チーフス対チャージャーズ、ブラジルでのシーズン初戦における3つの見どころ
2025年09月05日(金) 14:47
カンザスシティ・チーフス対ロサンゼルス・チャージャーズ
会場:コリンチャンス・アリーナ(ブラジル・サンパウロ)
日程:9月5日(金)アメリカ東部時間20時【日本時間6日(土)9時】
NFLは2年連続でブラジルで試合を実施する予定だ。今年はシーズン開幕戦と日曜日に組まれているシーズン第1週の試合の間をつなぐ試合として行われる。
今回、サンパウロのファンは昨季のプレーオフ進出チーム同士によるAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)西地区対決を楽しむことができる。そこではカンザスシティ・チーフスとロサンゼルス・チャージャーズがシーズン序盤にプライドをかけた戦いを繰り広げる見込みだ。
昨季の2試合でいずれもチャージャーズに勝利したチーフスは、地区制覇を達成し、チャージャーズに対する連続勝利数を7に伸ばしたが、2024年の対決における両チームの得点差は合計でわずか9点だった。
両チームとも、敗退するきっかけとなったプレーオフでの大敗から長い時間を耐えてきた。チャージャーズがワイルドカードラウンドで32対12の大敗を喫した一方で、チーフスは第59回スーパーボウルでの40対22の惨敗(一時は34点もの差がついた)により、3連覇への道が断たれている。
金曜日には、ついにフィールド上で新たな一歩を踏み出す機会が訪れる。この試合は、NFLが世界中で成長を続ける中で、ブラジルでの開催となる。
まず、カンザスシティ・チーフスのクオーターバック(QB)パトリック・マホームズは2025年にどのような姿を見せるだろうか。かつて手がつけられない存在だったマホームズは、勝利を重ね続けてはいるものの、近年はやや抑えられるようになってきた。2度のMVP受賞者であるマホームズは、2024年シーズンに1試合あたりのパスヤード(245.5ヤード)とパス1回あたりの獲得ヤード(6.8ヤード)でいずれの過去最低の数字を残した。また、2024年シーズンはマホームズが2018年に先発となって以来、初めて4,000ヤード超えを達成できなかったシーズンにもなっている。チーフスはマホームズが先発としてプレーした最初の5年間に得点ランキングで6位以下に落ちたことがなかったのに対し、直近2シーズンでは連続して15位に終わった。
チーフスの攻撃力低下は、1つの要因だけによるものではない。ディフェンスが強力になったことで、オフェンスはより計画的で慎重なアプローチでポゼッション時間を支配できるようになったが、その一方で安定して活躍できるパスキャッチャーが不足しているのも事実だ。マホームズはスーパーボウルでの敗北を挽回しようと再びロングパスを繰り出すのだろうか。それとも、チーフスでは近年の傾向がもう1シーズン続くのだろうか。
マホームズは、昨年明らかに衰えの兆候を見せたタイトエンド(TE)トラビス・ケルシーにもう少し“時の流れ”を食い止めてもらい、ワイドレシーバー(WR)ゼイビア・ワーシーにはルーキーシーズン終盤に示した成長をさらに続けてもらう必要がある。ラシー・ライスが最初の6試合で出場停止となり、新人のジェイレン・ロイヤルズがシーズン初戦を欠場するため、マーキス・ブラウンやジュジュ・スミス・シュスター、タイクアン・ソーントンが活躍する必要がある。昨季に被得点で1位につけたチャージャーズの守備陣相手にそれを実現するのは容易ではないだろう。
チャージャーズのQBジャスティン・ハーバートの武器が一新されたことにも注目すべきだ。チャージャーズのヘッドコーチ(HC)ジム・ハーボーは7月に、ハーバートの最大の弱点は、実は周りの選手がハーバートのレベルに達していないことだと語った。それが事実かどうかはともかく、そうした状況を改善する方法の1つはプレーメーカーを充実させることであり、チャージャーズはまさにそれを実行した。
チャージャーズはドラフト1巡目でランニングバック(RB)オマリオン・ハンプトンを指名してRBナージー・ハリスを獲得し、新たなバックフィールドコンビを形成。ハリスはオフシーズン中に目を負傷したものの、試合に出場する準備は整っている。また、チャージャーズはドラフト2巡目でWRトレ・ハリスを指名。トレーニングキャンプ中には1年チームを離れていたベテランWRキーナン・アレンがチームに戻り、13年目のシーズンを迎えることになった。素晴らしいルーキーシーズンを過ごしたラッド・マコンキーは、補強のおかげで相手ディフェンスのマークが少しゆるくなるはずだ。
クエンティン・ジョンストンも依然として戦力であり、2024年にはチーム最多8回のタッチダウンレシーブを記録したが、好不調の波が激しく、パスを落とすことも多い。新戦力によって、ジョンストンが毎週のようにWR2の役割を担わなければならないというプレッシャーは軽減されるだろう。チャージャーズはTE陣も強化しており、4年連続で50回以上のキャッチを記録しているタイラー・コンクリンを獲得し、ウィル・ディズリーとタッグを組ませている。
チャージャーズには未確定要素が多く、レフトタックル(LT)ラショーン・スレーターがシーズン絶望となったことで、それらをスムーズに組み込む難易度は一気に上がった。それでも、ハーバートの周囲の戦力は昨年の今頃に比べてはるかに多彩で強力になっている。最初の試金石として、強敵チーフスとの試合ほどふさわしいものはないだろう。
さらに、この対戦は今後の行方を占うものにもなる。現時点では当然、チーフスが優位だと考えられているはずだ。チーフスはAFC西地区で9連覇を果たしており、あと1度地区優勝すれば、10年連続で地区タイトルを獲得したNFL史上2つ目のチームとしてニューイングランド・ペイトリオッツと肩を並べることになる。
マホームズのシーズン初月の戦績は19勝4敗となっており、9月の勝率.826はスーパーボウル時代においてダラス・カウボーイズの伝説的なQBロジャー・ストーバック(22勝4敗、勝率.846)に次ぐ記録だ。さらに、前述の通り、チャージャーズは2021年シーズン以降、宿敵のチーフスに勝利していない。
しかし、状況は常に変わるものだ。優勝チームを築くことで知られるハーボーHCは、丸1年をかけてその影響力を浸透させてきた。両チームは共に、激しいディフェンスやトップクラスのQBを擁し、プレーオフ進出の可能性を十分に秘めながら海外で対戦する。勢いを増しているデンバー・ブロンコスも無視できないが、昨年に地区内で1位と2位につけたのはチーフスとチャージャーズだ。
チャージャーズが今度こそチーフスに勝利できれば、飛躍を遂げる第一歩をついに踏み出せるかもしれない。チャージャーズが敗れた場合、チーフスは昨季に競り合った地区ライバルに対して依然として優位に立っていることを確認した上でカンザスシティに戻ることになるだろう。
【RA】