ニュース

背番号変更は「無意味」と憤慨するバッカニアーズQBブレイディ

2021年09月08日(水) 07:27

タンパベイ・バッカニアーズのトム・ブレイディ【AP Photo/Eric Christian Smith】

トム・ブレイディは自らの仕事を遂行する上での変化を好まない。

44歳になるベテランクオーターバック(QB)のブレイディは、今オフシーズン序盤にNFLの背番号ルール変更について意見を述べていたが、今も当初の姿勢を崩しておらず、先ごろ行われた『Tampa Bay Times(タンパベイ・タイムズ)』のインタビューでも同じことを主張している。

ブレイディは「背番号のルールはクレイジーだ。文字通り、みんなが背番号を変えた。プレシーズンでは番号の変わった2人の選手とプレーすることになった。つまり、映像を見て誰を研究しているのか把握する必要があるけれど、ランニングバックも同じだ。彼らもブロックすべき相手が誰かを知っていなければならない。オフェンスラインもそう。レシーバーもブリッツに合わせてルートを調整しないといけない」と話し、次のように続けた。

「1人は6番、もうひとりは11番、別のやつは9番だったとして、ルートを崩してスポットを得ようとすると、それがプレーごとに変わる。すごいチャレンジングなことだと思うよ。ディフェンスにとっては良いアドバンテージになるだろうけど、それはそれだ」

NFLはこのオフシーズンにカンザスシティ・チーフスが提案したルールを可決し、タイトエンドとワイドレシーバーが1から49もしくは80から89の任意の番号を背負えるようになり、ディフェンシブバックも1から49、ラインバッカーは1から59もしくは90から99を着用できるようになった。

ひと桁好きのファンが歓喜した一方で、大量の映像を見尽くしてきたブレイディは憤慨した。

「つまりはオフェンシブラインマンに82番と9番を着させたらどうなるかってことでしょ。誰がふさわしいのか分からない。これはフェアじゃないよ。シッポをつかまれるだけだ。少なくとも、ディフェンスライン、ラインバッカー、セーフティが誰なのかは確認する必要がある。間違った相手をブロックしてしまう対決がたくさん出てくるだろうね。どうしてこれが必要だったのか自分には分からない」

ブレイディは現地7日(火)にも、「愚かなルール」だとして嫌悪感をあらわにした。

ブレイディはラインバッカーやディフェンシブラインマンを見極め、各プレーでスナップを受ける前にプロテクションを設定するという任務を負っているため、その主張を支持する正当な理由はある。ブレイディは21シーズンにわたり、ラインバッカーは40番から59番もしくは90番から99番、ディフェンシブバックは20番から49番と認識してプロの世界で戦ってきたのだ。ラインマンに関しては50から79もしくは90から99の番号に限られていた。その番号を見極めることで相手守備陣の識別が容易になっていたが、20年以上の経験を持つブレイディにとって、この変化は彼の世界を揺るがしている。

プレシーズン終了後の番号変更も相まって、スーパーボウル7回優勝を誇るブレイディが動揺するのも無理はない。

ブレイディはスナップ前の情報と素早い意思決定で勝利を収める。この識別とコミュニケーションを頼りにディフェンスを読んでパスを投げるというのがプロセスだ。それが、これまでの研究で得た知識を補強するために、さらにメモを取り、精神的な準備に励まなければならない。この変化はブレイディの任務に予測不可能な要素を加えるものであり、本人はそれが不要なものだと考えているのだ。

長年、NFLでタックルとして活躍するミッチェル・シュワーツはブレイディの考えを理解しながらも、彼が言うほど大きな問題ではないと考えているようだ。

チーフスのシュワーツは「カバレッジの選手と比較して誰がラッシャーなのかを判別できるよう全員の番号を覚えていかなきゃならないから、当然、オフェンスにとっては少し作業が増えることになる。逆に言うと、プレシーズンの映像もまったくない大学生たちが(毎年)やっていることでもある。大丈夫さ」とツイートしている。

ブレイディはシーズン開幕戦となるダラス・カウボーイズとの試合に向けて調整していかなければならない。カウボーイズには伝統的な番号から変更したラインバッカーが2人――ジェイロン・スミス(9番に変更)と新人マイカ・パーソンズ(11番を着用)がいる。加えて、コーナーバック(CB)トレボン・ディグスも27から7に背番号を変えた。

ブレイディはスミスとディグスが映る2020年シーズンの映像を見るたびに、27番が7番に、54番が9番に変わったことを思い出さなければならない。ブレイディがその神経経路を形成し、強化するための時間は限られている。

「フットボールではひとつひとつの行動に理由がある。必死に研究して自分がいいポジションにつけるようにがんばっているんだ。試合になると、ディフェンシブラインマンがラインバッカーとどう違うのか、セーフティがどう違うのか、そういうことでずっと混乱することになる。ものすごく無意味だ」とも話したブレイディ。

フットボールなのか、それともマトリックスなのか。今週木曜日にはブレイディは新しい数字をリアルタイムで読解しなければならない。タンパベイはブレイディのメンタルプロセスが寿司のレシピではなくタッチダウンを生み出すことを期待している。

【C】