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カーディナルス、元テキサス工科大学HCのキングスベリーをHCに起用へ

2019年01月09日(水) 10:54

クリフ・キングズベリー【AP Photo/Brad Tollefson, File】

クリフ・キングズベリーの物語がNFLヘッドコーチ(HC)の章にまでたどり着いた。

現地8日(火)、『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートと『Good Morning Football(グッドモーニング・フットボール)』のピーター・シュレイガーは現地の情報筋の話を元に、キングスベリーがアリゾナ・カーディナルスの次期HCに就任する予定だと報じた。チームは後に、この雇用が正式なものであると認めている。

カーディナルスはキングスベリーに4年契約を提示し、5年目はオプションとなっているようだ。6シーズンを通じて35勝40敗の戦績を収めたテキサス工科大学のHC職を解任されていたキングスベリーにとっては飛躍的な昇進となった。

ラポポートによれば、39歳のキングスベリーは昨年12月に攻撃コーディネーター(OC)としてUSC(南カリフォルニア大学)と契約を結んでいたものの、その直後にNFLからお呼びがかかったとのことだ。USCからのキングスベリー買収費用はわずか15万ドル(約1,600万円)だったという。

キングスベリーは『AZCardinals.com』に対し、「自分の人生はフットボールと共にある」と語り、続けて「このリーグでプレーした経験もあり、カレッジレベルでコーチもした。NFLにはいつだって魅了されてきたんだ。近年におけるオフェンスのトレンドを考慮すれば、ここに来るタイミングとしては完璧なように感じている」とコメントしている。

8日にカーディナルスのインタービューを受ける前にはニューヨーク・ジェッツからも関心を寄せられていたキングスベリーだったが、結局、若き攻撃的思考を求めるカーディナルスがキングスベリーのハートを射止めた。

元テキサス工科大学のクオーターバック(QB)は2003年ドラフトの6巡目でニューイングランド・ペイトリオッツからの指名を受けた。その後はニューオリンズ・セインツ、デンバー・ブロンコスの練習生として過ごし、2005年にはジェッツで1試合に出場して2回のパスアテンプトを記録。NFLヨーロッパやCFL(カナディアン・フットボール・リーグ)でプレーした後に、カレッジでのコーチングキャリアをスタートさせていた。

キングスベリーは自身のコーチングキャリアを2008年にヒューストンのオフェンシブ・クオリティ・コントロール担当として開始し、2010年には共同OCに昇進。この2シーズン後にテキサスA&M大学でOC兼QBコーチとして1シーズン(2012年)を過ごした。この時のQBがジョニー・マンゼルであり、キングスベリーはマンゼルがハイズマントロフィーを獲得するのに一役買った人物でもある。キングスベリーは2013年からテキサス工科大学でHCを務めるようになり、解任されるまでの6シーズンを過ごしていた。キングスベリーが率いた2013年から2018年シーズンを通じてテキサス工科大学が勝ち越したシーズンは2シーズンのみだった。

アリゾナの地ではNFLの世界で経験のない指導者がNFLでいきなりHC職に就くことに対する疑念が沸き起こっているが、これに対してキングスベリーはこのように語っている。

「今までどうなってきたかは分かるし、今度どうなるかも分かりやすい。若いクオーターバックもいるし、キャップスペースも十分にある。シーズンを通じて戦い続けることが可能なチームだ。ここに来られたことを本当に光栄に思うし、とても興奮している」

キングスベリーは今季3勝13敗にとどまり、現在NFL界で最も貧弱なチームをけん引することになるが、その一方で2019年ドラフトで全体1位の指名権を持つことにもなる。

若きHCはNFLのフロントオフィスを斬新なエア・レイド・システムの採用で魅了し、テキサス工科大学では今季のMVP筆頭候補とされるパトリック・マホームズらを指導してきた。キングスベリーはまた、テキサス州ラボックでベイカー・メイフィールドやデイビス・ウェッブのコーチも担った経験がある。キングスベリーのスタイルがプロ選手に対してどれだけ浸透するかは不透明だが、元教え子たちの活躍は良い印象を与えていると言えよう。

キングスベリーの採用は守備的思考を持つスティーブ・ウィルクスを1年で解任したカーディナルスにとって思い切った方向転換とも言える。全く逆方向にシフトチェンジしたカーディナルスは若き攻撃的なマインドを指揮官として採用した。ただし、この動きが吉と出るか、凶と出るかは先にならないと分からない。

カーディナルスは当然ながら、キングスベリーとQB間の過去の連携が2018年ドラフト1巡目に指名したジョシュ・ローゼンにも大きな効果を発揮することを願っている。プロ1年目のローゼンは苦しいシーズンを過ごしていた。また、才能に富んだデュアルスレットのランニングバック(RB)デイビッド・ジョンソンの能力を最大限に生かすこともキングスベリーにとってカギとなるだろう。

しかしながら、HC職とは単純に攻撃戦術のみを司るものではない。キングスベリーは自らの手で攻撃面だけではなく、チーム全体を正しい方向へ導くことが可能であることを証明しなくてはならない。多くの補強ポイントが残されたたまま引き継いだことで、出鼻からその実現は厳しいものになっているようにも思われる。

カーディナルスは『Twitter(ツイッター)』で新HCを歓迎している。

「新たなキングがアリゾナの地へ #KardsGotKliff」

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