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昨季に精神面の準備で飛躍したファルコンズQBペニックスJr.、今季は先発としてプレーオフを目指す

2025年07月15日(火) 11:59

アトランタ・ファルコンズのマイケル・ペニックスJr.【AP Photo/Mike Stewart】

昨季、ルーキークオーターバック(QB)マイケル・ペニックスJr.が先発を務めたのは、アトランタ・ファルコンズにとって苦渋の決断だったが、本人はその瞬間に備えて準備を整えていた。

先日行われた元ファルコンズQBマイケル・ヴィックとの対談で、ペニックスJr.は、サイドラインから積極的に試合に関与することで、1年目の大半をチャンスへの準備に充てていたと語った。

「ほとんどはメンタル面での成長だった」と、ペニックスJr.はファルコンズが制作したインタビュー動画の中でヴィックに述べている。

「もちろん試合には出られなかったけど、サイドラインにいながら頭の中でできる限り試合をシミュレーションしていた。実際のプレッシャーやそういう感覚は再現できないけれど、例えばあの場面なら誰に投げるか、そういったことを考えることで、いざ出場したときに自信を持ってプレーできたんだ」

実際、ペニックスJr.はその舞台にしっかりと備えていた。5試合(うち先発3試合)でパス105回中61回を成功させ、775ヤード、タッチダウン3回、インターセプト3回を記録。数字だけを見れば特筆すべきものではないかもしれないが、映像からは強肩の持ち主であることが伝わり、ベテランQBのカーク・カズンズの不振を受けて出場したペニックスJr.が、ファルコンズの攻撃にそれまで以上の可能性をもたらしたことが見て取れる。

その3試合――ファルコンズは1勝しか挙げられなかったが――で十分な材料を得たチームは、自信を持って2025年シーズンにペニックスJr.を先発QBに昇格させる決断を下した。少なくとも、この決定によってトレーニングキャンプまでくすぶるはずだった疑問には終止符が打たれたが、それが成功を保証するわけではない。

その責任を背負うのはペニックスJr.だ。ヴィックとのインタビューで、まずチームメイトの理解に努めることが勝利への第一歩だと語っている。

自身のリーダーとしてのスタイルについて問われたペニックスJr.は、「影響力によって定義される」と回答。

「自分はいつも声を張るタイプではない。でも、チームメイトを理解したいと思っている。彼らを知れば知るほど、どう導けばいいかも見えてくるはずだ」

カズンズのボールセキュリティの課題が、実質的にファルコンズに先発交代を決断させた。ただしその判断は遅すぎ、プレーオフ争いに踏みとどまるために必要だったシーズン終盤の巻き返しにはつながらなかった。それでも、カズンズと4年総額1億8,000万ドル(約265億9,140万円)の契約を結んだわずか2カ月後にペニックスJr.を1巡で指名し、批判にさらされていたフロントオフィスにとっては、小さな勝利となった。

この問題が完全に過去のものになったわけではない。『Netflix(ネットフリックス)』で配信されたドキュメンタリーシリーズ『Quarterback(クォーターバック)』シーズン2の公開後、先発降格に関するカズンズの率直で感情的な告白が大きな注目を集めている。

しかしながら、ペニックスJr.自身の発言がこの問題を前向きなものへと転じている。ファルコンズファンが2025年に向けて前向きになれる理由を探しているなら、その答えは背番号9のサウスポーが持っている。本人は目標を極めてシンプルな言葉で語った。

「結局はフットボール。それが一番大事なんだ。フィールドに立てば、やることは変わらない。自分のチームに投げて、相手チームには投げない。それだけさ」とペニックスJr.は述べている。

ペニックスJr.の発言は決してカズンズへの当てつけではなかったはずだが、2024年にカズンズが14試合でリーグ最多となるインターセプト16回を記録し、急激に評価を落としたことをファンは思い出さずにはいられないだろう。ボールセキュリティは依然として最重要課題であり、ペニックスJr.が2年目で最も成長すべきポイントは、いかにボールを守るかに尽きる。

そこから先は、自慢の強肩とアスリートとしての資質を武器に、ファルコンズを2024年に一時は手が届きかけていた目標へと再び導くのみだ。

「ポストシーズン。絶対に行かないと」とペニックスJr.は話している。

「(ファルコンズファンは)俺たちが勝っている時はすごく盛り上がるから、またあの雰囲気に戻したい。勝って、街全体を熱狂させたいんだ」

それが昨年にファルコンズが描いた青写真とは違っていても、NFLの世界では状況は一瞬で変わる。勝者とは、プレッシャーに適応し、迷わず反応できる者。ペニックスJr.は2024年の失望を過去のものに変えるために、それを2025年に体現しようとしている。

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