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バイキングスをまさかの逆転勝利に導いたQBマッカーシーについて語るオコンネルHC

2025年09月10日(水) 14:26

ミネソタ・バイキングスのJ.J.マッカーシー【AP Photo/Kamil Krzaczynski】

キャリアで初めて出場した試合の前半3クオーターで、J.J.マッカーシーは経験不足の新人クオーターバック(QB)そのものだった。

プレーを遂行し、スナップ前の動作を行うことさえ苦戦しているように見え、ミネソタ・バイキングスのオフェンスはわずか6得点、ファーストダウン獲得5回、85ヤードの獲得にとどまっていた。最も痛手となったのは、コーナーバック(CB)ナーション・ライトが第3クオーターに74ヤードのインターセプトリターンタッチダウンを決め、シカゴ・ベアーズに11点差をつけられた場面だろう。

しかし、マッカーシーはそれまでの散々な状況を一転させ、最後の1クオーターで輝きを放った。強肩を発揮して勝利をつかみとる力を見せたマッカーシーは、キャリア初のタッチダウンを3ドライブ連続で決め、現地8日(月)に行われたベアーズ戦でバイキングスを27対24の逆転勝利に導いた。

バイキングスのヘッドコーチ(HC)ケビン・オコンネルは試合後に「J.J.が試合の後半で見せた形でプレーしなければこの試合に勝てなかったことは否定のしようがない。最も重要なのは、彼が全員の信頼を背負ってプレーし続けたことだ。これで可能だということが分かった」と述べている。

マッカーシーはNFLキャリア初となる2回のタッチダウンパスと1回のタッチダウンラン――勝利を決定づけた14ヤードのラン――をすべて第4クオーターで記録し、バイキングスは17対6の劣勢から逆転した。マッカーシーはこの試合でパス20回中13回を成功させてタッチダウンパス2回――1回目はワイドレシーバー(WR)ジャスティン・ジェファーソンに、2回目はランニングバック(RB)アーロン・ジョーンズに通した――143ヤードを記録。インターセプトは1回だった。

オコンネルHCは「ハーフタイムで彼に“君がチームを逆転勝利に導くんだ”と言った。彼の目つきは素晴らしかったよ。何よりも良かったのは、チームとユニットから感じた信頼感だ。結局、試合後半の彼の活躍、つまり、2回のタッチダウンパスと終盤の決定的なタッチダウンランがなければ勝ち得なかっただろう」と述べている。

2024年NFLドラフト全体10位で指名されたマッカーシーは、初めて出場したプレシーズンゲームで膝を負傷し、ルーキーシーズンを棒に振った。そのため、マッカーシーが公式戦に出場するのは、2024年1月にミシガン大学を全米制覇に導いて以来、初めてのことだった。

「長い道のりだった」とマッカーシーは振り返っている。

「最後の本格的な試合、つまりナショナルチャンピオンシップから609日経ったと思う。ずっと長い間、トレーニングルームで過ごし、たくさん映像を見ながらプレーブックを学び、それを習得しようとしてきた。結局のところ、NFL選手としてこのリーグでプレーできること自体が本当に恵まれている」

最終的にマッカーシーは将来を担うフランチャイズQBとしてバイキングスから寄せられている期待に応えたものの、そこに至るまでの道のりはまさにジェットコースターのようだった。

マッカーシーとバイキングス攻撃陣は3クオーターの大半でひどい状態だったと言える。

マッカーシー率いるチームはシーズン最初のドライブをスリーアンドアウトで終えた。

2024年ドラフト全体1位指名を受けたケイレブ・ウィリアムズが率いるベアーズはそれに61ヤードのドライブで応酬。最後にはウィリアムズ自身が9ヤードのタッチダウンランを決めた。

バイキングスにとって前半最大のチャンスは、ライトへのディフェンシブパスインターフェアの判定によって42ヤード前進し、Kウィル・ライチャードの31ヤードのフィールドゴールにつながったことだった。ライチャードは前半終了間際に59ヤードのフィールドゴールにも成功。これはマッカーシーがWRジェイレン・ネイラーへの28ヤードのパスを成功させたことがきっかけとなった。マッカーシーはこのパスによって自信が高まったと語ったが、前半を通して獲得ヤードで大きく差をつけられながらも10対6とわずかなビハインドで折り返せたのは幸運だったと言えよう。

