スティーラーズとOLBワットが3年182億円の契約延長に合意
2025年07月18日(金) 10:11
アウトサイドラインバッカー(OLB)T.J.ワットとピッツバーグ・スティーラーズの対立が解消された。
『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートとトム・ペリセロが現地17日(木)に報じたところによると、4度のオールプロ選出を誇り、2021年ディフェンス部門年間最優秀選手賞にも輝いたワットがスティーラーズと3年1億2,300万ドル(約182億6,236万円)の契約延長に合意し、リーグで最も高い報酬を得る守備選手になったという。
今回の契約によって年平均4,100万ドル(約60億8,745万円)を受け取るワットは、クリーブランド・ブラウンズのディフェンシブエンド(DE)マイルズ・ギャレットが今年3月に結んだ4年1億6,000万ドル(約237億5,592万円)という記録的な契約を年平均額でわずかに上回ることになった。エッジラッシャー市場に新たな基準が打ち立てられるのは今年で3度目だ。また、ワットはシンシナティ・ベンガルズのワイドレシーバー(WR)ジャマール・チェイス(4,030万ドル/約59億8,352万円)を上回り、クオーターバック(QB)以外で最高の年額を手にする選手となる。
ワットのスティーラーズ組織内での重要性は決して軽視できない。7シーズン連続でプロボウルに選ばれ、直近の6シーズン中5シーズンでオールプロの栄誉を手にしてきたワットは、ギャレットと共に毎年のようにディフェンス部門年間最優秀選手賞の最有力候補となっている。キャリア通算ではサック108回、フォースドファンブル33回、タックル462回(うちフォーロス126回)、インターセプト7回を記録し、大型の契約延長に値する一流ディフェンダーとしての地位を確固たるものにしてきた。
ワットの契約はスティーラーズにとって何を意味するのか?
ワットの契約は多くのタスクを抱えていたスティーラーズのジェネラルマネジャー(GM)オマール・カーンにとって解決すべき最後の項目となっていた。それをクリアしたことで、スティーラーズは最も重要な選手に関する懸念を抱えることなく、キャンプに臨めるようになっている。
ワットはコーナーバック(CB)ジャレン・ラムジー、セーフティ(S)フアン・ソーンヒル、オレゴン大学出身の新人ディフェンシブタックル(DT)デリック・ハーモン、CBダリウス・スレイといった選手を新たに迎えたディフェンスに貴重な戦力として戻ってくる。新加入の選手が多いことから調整期間は必要になると予想されるが、スティーラーズは構想上、1年前よりも強くなっているように見える。ワットが重要な役割を担うことが確実となったこともその大きな要因だ。
2025年の先発クオーターバックとしてアーロン・ロジャースを迎え入れたことから、スティーラーズのベテラン選手が7月23日(水)にトレーニングキャンプに集合する際には、ペンシルベニア州ラトローブにあるセントビンセント大学に大きな注目が集まるだろう。しかし、幸いなことに、チームメイトたち(例えばベテランDTキャメロン・ヘイワードなど)がワットの契約内容に関する無数の質問にさらされることはない。
ワットが契約延長を実現できないかのように思われた時期もあった。ワットは参加必須のミニキャンプを欠席し、4月にはピースサインを掲げた自身の写真をソーシャルメディアに投稿。スティーラーズファンの間には、8シーズンにわたって活躍してきた最も重要な選手がいなくなってしまうのではないかという不安が広がった。そうした不安はさまざまな動きがあったオフシーズンを通して続いたが、カーンGMはその間にワイドレシーバーのD.K.メットカーフをトレードで獲得した上で、フリーエージェント(FA)だったロジャースと契約し、チームのオフェンスを再編。さらには、Sミンカ・フィッツパトリックを手放す見返りとしてラムジーおよびタイトエンド(TE)ジョンヌ・スミスを獲得するというマイアミ・ドルフィンズとの大型トレードも実行した。
ワットの契約はまさにその締めくくりにふさわしいものとなっている。10月に31歳を迎えるワットの契約期間は、今回の延長を受けてあと4年となった。そのため、ワットがキャリアを始めたスティーラーズで現役生活を終える可能性は高くなっている。
この契約はエッジラッシャー市場にとって何を意味するのか?
ワットの契約は完全保証ではないものの、間違いなくその実績にふさわしい内容であり、一部では当然の結果ともみなされている。それが成立した今、次なる注目は2人のエリートラッシャー――ベンガルズのDEトレイ・ヘンドリックソンとダラス・カウボーイズのラインバッカー(LB)マイカ・パーソンズ――そして、急成長中のスター選手であるデトロイト・ライオンズのDEエイダン・ハッチンソンへと移るだろう。
現在、ベンガルズと対立状態にあるヘンドリックソンは、公の場で不満も表明しているが、両者の交渉がまとまりそうな気配はほとんどない。直近の2シーズンで連続して17.5回のサックを記録し、2024年にはその記録でNFLトップに立ったヘンドリックソンは、複数年の契約延長を求めるに値する成績を残してきた。ワットは年平均額でギャレットの契約を100万ドル(約1億4,847万円)程度しか上回らなかったため、契約最終年を迎えるヘンドリックソンの交渉上の立場は今後も大きく変わらないだろう。『Over The Cap(オーバー・ザ・キャップ)』によると、ベンガルズは6月初旬にLBジャメイン・プラットを放出して約600万ドル(約8億9,085万円)のキャップスペースを確保し、実質的に使える金額が3,190万ドル(約47億3,634万円)になったという。つまり、ベンガルズにはヘンドリックソンにワットらと同等の契約を提示する余地があるものの、それは予算の限界を試すことにもなりそうだ。
少なくとも、ワットの契約は、トレーニングキャンプを間近に控えるベンガルズにヘンドリックソンとの交渉を急ぐようさらなる圧力をかけるものとなっている。しかし、だからと言って8月まで交渉が長引かないとは限らない。
ラスベガス・レイダースのDEマックス・クロスビー、ギャレット、そしてワットの契約によって市場が高騰したことを受け、カウボーイズはチームに有利な条件でパーソンズと契約を結ぶチャンスを逃してしまったことをすでに認識している。カウボーイズは間違いなく、パーソンズを確保するために多額の報酬を支払うことになるだろう。プロボウルに4回、オールプロのファーストチームに2回選出された実績を持ち、試合の流れを一変させる能力を秘めるパーソンズは、トップクラスの報酬を要求するはずだ。パーソンズは2025年に新人契約の最終年を迎えるが、両者が合意に近づいている兆候はほとんど見られないため、パーソンズの契約問題は今後数週間、場合によっては数カ月にわたって話題となり続けるだろう。
ライオンズはカウボーイズやベンガルズと比べてハッチンソンとの交渉に時間的な余裕があり、その時間を活用する可能性もある。ハッチンソンがディフェンス部門年間最優秀選手賞の最有力候補になりつつあった2024年シーズンの途中に見舞われた深刻な脚のケガから回復途中であることを踏まえるとなおさらだ。新人契約の期間が2年残っているハッチンソンには、自身の価値をチームに証明する時間がある。ライオンズは主力選手と早い段階で契約を結ぶことをいとわないチームだが、今回は双方にとって合理的な契約をじっくり練ることもできるだろう。
【RA】