ニュース

2025年シーズンに向けて知っておくべきネクスト・ジェン・スタッツの新指標

2025年09月05日(金) 12:37

NFLロゴ【NFL】

『Next Gen Stats(ネクスト・ジェン・スタッツ/NGS)』のチームはオフシーズンを通じて研究に取り組んできた。選手やチームが未来に向けて絶え間なくトレーニングや戦略立案を行うのと同様に、NGSの研究アナリストやエンジニアのチームもデータサイエンスとフットボール、そしてAIの接点における運用方法を改善すべく、毎オフシーズン努力を重ねている。その成果は、レギュラーシーズンやプレーオフの放送、情報分析プラットフォーム『NFL PRO』、NGSの記事、各チームのフロントオフィスなど、随所に現れるだろう。近年と同様に、2025年に向けての新しい取り組みを紹介する。

カバレッジレスポンシビリティ
ネクスト・ジェン・スタッツの開始以来、パスが到達した時点でレシーバーに最も近い守備選手をターゲットとしてカウントするという基本的なロジックに依拠してきた。この方法は方向性としては正しかったものの、守備選手のパフォーマンスを正確に測る手段としては単純すぎるものであった。

カバレッジレスポンシビリティについて紹介する。NGSはアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)と提携し、カバレッジの役割やパフォーマンスをより正確に定量化するための一連のモデルを構築した。これらのモデルはすべて同じトランスフォーマーアーキテクチャを使用しており、各選手の空間的および時間的な動きを0.1秒ごとに正確に解析することができる。各ディープラーニング分類モデルの出力を活用することで、カバレッジに入った各守備選手のアサイメントやマッチアップをリアルタイムで把握できるようになり、ターゲットとなったレシーバーに対して最終的な責任を持つ守備選手も特定できるようになった。

この一連のモデルにより、コーナーバック(CB)とワイドレシーバー(WR)の注目マッチアップを詳細に分析できるようになった。これにより、どの守備選手がセーフティ(S)のサポートを受けているか、誰がマンカバレッジで単独になっているかを確認できる。さらに、フレーム単位の予測を用いることで、スナップ時に守備選手が意図を偽装したのか、それとも攻撃選手が他の守備選手のゾーンを通過した際にレシーバーのマークを他の守備選手に引き渡したのかを把握できる。

カバレッジディスガイズ(相手を惑わす戦術)の定量化
守備コーディネーター(DC)ビック・ファンジオが率いるフィラデルフィア・イーグルスやブライアン・フローレスDCが率いるミネソタ・バイキングスなど、リーグ屈指のディフェンスを誇るチームは、スナップ前に混乱を招くため、カバレッジパターンやセーフティの配置を偽装する戦術にますます頼るようになっている。2025年の“Big Data Bowl(ビッグデータボウル)”(スポーツデータ分析コンテスト)で優勝したスミット・バジャジとヴィシャク・サンドワーは、自身の提出作品で偽装カバレッジモデルを取り入れており、NGSはこの研究を新たな分類モデルの着想源として活用した。

NGSはトラッキングデータを用いてクオーターバック(QB)がスナップ前に何を見ているかを推定する、スナップ前モデルを実用化した。次に、その結果とスナップ後の分類を比較する。守備がスプリットセーフティゾーンを示しておきながら、シングルハイマンに回った(あるいはカバー0にスピンした)場合、それを偽装とフラグ付けする。これにより、スナップ前にクオーターバックを最も混乱させるディフェンスを定量化すると共に、そのローテーションを見抜いて打ち破るクオーターバックを明らかにすることができるようになった。

コンプリーションプロバビリティ2.0
コンプリーションプロバビリティはNGSが2018年に導入した最初の機械学習モデルで、フィールド上の状況からパスが成功する確率を推定するものだ。NGSは2025年にこのモデルを再構築および拡張し、パスキャッチの難易度をより正確に表現するため、重要な要素を追加した。

セパレーションや深度、サイドラインまでの距離といった従来の要素に加え、コンプリーションプロバビリティ2.0では遮蔽認識セパレーションが導入されている。これは、守備選手がボールの軌道上に直接入り、キャッチポイントで積極的に競り合っている場合に、そのパスをより難しいものと判定する仕組みだ。結果として、ターゲットとなった選手が守備選手に密着され、本当に狭いウインドウになっているケースと、守備選手が近くにいても戦術の影響で簡単に通せるパスとを区別できるようになった。また、パス軌道やパスの狙い所に対するクオーターバックの動きを考慮した新たな要素も取り入れられている。

2025年におけるその他の新機能
◆モーションタイプの拡大:モーションは一種の言語であり、NGSはその種類を拡充している。シフト、スナップ前モーション、スナップ時モーションに加え、現在ではジェット、オービット、フライ、グライド、エグジットを含む19種類の高度なモーションタイプを分類するようになった。リーグ全体のモーション使用率は2018年以降に大きく上昇し、昨シーズンには最高値に達している。これらの詳細な分類により、攻撃チームがこれらの戦略を効果的に活用する方法がより正確に把握できるようになった。

◆チップブロック:エッジラッシャーはゲームプランに大きな影響を与える。チップブロックモデルは有資格のレシーバーがリリース前にラッシャーを有意にチップブロックした場合を特定し、ダブルチームやプロテクションの補助の状況をより正確に把握できるようにするものだ。

◆予想される残りのポゼッション数:ゲームマネジメントは時間、スコア、そして機会を見極めることがすべてだ。どのプレーにおいても、ポゼッション終了後に試合全体であと何回のポゼッションがあるかを、0回から6回以上までの範囲で確率として推定できるようになった。これにより、コーチは第4ダウンや2ポイントコンバージョン、タイムマネジメントの判断に対するより正確な指標を得られ、ファンは試合終盤にドライブのテンポや選択が変化する理由をより明確に理解することができる。

◆Prime Vision with Next Gen Stats(プライム・ビジョン・ウィズ・ネクスト・ジェン・スタッツ):『Prime Video(プライム・ビデオ)』の代替映像配信が、強化された予測機能とともに第4シーズンを迎える。その目的は変わらず、複雑なトラッキングデータをリアルタイムで見て楽しめる情報に変換することだ。

【RA】