劣勢だったにもかかわらず、マッカーシーはハーフタイム中に動じなかった。オコンネルHCが指摘したように、その目は力強く輝いていたのだ。

ネイラーへのロングパスを通し、目には見えない力を発揮したマッカーシーだが、最大の失敗を犯したのはその後のことだった。

マッカーシーのNFL初タッチダウンは苦々しい形で訪れている。ライトにインターセプトされ、そのまま74ヤードリターンされてタッチダウンとなり、第3クオーター残り12分51秒の時点でベアーズに17対6のリードを許すことになったのだ。

月曜日の試合を見守っていた多くの人は、マッカーシーとバイキングスの戦いがそこで終わったと思っただろう。しかし、22歳のマッカーシーの素晴らしいNFLデビュー物語は、まさにそこから始まった。

マッカーシーはターンオーバーを乗り越えた方法について「チームメイトやコーチたちからエネルギーを受け取ったのはものすごく助けになった」と話している。

「結局のところ、こうしてフットボールをプレーできること自体が本当に恵まれている。つまり、すべてのプレーが最高にありがたいものなんだ。劣勢に立たされているとき、ハドルでみんなにそう言った。“ここが最高だろ?”ってね。つまり、俺たちはよくやったと思う。このチームは落ち着きを保って素晴らしい対応を見せた」

ベアーズがフィールドゴールに失敗したことで勝利への扉がわずかに開いた後、マッカーシーはその扉を力強くこじ開けた。

RBジョーダン・メイソンがラン攻撃をけん引する中、マッカーシーはジェファーソンに2回パスを通した。まずは17ヤードのパス、続いてフィールド中央を突き抜ける13ヤードのタッチダウンパスだ。試合時間残り12分13秒で決まったそのタッチダウンは、バイキングスファンが期待する“J.J.からJ.J.へのタッチダウン”の第一弾となった。

その時点でベアーズのリードは17対12と危ういものになっていたが、ウィリアムズ率いるベアーズのオフェンスは次の攻撃をスリーアンドアウトで終えた。

最初の3クオーターでスポットライトに戸惑う鹿のような姿を見せていたマッカーシーはもういなかった。マッカーシーは右サイドラインを狙ったロングパスでジョーンズに逆転につながる27ヤードのタッチダウンパスを通した後、WRアダム・シーレンへのパスも通して2ポイントコンバージョンに成功。残り9分46秒でバイキングスを20対17の優勢に導いた。

その勢いに乗り続けたマッカーシーは3ドライブ連続の得点を達成。プレー9回、68ヤードのドライブの最後に、リードオプションでエンドゾーンに向かって全力疾走し、試合を決定づけるタッチダウンを決めた。

「完璧なプレーコールだった」とマッカーシーは振り返る。

この連続得点と歴史に残る逆転劇によって、ウィリアムズとベアーズも目を覚まし、WRローム・オドゥンゼのタッチダウンキャッチによって点差を3点に縮めた。

しかし、この夜の主役はマッカーシーだった。

初めての試合、初めてのインターセプト、初めてのタッチダウンに初めての驚異的な逆転劇。マッカーシーはそれをすべて今回の試合で経験した。

『NFL Research(NFLリサーチ)』によると、2011年にカロライナ・パンサーズでキャム・ニュートンが成し遂げて以来、NFLデビュー戦で複数のタッチダウンパスと1回のタッチダウンランを記録した選手はいなかったという。マッカーシーはそれをわずか13分間で達成した。

また、NFLリサーチによれば、1985年にタンパベイ・バッカニアーズでスティーブ・ヤングが達成して以来、NFLデビュー戦で先発QBが第4クオーターに10点以上のビハインドからチームを逆転に導いた例もなかったという。マッカーシーはそれをアウェーで成し遂げ、1950年以降でそれを果たした唯一のQBとなった。

マッカーシーにはシーズンもキャリアもたっぷり残されているが、その初陣は驚異的な印象を与えるものだった。

オコンネルHCは「チーム全体が誇りだが、特にJ.J.だ」とコメントし、「彼にとってものすごく素晴らしい成長の瞬間になったし、その瞬間に私は彼のことを完全に信じ、必ず一緒にやり遂げられると確信していた」と続けている。

【RA】