2008年に現役を終えた45歳のリンチはNFLのフロントで働いた経験がない。2011年にジョン・エルウェイがデンバー・ブロンコスのGMに任命された時と同じくらいの衝撃的なニュースとなった。ただし、エルウェイについてはアリーナ・フットボール・リーグの代表に就いていたという経験があった。リンチは2008年以来、フォックス・スポーツで解説者を務めている。

リンチをGMとして迎える利点は何なのだろうか。フォックスでの仕事の性質上、リンチは毎週各チームの滞在先に訪れ、チーム職員、役員やコーチなどと会合を開くことが多い。これを踏まえると、理論的にはチーム運営の仕方についてある程度の知識はあるはずだ。

とは言え、GMという仕事はそう簡単なものではない。

かつてデトロイト・ライオンズの社長兼CEO（最高経営責任者）を務めたマット・ミレンも同様にメディア出身だった。しかしながら、2001年から2008年の間に1シーズンで7勝以上を挙げたシーズンは一度もなく、2008年には0勝16敗という不名誉な記録を打ち立てて解任されている。

49ersがそのパターンを望んでいるわけではないのはもちろんだ。リンチは現役時、プロボウルに9度選出され、ファーストチームのオールプロには2度選ばれた著名な選手だった。リンチはタンパベイ・バッカニアーズのメンバーとして第37回スーパーボウルで優勝も果たしている。2006年にはバート・スター賞とバイロン“ウィザー”ホワイト賞を獲得。また、ブロンコスとバッカニアーズのリング・オブ・オナーでもある。

リンチはブロンコスに在籍していた2004年から2007年の間、名将マイク・シャナハンの下でプレーした。シャナハンの息子であるカイルはスーパーボウルが終了次第、49ersの次期HCに就任する可能性が高い。

GMの業務が多岐に渡ることから、リンチが経験豊かなチームスタッフやスカウトを獲得したとしても何ら不思議ではない。だが、今回のGM人事に関してはやはり衝撃の方が強い。この決定は果たしてカイル・シャナハンの成功に寄与するのだろうか。少なくとも公式発表から少しの間は、リンチGMの存在は多くの疑問をもたらすことになるはずだ。

このリンチGM就任のニュースで最も驚くべきなのは、49ersが長くこの情報を隠し続けてきたという事実であろう。悲惨なチーム状況を考慮すれば、リンチへの調査や面談が相当な注意を払いながら水面下で行われていたことは容易に想像がつく。49ersは今年１月2日（月）にGMトレント・バルクとHCチップ・ケリーを解任していた。