自信は失っていないと主張するイーグルスQBウェンツ
2020年12月08日(火) 15:34現地6日(日)、フィラデルフィア・イーグルスはグリーンベイ・パッカーズを相手に30対16で負けを喫している。17点差をつけられていた第3クオーター中盤でイーグルスのヘッドコーチ(HC)ダグ・ペダーソンは、クオーターバック(QB)のジェイレン・ハーツに、HCの言葉を借りるとするなら、“火花”の役割を委ねた。
この火花により、QBカーソン・ウェンツの将来についての憶測がイーグルスを燃え立たたせることになる。
これまでの憶測によると、4月のドラフトで2巡目にハーツが指名されたことによりウェンツは自信を失ったという。昨年に1億2,800万ドル(約133億円)の延長契約を結んだにもかかわらず、ウェンツは自信を吸い取られたようなプレーばかり見せてきた。
かつてはMVP候補に挙げられていたウェンツは、その評価に異論を唱えている。
ウェンツは日曜日の敗戦後に「いや、俺は心配したり、何かに怯えたり、そういった類のことをする人間じゃない」と『Pro Football Talk(プロ・フットボール・トーク)』に話している。「俺はもっとできると考えている。俺たちはチームとして、特にオフェンスはもっと良くなれる。組織の中では常にいろいろなことが起きていて、違うことを言う人たちが必ずいる。それはこのビジネスの一部さ。それもひっくるめて俺はサインしている。精査、挑戦、逆境、全てだ。良いことも悪いことも醜いことも、全てに対処しなければならない」
状況はこれから一段と醜くなるだろう。
ペダーソンHCは第3クオーター残り7分39秒でハーツを出場させ、ウェンツをベンチに下げている。それまでにウェンツは5回のドライブで1回のフィールドゴールしか挙げられていない。パス15回中6回成功(40%)、79ヤード、1回のアテンプト当たり5.3ヤード、そしてサック4回という記録だ。
交替についてウェンツは「どういう戦略かはよく分からない」とコメントした。「次のプレー、次のシリーズでは彼を使うと言われただけだ。正直何が起きたのか分からなかった。もちろんそれはいら立たしいことさ。コンペティターとして、そして特に俺の性格的に。俺はあのフィールドに出ている選手でありたい。だけど今日は見ての通りだ。俺を下げる判断をした。しまいには試合にも負けた。それが一番悔しい」
一方のハーツはペダーソンHCが意図した火花を最初のドライブにもたらしたものの、ペナルティによってそのポゼッションは失敗。そして2回目のドライブはタッチダウンパスを成功させて締めくくっている。ワイドレシーバー(WR)ジェイレン・リーゴーがパントリターンタッチダウンを決めて7点差まで追い上げた。だがその後、タッチダウンと試合の決定打となるインターセプトに成功したパッカーズが勝利を手にしている。リードを許さない堅固なディフェンスが相手だったとしても、ハーツが鈍いイーグルスのオフェンスに息を吹き込んだことは間違いない。
今後の主力QBについてペダーソンは口をつぐんだままだ。
月曜日の朝にフィラデルフィアのラジオ番組『94WIP』に出演した際、QBは決まったかと聞かれたペダーソンHCは“ノー”と答えている。その数時間後に地元メディアに示したスタンスと一貫するものだった。
「いろいろなことを検討するつもりだ」とペダーソンHCは説明している。「チームとして今どこにいるかを真摯に受け止めたい。振り返って今の立ち位置を確認する。そして私の決心が着いたらその時だ。だが今はまだ決まっていない」
つまり、QBについては待つしかないようだ。
ウェンツは「最終的には俺の力の及ばない部分だ」と述べている。「俺が決めることではない。自分にできることは分かっている。もっといいプレーができるはずだ。自分を疑ったことや自信をなくしたことはない。だけどそれ以上のことは俺のコントロール外だ」
2017年の膝のけがに続く背中の痛み、さらには戦力に欠けたパッとしないオフェンスラインとのプレーと、ウェンツにとっては下り坂ばかりだ。2020年はなおひどい。ウェンツは堅実さに欠け、リーグトップとなる15回の被インターセプトを量産した判断ミス。そしてボールを持ち過ぎていることによりNFL最高となる50回(2位と10回以上の差)のサックを許している。
このフランチャイズQBは今シーズンに自らを追いやっているとしか言いようがない。
来年に3,500万ドル(約36億4,000万円)近いサラリーキャップが予想されるイーグルスは、スランプに陥ったスターQBと、羽ばたくチャンスを待ち構えているルーキーQBを抱えるという微妙な状況に置かれている。ペダーソンHCの続投も危ぶまれており、イーグルスが低レベルなNFC東地区で順位を下げ続ける中、次のQBが誰になるかはもはや誰にも分からないだろう。
【R】