セインツSマシューが12シーズンのキャリアに幕
2025年07月23日(水) 11:54
タイラン・マシューが7月下旬に予想外の展開として引退を表明した。
ニューオーリンズ・セインツが現地22日(火)、さまざまな功績を残してきたセーフティ(S)のマシューが12シーズンにわたるNFLキャリアに幕を下ろすと発表した。
2024年シーズンは物足りない成績に終わったものの、33歳のマシューは2025年にセインツのディフェンスの後方で元チームメイトのジャスティン・リードと再びタッグを組み、注目を集めるセーフティコンビを形成することが期待されていた。しかし、ルイジアナ州出身のマシューは2025年初頭のコーチ交代を経て過渡期にあるセインツを離れる決断を下している。
セインツのジェネラルマネジャー(GM)ミッキー・ルーミスは火曜日に「少し驚いているが、事前にある程度知らされていた」とコメント。
「タイランと彼が成し遂げてきたことに、ただただ大きな敬意を抱いている。彼はルイジアナの伝説的な選手であり、NFLの伝説的な選手でもある。私たちと一緒に過ごしてくれたことに心から感謝している。彼は素晴らしい選手だ。そして素晴らしいキャリアを歩んできた」
火曜日の発表は、不確かな状況から始まりながらも数多くの称賛を受けてきた12年間のキャリアに終わりを告げるものとなっている。マシューは複数のチームを転々としながら過ごしてきたが、所属したどのチームにも貢献してきた。オールプロのファーストチームとプロボウルにはそれぞれ3回ずつ選出され、カンザスシティ・チーフス時代にはスーパーボウル制覇を経験。プロフットボール殿堂の2010年代オールディケイドチームにも選ばれており、それは将来的にマシュー自身が殿堂入りを果たすことを示す兆候となっている。
ルイジアナ州立大学(LSU)時代にコンセンサス・オールアメリカンおよびサウスイースタン・カンファレンス(SEC)守備部門年間最優秀選手に選ばれたマシューは、高く評価されていた有望選手だったものの、フィールド外での問題が影響し、2013年ドラフトでは3巡目まで順位を落とした。アリゾナ・カーディナルスはドラフト全体69位でマシューを指名し、その成果を享受。マシューは2013年にディフェンス部門年間最優秀新人賞の有力候補に名乗りを上げ、2015年にはオールプロのファーストチームに選出された。しかし、その後の契約交渉がこじれたことでチームから放出されている。
マシューは2018年に1シーズンだけヒューストン・テキサンズで過ごした後、2019年に勢いを増していたチーフスと契約。守備コーディネーター(DC)スティーブ・スパグニョーロが展開するアグレッシブなディフェンスを支える万能なセーフティとして重要な役割を果たした。身長約175cm、体重約86kgと小柄ながら、泥臭いプレーも厭わず、2019年シーズン終盤に調子を上げたディフェンスで数多くのプレーを決めたマシューは、チーフスがフランチャイズ史上2度目のスーパーボウル制覇を果たすのに貢献した。
チーフスでの3年間で数々の重要な試合に出場したマシューは、2022年にセインツと契約し、地元に戻った。セインツで過ごしたキャリア最後の3シーズンでは全試合に先発出場し、タックル228回、パスディフェンス24回、インターセプト10回、フォースドファンブル3回を記録。マシューは輝かしいキャリアを歩んできた誇りを胸に、フットボールを始めた地で競技人生に終止符を打つことになった。
マシューの引退は2025年にセインツのディフェンスにどのような影響を与えるのか?
2024年に守備重視のヘッドコーチ(HC)デニス・アレンを解任した後、守備面の立て直しを図っていたチームにとって、オフシーズンにリードと3年3,150万ドル(約46億1,603万円)の契約を結んだことは素晴らしい成果だと見られていた。リードはマシューにとって理想的な相棒であり、2人は豊富な経験を持ちながら、今なお違いを生み出せる選手だからだ。
しかし、今後は1人しか残らない。
マシューが2024年シーズンに低調だったことは、彼の全盛期が過ぎたことを示唆していたが、セインツは2025年にそれを最優先課題と見なしていなかった。セインツは、マシューの下で学んでスペシャルチームで活躍し、ディフェンスのローテーション要員として貢献することを期待して、ドラフト3巡目でバージニア大学出身のSジョナス・サンカーを指名。マシューの電撃引退により、サンカーはすぐに先発の座をつかむチャンスを得ることになるが、その一方でルーミスGMは急いでセーフティの補強を図る見込みだ。
ルーミスGMはマシューの引退を受けて“確実に”ディフェンシブバック(DB)を補強すると報道陣に明かし、「私たちを助けてくれる選手を探すつもりだ」とつけ加えている。
依然として契約先が決まっていないベテランSジャスティン・シモンズは、2024年にアトランタ・ファルコンズでプレーしたことでNFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)南地区に精通しているものの、2025年には優勝候補チームに加入することを希望している。今季のセインツに対する期待値は低いため、シモンズをチームに引き入れるには、報酬や即戦力としてのチャンスといった説得材料が必要になるかもしれない。
まだ契約を結んでいない選手としては、元コルツSジュリアン・ブラックモンや、32歳のベテランSクアンドレ・ディッグスが挙げられる。『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートによると、ディッグスは足のケガから完全に回復し、プレー可能な状態になっているという。
選択肢があるとはいえ、トレーニングキャンプが始まる今、セインツはマシューの引退によって急遽生じた穴を埋めるため、迅速な対応が求められている。
【RA】