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レイブンズのKタッカーがキャリア初のPATミス

2018年10月22日(月) 15:11

ボルティモア・レイブンズのジャスティン・タッカー【AP Photo/Nick Wass】

スポーツ界には信じられないような連続記録が存在する。

バスケットボール界ではUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の男子チームによる88連勝、MLBではジョー・ディマジオによる56試合連続安打が有名だろう。NFL界においては、ボルティモア・レイブンズのキッカー(K)ジャスティン・タッカーによる222回連続のPAT(ポイント・アフター・タッチダウン)成功が有名だった。

しかしながら、現地21日(日)、キャリア通算エクストラポイント成功率100%のタッカーのキックしたボールが右に大きくスライスしていくと共に、ほぼ確実にゲームを振り出しに戻すことができるとのレイブンズの期待も大きく外れた。

試合後のタッカーは次のように語っていた。

「すべてのキッカーにおいて、その長いキャリアの中では蹴りなおしたいキックもあるだろう。それが、今日は自分の番だった。今自分たちができることは練習し、悪い状況の中でも最高のものを出すように努めることだ。ゲームを延長にもっていける場面を作ってくれた自分のチームメイトたちの努力には本当に感謝しているが、残念なことに、自分はそのボールをど真ん中に蹴ることができなかった」

「より重要なことは、自分がこの場所に来たかったということ。今後、自分の息子や、若い子たちに説明責任について教える場面があるならば、ここに立ち、いかなる質問にも受け答えすることが何よりも重要ではないかと思った」

数年前であれば、ここまで大きな問題とはならなかっただろう。以前であれば、エクストラポイントのキックはより短い距離からであり、ゴールラインから3ヤード離れた場所からのスナップであった。基本的には自動的な得点ともみなされていたのだ。

しかしながら、NFLはキックをよりエキサイティングなものにしようとルールを変更し、結果的には確かにそうなってきた。ロングキック(15ヤードからのスナップとなる33ヤード)のプレッシャーに押しつぶされるキッカー(K)も多々見られてきた。それでも、タッカーが今日まで見せてきた安定感は群を抜いていた。キャリアを通じてPATでは一度もミスのなかったタッカーは、ルールの変更もいとわずに自動的に得点を稼いできたのだ。ただし、この偉業は今週日曜日までの話となってしまった。

キャリア初となるPATでのミスキックはゲームの中でも最も重要なタイミングで起こった。クオーターバック(QB)のジョー・フラッコが投じたパスをジョン・ブラウンがキャッチしてタッチダウンとなり、オーバータイムに持ち込まれることはほぼ確実のように見られた。少なくとも、ドリュー・ブリーズによるヘイルメリーパスのようなエキサイティングな瞬間が見られるだろうとの期待はあったが、タッカーのエクストラポイント失敗はそれを裏切る形となり、レイブンズはそのまま24対23で接戦を落とす結果となった。

タッカー本人が自らの失敗に驚く表情はソーシャルメディア上で話題となっている。

スポーツキャスターのケイ・アダムスは映画『Dumb and Dumber(ジム・キャリーはMr.ダマー)』のセリフを添えつつ、キック直後のタッカーの表情を『Twitter(ツイッター)』に投稿した。

「ペットの 頭が なくなってる」

予想だにしなかったタッカーのキックミスによってレイブンズのチャンスは泡と消えたが、いずれにせよ、試合としては十分にファンを楽しませる内容であったことは確かだ。ヘッドコーチ(HC)のジョン・ハーボーに対しては2ポイントを取りに行き、勝利を決めるべきだったと揶揄(やゆ)する者もいるだろう。ハーボーHCはその選択肢についても考慮したが、キックの名手による自動的な点を得た後のオーバータイムで勝負に挑むつもりだったと明かしていた。今回に関して言えば、ハーボーHCの決断に文句を言っても誰の得にもならない。

それにしても、奇妙なキックではあった。ボールはタッカーの足からまっすぐに飛んでいったように見えたが、突然に右方向へと逸れていったのだ。

キャリア通算のフィールドゴール成功率も89.95%と抜群に高い数字を誇るタッカーはこのように話している。

「足からボールが離れた時は自分の思い通りに蹴れたと思った。本当に、勘違いはしてほしくはないが、今日はこのスタジアムでベンチの右側にキックしてしまい、とても厳しい一日だった。でも、自分たちはキックするためにここにいる。このスタジアムのためだけではないし、どこに行ったってキックをするんだ。それこそ、今後も前を向いてやっていかねばならないことだ」

「今日のキックはたまたま自分のイメージとは離れていった。確認してみる必要があり、何が起きたかを正確に伝えることはできない。それでも、結局のところ、自分がこの試合を台無しにしてしまったのは確かだ。チームメイトのみんなはただ1人が勝敗を決めることはないと反対のことを言って励ましてくれたが、ゲームの終わりにああいう状況に立たされた1人の男としては、なかなうまく飲み込めまいタフなものだった」

この日の試合の敗因をタッカーだけの責任とするのには無理がある。レイブンズはその前のポゼッション時にフォースダウンをコンバートすることもできたはずで、3ポイントを奪うチャンス、あるいは、タッチダウンを奪えるチャンスもあったわけだ。タッカーのキックミスが、結果としてチームの黒星につながった。フットボールは原因と結果のスポーツであり、この日の試合で起こったのもその一つに過ぎない。

【S】