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不確実な状況に苦しめられるドラフト外ルーキーたち

2020年06月02日(火) 09:53

NFLのフットボール【Aaron M. Sprecher via AP】

ジュワン・ウイリアムスの電話はまだ鳴らない。

これが他の年だったなら、ニュー・ヘブン大学のワイドレシーバー(WR)だったウイリアムスはすでにNFLと契約していただろうし、ロースタースポット争いの準備を進めていたことだろう。しかし、今のウイリアムスには決して来ないかもしれない電話を待つことしかできない。

新型コロナウイルスがすべてのNFLルーキーの準備作業を脅かし、今の時点で従来のOTA(チーム合同練習)やミニキャンプは行われていない。ドラフト上位で指名された選手たちには少なくともそのステータスや契約への投資の影響力があり、一度フットボールが再開されればより忍耐強く、長期的な評価を受けることができるだろう。しかし、ウイリアムスのようなその他多くの選手たちにとっては、コロナウイルスのパンデミックがフットボールという生計手段にただならぬ脅威を与えている。

ドラフト指名選手、ドラフト外優先フリーエージェント、トライアウトプレーヤーというルーキーの3層において、ウイリアムスは最も危機にさらされている最下層にいる。2018年に校内記録である1,171レシービングヤードを記録し、2019年にはパントリターン平均18.9ヤードをマークしているウイリアムスは、トライアウトの機会を与えられる典型的な選手だと言えるが、ディビジョンII(D-II)のプレーヤーとして――今季にドラフトされたD-IIの選手は2名のみ――ウイリアムスには自分のチャンスがドラフトの後にやってくると分かっていた。

チームはウイリアムスのようなトライアウトプレーヤーたちを、契約は結ばずに5月に開催されるルーキーミニキャンプの参加要員として連れてくるのが一般的だ。トライアウトプレーヤーがNFL入りできるかはもちろん大きな賭けだが、毎年何人かはチームに十分な印象を与え、5月にルーキーミニキャンプが終了するとチームがドラフト外優先フリーエージェントをカットすることで空きを作り、見どころのあるトライアウトプレーヤーと契約を結んでトレーニングキャンプにも参加させる。

トライアウトプレーヤーからスタートして名をはせた選手たちには、第49回スーパーボウルのヒーローだったコーナーバック(CB)マルコム・バトラーや、ロサンゼルス・チャージャーズの4度のプロボウラーであるCBクリス・ハリス、プロボウルに2度選出されているミネソタ・バイキングスのWRアダム・シーレンらがいる。トライアウトプレーヤーは練習生、もしくは53名ロースターの末尾、あるいは先発として、いずれかの形で毎年チームのロースターに存在する。昨年はオークランド・レイダースがルーキーミニキャンプでA.J.コールにトライアウトをオファーしたとき、未来を担うパンター(P)を見いだした。契約を結んだコールはトレーニングキャンプでジョニー・タウンゼントを上回り、先発の座を手に入れたのだ。初年度に記録したコールの平均46ヤードという数字はリーグの上位半分に入り、20ヤード以内へのパント回数でコールの33回を上回ったPは4名だけだった。

しかし、今年は従来のルーキーミニキャンプが行われておらず(各チームは5月にバーチャルキャンプを行っている)、2020年のトライアウトプレーヤーは通常なら得られていたはずの実力を証明するチャンスを得られないかもしれない。

「俺と同じ状況にいる誰もが、限界点を迎えるだろう。もうやり切ったと感じ、タオルを投げて何か他のことをやるときが。だけど、俺は毎日ワークアウトしている。ただ準備を整えておくためだけにだ。俺の中でやり切ったという思いは1ミリたりともない」とウイリアムスは語った。

2020年は日に日に、ルーキーたちにとってより先例のなく、厳しいシーズンになっていく。ドラフト指名選手や、ドラフト後に契約したドラフト外優先フリーエージェントの選手たちには、まだビデオカンファレンスを通じてチームと関わり、クラブが提供するワークアウトを行って、少なくともプレーブックを学びながらトレーニングキャンプに備えられるというアドバンテージがある。それでも、ルーキーミニキャンプやOTAなしでトレーニングキャンプに入らなければならないのは手ごわい状況だ。彼らは貴重な練習時間を失っているのであり、設備の整ったクラブ施設で指導を受けながらのワークアウトもできていない。

「これからやってくるシーズンにうまくいかなくても、俺は全力を注ぎ続ける」と言うウイリアムスは次のように続けた。

「俺には自分が持てるすべてを尽くして挑戦したと分かっていることが必要だし、その挑戦が今年じゃなくても、チャンスがやってきたときにやってみるつもりだ」

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