ニュース

ジョン・ハーボー解任は「今がその時だった」と揺るぎない姿勢を示すレイブンズオーナー

2026年01月15日(木) 13:30

ジョン・ハーボー【AP Photo/Nick Wass】

ボルティモア・レイブンズのオーナーであるスティーブ・ビスシオッティは先週、長年チームを率いてきたヘッドコーチ(HC)ジョン・ハーボーを解任した。かつては、自分がその決断を下す日が来るとは想像していなかったはずだ。

数週間にわたって熟考を重ねた末の決断について、ビスシオッティの姿勢はいまも揺らいでいない。ただ、ひとつだけ心残りがあり、同じ状況をやり直せるのであれば、電話で解任を伝えることはしなかっただろう、という点だ。

『ESPN』によれば、現地13日(火)にビスシオッティは「世界で一番クレイジーな解任だった」と語り、電話でハーボーに決断を告げたことについて謝罪したという。

「感情的になっていたのは私の方だった。彼のほうが、むしろ私をなだめてくれたんだ」

2025年シーズンの結末が、ハーボー解任の引き金になったようにも見える。白熱した一戦の最終プレーで、ルーキーキッカー(K)タイラー・ループが、本来なら決勝点となり、同時にAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)北地区制覇を決めるはずだったフィールドゴールを失敗。本拠地でチームは26対24の敗戦を喫した。しかし、ビスシオッティの説明によれば、あの試合の結果が影響したのは解任のタイミングに過ぎなかったという。仮にループがキックを成功させ、プレーオフ進出を決めていたとしても、ハーボーの続投は「1週間延びただけだった」と語っている。

「決断を下したあとで後悔することはないだろう、というところまで気持ちが固まっていた」とビスシオッティは振り返る。

「本能というのはそういうものだ。1日後でも、1週間後でも、この判断を後悔しないと確信できたときこそ、決断すべきタイミングだと思う」

ビスシオッティがその決断に踏み切った背景には、確かな確信があった。それは、この6シーズンにわたってチームが第4クオーターに何度も崩れ去る姿を見続けてきたことによるものだ。レイブンズは過去6年間で、10点以上のリードを守れずに敗れた試合が14回。これは同期間のNFL最多となっている。また、レギュラーシーズンでは安定して勝利を重ねる一方で、ポストシーズンでは同じような失望を繰り返してきた。ハーボーが指揮を執った2013年から2025年までの間に、チームはレギュラーシーズンで126勝を挙げているが、その期間にポストシーズンで複数勝利を挙げたことは1度もない。ボルティモアで長いキャリアを築いたハーボーは、最初の5シーズンでポストシーズン通算9勝4敗という好成績を残し、第47回スーパーボウル制覇も成し遂げた。しかし、その後の13シーズンでは、プレーオフでの成績は4勝7敗にとどまっている。

チームが年々後退していく中で、ビスシオッティは新たな指導者を探す以外に選択肢はないと感じていた。2023年にはAFCチャンピオンシップゲームへ進出したものの、2024年はディビジョナルラウンド敗退、そして2025年にはプレーオフ進出すら逃している。

「少なくとも、今がその時だと私の直感が100%告げていた。そのことは理解してほしい」とビスシオッティは語る。

「正しい判断だったかもしれないし、間違っていたかもしれない。それでも、私にはその決断を下す責任がある。だから実行したのだ」

2026年に向けたコーチ人事が動き出す中、その流れは一気に注目を集めるものとなっている。ビスシオッティの記者会見の最中には、ピッツバーグ・スティーラーズのヘッドコーチ、マイク・トムリンが正式に退任を表明。わずか1週間のうちに、NFLで在任期間が最も長かった2人の指揮官が相次いでその職を離れる事態となった。

当然ながら、ビスシオッティにはトムリンについての質問も飛んだ。長年のライバルがレイブンズの新たな空席に適した存在かどうかを問われた。

「そんなことが実現したらとんでもなく最高じゃないか。ただし、ジョン(ハーボー)がピッツバーグの仕事を引き受けるなら、という条件付きだけど」とビスシオッティは応じた。

「いやあ、面白い展開になるだろう。ただ、先週の出来事があったから、彼は(レイブンズのHC職の)候補から外れたかもしれない。うちのキッカーがキックを外して、彼ら勝ち上がったからね。マイクにとっては良かったんじゃないか」

「いや、どうだろうね。本人に聞いてみてくれ。私はマイクが大好きだ。18年間ずっと尊敬してきたし、ああいう形で退くとは本当に驚いた。かなり衝撃的だったよ。でもまあ、クレイジーな話だ。そんなことになっているとは知らなかった。その判断は(レイブンズのジェネラルマネジャー)エリック・デコスタに任せるよ」

レイブンズではすでに新ヘッドコーチ探しが本格化しており、AFC北地区でなじみのある顔で、最近解任されたクリーブランド・ブラウンズのケビン・ステファンスキー前HCとも面談を行っている。一方のハーボーは、現在最も注目を集める候補の一人となっており、今週末までにニューヨーク・ジャイアンツ、テネシー・タイタンズ、アトランタ・ファルコンズの3チームと面談する見通しだと、『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートが伝えている。急速に様相を変えつつある今回のコーチ人事は、まさに争奪戦の様相を呈している。

レイブンズは、ハーボーがこれほど引く手あまたとなっている理由を十分に理解していると同時に、この世界に永遠のものなど存在しないという現実も受け止めている。たとえスーパーボウル制覇を成し遂げたヘッドコーチであっても、それは例外ではない。

「彼との関係は、本当に素晴らしい結婚生活のようなものだった」とビスシオッティはハーボーとの時間を振り返る。

「私たちは偉大なことを成し遂げた。次に迎えるヘッドコーチにも、同じようにスーパーボウルを制する指揮官になってほしい」

【R】