陽性者急増を受けてCOVID-19プロトコルの再検討を行うNFL
2021年12月16日(木) 15:36NFLはシーズンの最初の3カ月を通して新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の例を少数に抑えてきた。スタジアムは満員で、『Zoom(ズーム)』の会議は減り、マスク姿も少なくなっていた。パンデミックが大きな問題になっていたことなど、簡単に忘れられそうだった。
しかし、ウイルスが再び猛威を振るい始め、この3日間で100名ほどの選手が検査で陽性になっている。これは今季で最大の数字だ。これらの選手の多くが、ワクチン接種を完了していた。リーグによれば、そのうち3分の2が無症状で、他のメンバーもごく軽い症状に収まっているという。レギュラーシーズンが残り4試合であり、プレーオフの開幕が近づく中、陽性者数が増えている現状はリーグが統括するプロトコルの再検討をNFLの年次冬季リーグミーティングで急遽行うことにつながっている。
「われわれはパンデミックの新たなフェーズに入っている。われわれが以前見てきたものとは異なるものだ」とNFLのチーフメディカルオフィサー(医務部長)であるアレン・シルズ医師は語っている。
「2020年のソリューションを2021年に抱えている問題に適用することはできない」
コミッショナーのロジャー・グッデルは今週末に実施されるラスベガス・レイダースとクリーブランド・ブラウンズの試合を含め延期等の議論は行われていないとしている。ブラウンズにはクオーターバック(QB)ベイカー・メイフィールドやヘッドコーチ(HC)ケビン・ステファンスキーをはじめ、多くの陽性者が出ている。NFLはロースターに柔軟性を持たせ、練習生の枠を拡大して、COVID-19がロースターに与える影響の軽減を図ってきた。
しかし、ウイルスの様相ははっきりと変わってきた。シルズ医師は、今季初めてウイルスが施設内で広がり始めたとコメント。今季はじめには見られなかったことであり、ゲノム配列からは陽性例は地域の感染拡大が元になっており、チーム施設内での感染ではないことが示唆されているという。
現在の急増は何が原因なのか? シルズ医師はいくつかの原因を指摘した。
・感染力が高い一方で症状が軽い傾向のあるオミクロン株の存在
シルズ医師はNFLがすでにオミクロン株の感染による隔離を何件か行ったと話しており、トップの疫病研究者からの助言としては、オミクロン株が陽性例の急増につながっているのはほぼ間違いないとのことだ。
・ワクチン接種済みの選手およびコーチの獲得免疫力の減衰
これは驚きではない。NFLはNFLスタッフ内からの志願者572人による独自の抗体調査を実施。予想通り、結果としてはワクチン接種を完了している場合でも抗体値は最初にワクチンを受けた際に比較して大きく下がっていた。しかしながら、それはブースターによって修復され、志願者の抗体レベルを高めていた。
・季節的な変異
呼吸器系の病気は冬季に悪化する傾向がある。
アトランタ・ファルコンズのオーナーであるアーサー・ブランクは「どこかの時点で、ゴーストと戦っているような気分になる。どこに打って出ればよいか分からないのだ」とコメントしている。
リーグとNFL選手会(NFLPA)のそれぞれの代表者は、シーズンを最後まで完了すべくここ数日でプロトコルの変更について話し合ってきた。リーグはブースターショットを推奨。最良の予防体制を整えるべく、今はコーチやスタッフたちにブースターショットの接種が義務づけられており、今週はオーナーたちに対してその点が強調されている。しかし、これは絶対に確実なプランではない。陽性の結果が出たステファンスキーHCはブースターショットを終えていたのだ。
それでも、リザーブ/COVID-19リストが大きく膨らむ中でリーグが公に何らかの緊急策を講じる必要があると感じていること、また、パンデミックが始まった時点とは異なる方策が必要だと感じていることは明らかだった。
他にリーグと選手会が選択肢として論じたものには下記のようなものがある。
・無症状、かつワクチン接種完了済みで陽性になった選手が、1度検査で陰性になればチーム活動に復帰可能にすること。NFLはこの案を公衆衛生当局と話し合っており、どのくらい早い時点で実現されるかはまだ分からない。
・マスク着用、ソーシャルディスタンシング、施設内のバーチャルミーティングの復活。これらの馴染みある方策は、今は重点的プロトコルに取り入れられている。
・選手会の一部が提案する、ワクチン接種状況を問わず全選手を対象とする連日の検査。現在はワクチン未接種の選手が毎日検査を受け、ワクチン接種済みの選手は1週間に1回の検査を受けている。
リーグのオフィシャルは連日の検査に対して抵抗を示している。
シルズ医師は「検査ではできないのが、感染の予防だ。そのことは常に承知してきた」とコメント。
「昨年にそれは真実だったし、今も真実であることに変わりはない。どう対応していくかを見ていく中で、われわれがやろうとしているのは施設内での感染を防ぎ、人々が検査で陽性にならないようにすることだ。検査で陽性にならないようにするには、彼らの獲得免疫に立ち戻ることになり、ブースターを接種し、抗体を上げることにつながる。施設内での感染拡大に対して一番大事なのは、こういった他の方策だ。われわれが施設内で感染拡大を生み出さないようにするためには、こういったその他の方策に頼る必要がある」
選手とコーチに陽性者が出続けている今も、プロトコルの変更はまだ最終決定されていない。オーナーたちのミーティングが終わったとき、一つ明らかなことがあった。2年連続で、NFLではシーズンが終わるまでウイルスとの戦いが続いていく。
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