ニュース

カウボーイズがレイダースからWRクーパーを獲得

2018年10月23日(火) 10:58

オークランド・レイダースのアマリ・クーパー【AP Photo/D. Ross Cameron】

オークランド・レイダースのヘッドコーチ(HC)ジョン・グルーデンがまたもやジェネラルマネジャー(GM)レジー・マッケンジーの構築してきたチームの解体作業を進めた。

現地22日(月)、『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートはレイダースが2019年のドラフト1巡目指名権と引き換えにワイドレシーバー(WR)アマリ・クーパーをダラス・カウボーイズに放出したと報じた。両チームがこの動きを認めている。

この取引には2つの見方ができる。まず、再就任1年目のグルーデンHCの下で、チームが新たな局面を迎えているというものだ。グルーデンHCは手始めにカリル・マックをシカゴ・ベアーズとのトレードに出してシーズンを開始し、その後でマッケンジーGMが選んだ若き才能ある選手も手放した。

グルーデンHCは『ESPN』のクリス・モーテンセンに対する文書の中で、「良い選手がいなくなるのを見るのは嫌いだ。練習フィールドにいた時にレジーがこっちに来て、カウボーイズがドラフト1位指名権で取引したいようだと伝えてきた。だから、私はそうしようと伝えた。われわれは今後の2年間でドラフト1巡目指名権を5つ持つことになる。それに関しては非常に興奮している」と述べていた。

今回の取引において、利益的にはレイダースの方が少し上のように思われる。2年連続72回以上のレシーブで1,000ヤード、5回以上のタッチダウンを決めてきたクーパーだが、今季に限っては以前の調子を取り戻すのに苦しんでいる。先シーズンにはクオーターバック(QB)デレック・カーが負傷した影響を受けたオフェンスのルートを走る必要があり、今季はほとんど活力のない攻撃陣の中でのプレーを余儀なくされている。

『Around The NFL(アラウンド・ザ・NFL)』の記者であるニック・ショックは『Twitter(ツイッター)』にこのような画像を投稿した。

「これは2018年に彼らが作成した他のルートチャートよりも悪くはないものだが、今年はアマリ・クーパーを使ったオークランドの積極的なオフェンスはあまり多くはないようだ」

下降するクーパーの数字が、その状況を反映している。過去2シーズンの合計(20試合)で、クーパーは70回のレシーブ、960ヤード、8回のタッチダウンを記録してきた。多くのチームであればある程度その数字を評価するだろうが、たとえ2回のプロボウル選出経験があったとしても、ドラフト1巡目指名と同等の価値があるとは言い難い。

もう一方の見方として、カウボーイズには2018年シーズンにおいてNFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)東地区を勝ち抜くチャンスがまだあるものの、デズ・ブライアントの放出の影響からか、WR陣にはパワー不足が否めない状況だというものがある。2019年シーズンのドラフト1巡目指名権をレイダースに譲渡し、カウボーイズは今後の数年間は活躍してもらいたい若きWRを獲得したと思っている。クーパーがそのポテンシャルを持っているのは確かだろう。また、うまく機能しているオフェンスの中でのクーパーは非常に高い生産力がある。

それでも、シーズン第8週を目前にしてドラフト1巡目指名権を譲渡するという事態はかなり緊急な様相を呈している。長期的に見れば、クーパーにはその価値があるかもしれないが、クオーターバック(QB)のダック・プレスコット、あるいは、その後を継ぐ者と良好な関係性を構築できるかどうかは未知数であり、また、クーパーが新たなオフェンス陣の中で2016年シーズン時のような勢いを取り戻せるかどうかも分からない。

さらに言えば、カウボーイズのジェイソン・ギャレットがあとどれほどヘッドコーチ(HC)として指揮を執れるかも微妙なところだろう。

もうじき、クーパーは突然バランスを取り戻し始めたカウボーイズのメンバーとなる。カウボーイズのWR陣にはアレン・ハーンズ、コール・ビーズリー、新人のマイケル・ガラップがおり、ハーンズは今回のトレードに関し、NFLネットワークのジェーン・スレイターに対して「(クーパーは)力になってくれる。彼は成功者さ」と述べていた。

クーパーはブライス・バトラーをカットして受け入れ余地を作ったカウボーイズの助けとなる必要があり、パスゲームにおいて多くのチャンスを生み出さなければならない。『Next Gen Stats(ネクスト・ジェン・スタッツ)』によると、クーパーはターゲット別でそれぞれ平均3.8ヤード(30回以上のターゲットとなった中ではリーグ4位)を記録しており、リーグ最低を記録するカウボーイズの全体平均を1.6ヤード以上も上回っている。

理論上は、広いスペースがより生産性を向上させる。カウボーイズが2018年とそれ以降のシーズンにおいて狙うのはそこだろう。新人契約5年目のオプションによってクーパーは2019年シーズンまで契約下に置かれ、同年シーズンには1,390万ドル(約15億7,000万円)を受け取ることとなっている。

一方で、一見すると過去5年間のマッケンジーGMによる人事が台無しになっているような動きにもかかわらず、GMはこの取引に関してはオープンな姿勢を見せている。この期間はマッケンジーによる動きが主体で、QBデレック・カーが足を骨折して夢と希望が破れ去るまではスーパーボウルにも手が届きそうに見えた、12勝4敗という強いチームを作り上げてもいた。

『Las Vegas Review-Journal(ラスベガス・レビュー・ジャーナル)』のマイケル・ゲールケンによると、マッケンジーGMは記者との短いセッションの中で「われわれは今日、ダラス・カウボーイズとのトレードを成立させた。ドラフト1巡目指名に関しては見逃すことのできない内容だと思ったため、このトレードを行うことにした。ここでのビジネスにおいて、私としては非常に価値のあるものだと思ったし、絶対にすべきだと感じるようなものだった」と語っていたようだ。

グルーデンHCがクーパーをチームから追い出そうとしているとの憶測について一蹴したマッケンジーGMは「われわれは共に良い関係を築きながら仕事をしている」と明かした上で、他チームからたくさんの興味関心を示す連絡を受けたため、「様子が少しおかしくなった」ともコメントしている。

NFLネットワークのマイケル・シルバーはフィラデルフィア・イーグルスがクーパーの獲得に興味を示していたとも報じており、先週中にはドラフト2巡目の指名権を提示していたようだと伝えた。最終的にはカウボーイズの副社長であるスティーブン・ジョーンズが、マッケンジーGMに対して拒絶できないオファーを提示することになったのだ。

マッケンジーGMは「彼はプレーヤーを欲しており、その指名権を提示してきた。これが事の成り行きである」と明かした。

今や2019年ドラフトにおける1巡目指名権を3つ保持するレイダースが来シーズンに突入する際には7,400万ドル(約83億円)分のキャップスペースもあり、チームにフィットするだろう有能な選手たちを多数の動きによって獲得できるはずだ。

シーズン中のチーム再構築はまだ終わりを迎えたわけではなさそうだ。ラポポートは22日、レイダースのQBカー以外の選手には潜在的にトレードの可能性があるとも指摘した。加えて、今シーズンの内容次第ではレイダースが少なくとも1つの1巡目指名権において高順位での指名が可能となるだろう。

リーグ中で最も年齢層の高いロースターを構築していたレイダースだが、月が進むごとに増やしたドラフト指名権と共に、今後は急激な若返りを見せていくかもしれない。

【S】