること、コンバインでの出来事、オーナーたちのミーティングでの出来事、昨日受け取ったメッセージ。そういうことがあったからといって、何もせずに“次の一手をどうしようか”と考えていたわけじゃない。たいていのチームメイトが同意すると思うけど、俺は意見をためらうことなく言うタイプだ。感情的な選手だし、特に、去年みたいな状況では、試合に負けた後は勝った後よりもずっと話しづらくなるから、いつもはメディアと距離を置いている。だからこそ、ものすごく大きな敬意を持って臨んでいる。でも、今の状況は“誘発されたもの”だ」
「黙っていることが良い戦略だと言いたいところだけど、そうじゃないのは明らかだ。リーグ中の選手たちがそうしてきたし、去年はジャマール(チェイス)もその1人だった。彼はそのプロセスを通して規律を守り、素晴らしい仕事をしていた。彼が逆境を乗り越えた方法をとても誇りに思っているし、言葉では言い尽くせないほどだけど、彼は去年も、今年も、5年後でさえ、契約を結ぶに値する選手だ」
チェイスは注目を浴び続けた末に契約を獲得したが、それが連鎖的な影響を与えたのかもしれない。チェイスおよびWRティー・ヒギンズの契約をまとめた後、ベンガルズはヘンドリックソンに対して同じような措置をとることに積極的ではない様子を見せている。ヘンドリックソンは、2021年にフリーエージェント(FA)として加入し、そのときベンガルズが投資した金額(およびその後の契約延長で支払った金額)以上の活躍をしてきたにもかかわらずだ。
「構造に関して意見が一致していない、というような状況だ」とヘンドリックソンはコメント。
「向こうは短期契約を強く推しているように見えるけど、それだと2022年と同じ状況になる。目標は変わらないから、次の年にまた交渉しなければならなくなるということだ。去年より高いレベルでプレーしたとすれば、来年にまた問題を先延ばしにすることになる」
選手が自身のパフォーマンスを報酬に反映させられる期間は限られている。過去2シーズンで合計35回のサックを記録してきたヘンドリックソンは、まさに経済的な見返りを得る絶好のタイミングを迎えている。2024年シーズン終了後に守備コーディネーター(DC)を解雇するほど残念な成績を残したディフェンス陣を抱えているベンガルズにとっては、2025年にさらに調子を崩さないようにするためにも、ヘンドリックソンのような選手が不可欠だ。
論理的に考えれば、解決策は単純だ。ヘンドリックソンに報酬を与え、前進すればいい。しかし、そうする意思を示さないことは、ベンガルズが既に財政的にひっ迫し、ヘンドリックソンのような優秀な選手に適切な報酬を支払う余裕がない状況に陥っている可能性を示唆している。
そうした状況と、コミュニケーションを避けている姿勢により、2024年にオールプロのファーストチームに選出されたヘンドリックソンは不満を抱き、チームからのサポートがあるのかどうかに疑問を抱くようになった。
「それも難しい質問だな。ビジネスを個人的なものにしないように努力しているからね」と語ったヘンドリックソンはこう続けている。
「残念ながら、この1週間くらいで個人的なものになってしまったと思う。ビジネスでもプライベートでも、どんな関係においても、コミュニケーションが不足すると敵意は生まれるものだ。そうなると、明確な方向性がないまま、自分の中だけで物語ができてしまう」
「明確な方向性がないまま、コミュニケーションが不足していると、この4年間でどれほど素晴らしい扱いを受けてきたかよりも、これからどうなるかを考えるようになってしまう。これまでにも言ってきたように、俺の息子はすぐそこの病院で生まれて、妻はシンシナティVA(メディカルセンター)で働いているから、ここは俺のホームなんだ。ここがホームだって、昨日も書いたばかりだ。残念ながら、ビジネスと個人的な問題で板挟みになっている状況に対処しなきゃいけない。一方ではOTAを見て、芝生の匂いを嗅いで、これこそフットボールだと感じて、それを愛していないと言えばウソになる。でも、もう一方では、それにふさわしいタイミングがあって、そのタイミングが来る前に変えなきゃいけないことがたくさんあるんだ」
現在の状況が長引けば長引くほど、状況は悪化するだろう。ベンガルズは単に報酬を支払うだけでなく、契約延長を実現させるためにヘンドリックソンとの関係を修復する必要もあるかもしれない。両者の対立は深まりつつあり、近いうちに一気に激化する可能性もある。
【RA】