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サラリーキャップについて重要な交渉を控えるNFLとNFLPA

2020年06月03日(水) 16:34

NFLロゴ【Aaron M. Sprecher via AP】

2020年のNFLシーズンに関しては、新型コロナウイルスのパンデミックの中でいかに安全かつスケジュール通りに執り行うかという点が焦点となっている。それが最も重要であることに変わりはないが、そこにファンがいるかどうかを問わず、フィールドに人が出る前に財政的な問題を解決しなければならないと多くの人が考えている。

スタンドに入る観客の数を制限するか、無観客での試合開催によって急激な減収が見込まれる中、NFLとNFLPA(NFL選手会)は2020年とそれ以降のサラリーキャップをいかに扱うかを決定するため、重要な交渉が迫っていることを認識していると複数の情報元が話している。誰か一人でも試合でプレーする前に、新型コロナウイルスが影響を与える可能性があるすべての事態において、両サイドが合意に至っていなくてはならない。

取り立てて期限があるわけではないが、7月後半に組まれているトレーニングキャンプ前に合意に至っていることが望まれている。論理的にはNFLPAとNFLはプレシーズンを通して話し合いをすることが可能だが、契約がないままレギュラーシーズンを始めることはできないと認識されているという。

現在、リーグとNFLPAは収入がどういった影響を受けるかや、確実な損失としてはどういったものがあるかを調べている。最初のフリーエージェンシー期間が終わった後、契約を延長するケースやフリーエージェントとの新契約があまりない理由の一つがこれだ。

目標はサラリーキャップを上げること、もしくは少なくともフラットに保つことだが、それが不可能だった場合はどうなるだろうか?

NFLには時間的な余裕があり、他のプロスポーツリーグを参考にすることができる。MLBとその連盟は選手にいかに補償するかや、シーズンがいったいどういった形を取るのかについて、とげとげしく、時に的外れな話し合いを行ってきた。NFLの関係者は、事態がそこに至る前に対処することを望んでいる。

問題は以下の点だ。

サラリーキャップ(現時点で2020年は1億9,820万ドル/約215億3,000万円)は予測される収益に基づいて計算されているが、前年度の予測されない収益の上昇もしくは下降に基づいて増減するという仕組みになっている。スタンドのファンが少ない(もしくは無観客の)場合、2021年のキャップに関してはそれが今年に当てはまる。収益はどれほど減ることになるだろうか?

最悪のケースは全試合が完全に無人のスタジアムで行われる場合で、これは40億から50億ドル(約4,345億円から5,432億円)の減収――約3分の1の減収――になると見積もられている。このシナリオでは、チームにもたらされる金額は予測より4,000万ドルから8,000万ドル(約43億5,000万円から約87億円)減ることになる。一部のスタジアムではある程度のファンが観戦することになると予想されることから、損失はそれよりも少ない見込みだ。それでも損失は非常に大きく、2021年のキャップには影響が出るだろう。

だが、それはチームとプレーヤーに好ましからぬ結果を与えるため、キャップの低下を望んでいる者はいない。また、両サイドとも2021年にキャップが大幅に落ち込んだ後でそれが2022年の新たな放送契約で跳ね返ることを望んでいない。そうなるとチームのビジネスや契約延長は非常に厳しくなるだろう。

予測される減収の中でいかにキャップの問題を円滑に扱うかという点での可能性の一つは、将来的な放映権契約から借り入れることだ。新契約は通常、キャップを急上昇させる。しかし、今回の場合は傾斜をなだらかにして、2020年の損失を埋め合わせるために活用することができる。リーグとNFLPAは数年間にわたってパフォーマンスベースの支払いを縮小、もしくは除外する方向で合意することも可能だ。

しかし、一部の人々は未来ではなく、現在を見て救援策を提案している。そして、これにはNFLとNFLPAの協力が必要になる。

NFLPAは今季にいくらかの金額を戻すことに合意する必要があり、短期的な痛みを甘受して長期的により大きなものを相殺するという考え方だ。ロースターボーナスとワークアウトボーナス、オプションボーナス、サインボーナスは春の段階ですでに支払われており、差し戻しはシーズン中に週ベースで払われる選手のベースサラリーからということになりそうだ。交渉が始まっていない現段階ではリーグがどれほどのカットを求めるか、また、選手が差し戻しのためにどういった種類の構造を受け入れる必要があるのかはまだ分からない。

選手がこういったカットを受け入れるのに気乗りしないのは当然だ。だが、チームは代替案は理想的ではないと論じるだろう。減収の見通しを受け、チームが高額で保証のないベースサラリーを2020年に有するベテランと袂を分かつ選択をする可能性もある。たとえばすでにチームでの未来が危ぶまれていたクリーブランド・ブラウンズのオリビーア・バーノン(1,525万ドル/約16億6,000万円)のような選手は、リリースの危機に立たされている自分自身に気づくことになる。

加えて、今選手たちが減額に同意すれば、2021年にいくつの職が守られることになるだろう。来年のサラリーキャップ減少の額が少なければそれだけ、そのときにリリースされるベテランの数は少なくなる。

この筋書きについてNFLはコメントを拒否している。NFLPAも同様だが、選手会の意向を知る情報元の話によれば、NFLPAは今季の大幅な減収の可能性を把握しており、できるかぎりサラリーキャップへの対処が円滑に進むよう、リーグとの交渉に快く従う考えだという。一方で、当然ながらNFLPAはサラリーについての譲歩に対する見返りを受け取れるよう、リーグに要求するつもりでもある。

また、他にも大きな問題が控えている。開幕した後に新型コロナウイルスの影響でシーズンが短縮されたらどうなるのか? 何か確かなことが決まっているわけではないが、可能性の一つとして、最終的に何試合が行われたかを問わず、レギュラーシーズンの1試合が実施された時点でそこには強い法律的主張があると論じられるかもしれない。

その場合、シーズンが短縮されればチームは大量の収入を失いながらも、ロースターに対して全額を支払うという窮地に立たされることになる。チームはそれに持ちこたえられるとみなしてはいない。

あらゆる不測の事態に対し、合意がなされていなくてはならない。シーズンが始まろうと停止しようと、ファンがいない状態でプレーすることになろうと、シーズンの半分をファンの元でプレーすることになろうと、あるいはその間のどこかの状況であろうと。

すべての問題はNFLとNFLPAの合意において解決されなければならないのだ。

両サイドは今季に新CBA(団体労働協約)をまとめあげた。次に迫る交渉も、同じくらい重要なものとなるだろう。

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