チーフスQBマホームズのトリックプレーにレイダースが屈辱の完封負け
2025年10月20日(月) 11:56
現地19日(日)の試合で、ラスベガス・レイダースは自陣40ヤード地点で第4ダウン残り1ヤードという場面に直面したカンザスシティ・チーフスを止めようと守備を固めた。この時点でレイダースはすでに1タッチダウンのビハインドを背負っていたが、AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)西地区の長年のライバル対決の行方は、まだ分からなかった。
クオーターバック(QB)パトリック・マホームズがセンターに位置取ると、守備を見渡しながら数回声を張り上げて指示を送る。続いて、レイダースの選手に聞こえるだけでなく、検閲をかける間もなくテレビ中継のマイクにも拾われくらい大きな声で、次のように叫んだ。
「このプレーはいつも(放送禁止用語)うまくいかねえんだよ!」
それは完全なフェイクだった。レイダースはまんまと引っかかった。チーフスがスナップせずに反則を誘い、パントに終わると考えたレイダースは、ほんのわずかに気を緩めてしまった。その直後にマホームズがスナップを受け、ランニングバック(RB)カリーム・ハントにボールを渡すと、ハントはディフェンスの隙を突いてファーストダウンを獲得。チーフスはそのままドライブを締めくくるタッチダウンを決め、後は一切振り返ることなく、最終的に31対0で完封勝利を収めた。通算133度目の対戦にして、チーフスがレイダース相手に挙げた最多得点差での完封勝利となった。
試合後、演技の腕前について聞かれたマホームズは「全部、ステート・ファーム(保険会社)のCMで鍛えたおかげだと思う」と笑いながら答え、会場は爆笑に包まれた。
この日、レイダースは多くの人々から笑いものにされた。
レイダースが獲得したファーストダウンはわずか3回。これは同じ回数に終わった2008年11月2日のアトランタ・ファルコンズ戦以来の少なさだった。攻撃プレー数はスーパーボウル時代では2番目に少ない30回。最少記録は拡張チームとして初戦でピッツバーグ・スティーラーズと対戦したブラウンズの28回だ。さらに総獲得ヤードは96ヤードと、チーム史上4番目に少ない記録となった。
一方のチーフスは434ヤードを積み上げ、第3ダウンの成功率は15回中9回。一時は9回中8回成功という高効率を見せた。60分間の試合時間のうち、チーフスの攻撃時間が42分8秒だったのに対し、レイダースはわずか17分52秒だった。
レイダースのQBジーノ・スミスは「自滅したようなものだ」と振り返った。この日のスミスは16回のパス中10回成功、わずか67ヤードにとどまり、交替で出場したケニー・ピケットは最初に受けたスナップをファンブルしている。
「彼らは本当に素晴らしいチーム。歴史的にも偉大なチームだ」とスミスは語った。
「長く一緒にプレーしてきていて、勝つために何が必要かを理解している。それに比べて俺たちはまだ発展途上のチームだ。だから、試合の入り方を間違えたり、序盤に自分たちでチャンスをつぶしたりすれば、そこからは険しい上り坂になる」
レイダースにとって苦戦はキックオフ前から始まっていた。オールプロにも選ばれているタイトエンド(TE)ブロック・バワーズが膝の負傷で欠場し、ワイドレシーバー(WR)ジャコビ・マイヤースも膝と足指のケガで戦列を離れた。さらに前半終盤には、守備の要であるディフェンシブエンド(DE)マックス・クロスビーが膝を痛めて退場。ディフェンシブタックル(DT)アダム・バトラーも背中の負傷で戦線を離脱した。
険しい上り坂どころか、まるで垂直の壁を登るような感覚だっただろう。
ヘッドコーチ(HC)ピート・キャロルはクロスビーの膝について「少し痛みがある」と説明し、「本人はプレーを続けたがっていたが、明らかに万全ではなかったので交代させるしかなかった」と述べている。クロスビーはケガの程度を診断するために月曜日に再検査を受ける予定だという。
「NFLはもともと厳しいリーグだ。簡単な試合なんて一つもない」とスミスはコメント。
「毎週タフな試合が続く中で、自分たちらしいプレーができず、基準を下回る内容になってしまえば、勝つのは一層難しくなる」
この日のレイダースにとって唯一の収穫は、スミスが今季すでに10本記録しているインターセプトをこれ以上増やさなかったことくらいだろう。少なくとも、6回のキャリーにとどまり、獲得ヤードはわずか21だった新人スターRBのアシュトン・ジェンティの活躍ではなかった。
当然、相手を止められなかったレイダースの守備陣でもない。本来のスピードを取り戻したチーフスオフェンスにはWRザビエル・ワーシーが開幕戦で負った肩のケガから復帰。WRラシー・ライスも6試合の出場停止を経て復帰し、昨季第4週にクオーターバックとの接触でACL(前十字靭帯/ぜんじゅうじじんたい)を断裂して以来、久々の実戦出場となった。
ライスはマホームズの3本のタッチダウンパスのうち2本を受け取り、キャッチ7回を記録。TEトラビス・ケルシーは54レシーブヤードを獲得し、ワーシーは3回のキャッチに加え、エンドアラウンドで13ヤードを走った。WRマーキス・ブラウンは直近2試合で3本目となるタッチダウンキャッチをマーク。この日チーフスでは、実に9人もの選手がパスをキャッチした。
チーフスのアンディ・リードHCは次のようなコメントを残している。
「ピートには本当に同情するよ。彼とは長い付き合いだ。チームがあれだけケガ人を抱えているのを見ると胸が痛む。特にクロスビーのような選手が途中で離脱するのは辛い。いくらレイダースに勝ちたいとは言え、あんな姿は見たくない」
【R】