苦難を乗り越えたワシントンQBスミスが年間最優秀カムバック選手賞を受賞
2021年02月07日(日) 23:49それが実際に起きる瞬間まで、アレックス・スミスのフィールド復帰は可能なことというよりは幻想に近かった。
彼のモチベーションと絶対的な意志の強さはキャリアの継続を可能にしたばかりでなく、ワシントン・フットボール・チームを2015年以来となるポストシーズン進出へと押し上げた。その功績をたたえ、スミスは現地6日(土)の『NFL Honors(NFLオナーズ)』で2020年の“AP通信年間最優秀カムバック選手賞”に選ばれている。
50票中49票を得ての文句なしの受賞で、残りの1票を獲得したのはピッツバーグ・スティーラーズのクオーターバック(QB)ベン・ロスリスバーガーだった。
きっと単純にゲームデーにアクティベートされるだけでも、36歳のQBスミスがこの賞の候補にノミネートされるには十分だっただろう。2018年に足に大けがを負って以降、彼は回復の過程で課題を一つ一つクリアしていき、そのたびに再びプレーできるという見通しは高まっていった。
希望が実現したのは第5週。ロサンゼルス・ラムズ戦で負傷したカイル・アレンに代わってスミスが登場した。この時の彼はパスコンプリート9回で37ヤードを獲得し、6回サックされて試合に敗れている。彼の信じがたい復帰はその日の勝利にはつながらなかったが、スミスが試合に出られるということ、そしてラムズのパスラッシュに耐えられたというだけでも奇跡に他ならなかった。
次に彼が試合に出場したのは4週間後。この時もアレンの代役を務め、ニューヨーク・ジャイアンツに惜敗している。翌週、スミスはデトロイト・ライオンズ戦で先発に指名された。くしくもその日は彼が足を負傷してからあと3日で2年になるという日だった。ここでは55回のアテンプトで38回をコンプリート、390ヤードというキャリアハイを記録したが、試合にはやはり惜しくも敗れている。
アレンがIR入りしたため、ヘッドコーチ(HC)ロン・リベラはスミスをフルタイムの先発に指名した。第11週のシンシナティ・ベンガルズ戦で2018年第9週以来となる勝利を挙げたスミスとチームメイトたちは、続いてサンクスギビングにダラス・カウボーイズを撃破した。第13週、いつも以上に世界が注目する中、スミスは4勝7敗だったワシントンを信じられない勝利へと導く。11勝0敗のピッツバーグ・スティーラーズをロードで下してみせたのだ。この試合で彼は296ヤードを投げ、タッチダウン1回を記録している。
しかし、第14週にふくらはぎを痛めてしまい、レギュラーシーズン最後の3試合のうち2試合とワイルドカードは欠場することになった。けがをしなければどうなっていただろうと思わずにはいられないが、彼が残した実績の前ではささいなことだ。6回の先発でベテランQBの成績は1,220ヤード(コンプリート率68%)、タッチダウン5回とインターセプト5回というものだった。
2018年11月18日(日)の出来事を目撃した者に、2020年のスミスを予見することはほとんどできなかっただろう。その日、スミスは右脚の脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)にらせん骨折と複雑骨折を追った。
手術後3日もたたないうちに、今度は細菌感染による壊疽(えそ)性筋膜炎から敗血症を起こして生死の境をさまよう。一時は医師が足の切断を考えたほどだったが、なんとか回復に転じた。それから9カ月の間に彼は17回もの手術を受けた。回復の一環として、スミスは新しい外部固定装置を装着した。
2019年6月、スミスは再びNFLでプレーする意向を表明する。1カ月後、彼は固定装置を外し、自分の足で歩き始めた。そして2020年8月、彼はPUPリスト(故障者リスト)に加えられ、フットボール活動への参加をチームに認められた。9月にはチーム復帰を果たしている。
人生を変えるけがと命に関わる合併症を乗り越えたスミスにとって、そのままフェードアウトしていくことは簡単だったはずだ。しかし、彼はそれを拒んだ。
3度のプロボウラーにどんな未来が待ち受けるかは分からない。だが、2020年の大半で、彼は世界中のフットボールファンを記憶に残る感動的なプレーで驚かせた。それはいつまでもNFLの年代記に残るに違いない。
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