モンタナの気質を受け継ぎ、新たな“ジョー・クール”となったベンガルズQBバロウ
2022年02月02日(水) 00:22シンシナティ・ベンガルズは好調な滑り出しを見せていたにもかかわらず、シーズンが中盤に差しかかった頃に2連敗を喫している。バイウイークを前にして、クオーターバック(QB)ジョー・バロウは高校を卒業した後、前シーズンに患った深刻な膝のケガによってオハイオ州立大学でベンチに座っていたときのように、その健康状態が再び疑問視されるまで時間はかからなかった。
そのときにバロウは「またみんなに見放されたようなものだ。そして、また勝利できるようにベストを尽くし、取り組んでいく」と語っている。
その後、順調に勝ち進み、とどまることのなかったベンガルズは、過去2回のスーパーボウルでAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)の代表だったカンザスシティ・チーフスに延長戦の末に27対24で勝利し、驚くべきことにスーパーボウル出場まで決めたのだ。バロウはNFLの新たな“ジョー・クール”となり、ジョー・モンタナの気質とフィールドの捉え方を受け継いでいる。この両者――そして、ベンガルズ――がバロウをNFLのエリートへと一気に押し上げた。バロウが得た立ち位置は、ほんの8カ月前なら笑い話になってもおかしくなく、シーズン前半に崩壊しているだろうと見られていたものだ。
バロウは笑みを浮かべながら「ボーッとしていたわけじゃないけど、21対3というのは決して楽な状況じゃなかった」と話している。
バロウは彼の加入したフランチャイズにとってほぼ完ぺきな存在だ。ベンガルズはバロウに単なるエリートプレーを求めていたのではない。ベンガルズは何十年にもわたってフランチャイズを取り囲んでいたような悲運が差し迫ったような雰囲気を感じさせない、豊かな自信を与えてくれる存在として、バロウを必要としていたのだ。
バロウが連敗中にも見せていた冷静さを試合序盤に18点もの大差をつけられている中で見せたとき、スーパーボウル出場がかかったアウェーの試合で彼がその使命を果たすことができることは、11月の時点ですでに明らかだったように思われた。バロウは試合後半で整然とベンガルズの逆転劇を演出するドライブをリードするほどクールだった。オーバータイムでゆっくりとチームをフィールドゴール圏内に入れるほどクールだった。また、お祝いムードの中でイッキー・ウッズ(元ベンガルズRB)に会い、“イッキー・シャッフル”を軽く踊り、突然のリバイバルで過去に大成功を収めたベンガルズを彷彿とさせるほど、クールだった。そして、試合後に身に着けていた巨大なダイヤモンドをちりばめた“JB9”のペンダントを説明する姿もクールそのものだった。
バロウは「こいつは間違いなく本物だ。偽物を持つにしてはお金を稼ぎすぎている」とコメントしている。
ベンガルズがスーパーボウルに――これは誤植ではない――フランチャイズ史上3度目の出場を果たしたのは、チーフスが前半終了間際に見当違いのプレーをして、試合に勝てるほどのリードを広げるチャンスを棒に振り、6回のポゼッションで連続して無得点となったからだ。そして、試合後半にディフェンスがカバレッジの人数を増やしてQBパトリック・マホームズのターゲットをカバーし、ついにプレッシャーをかけることができたからこそ、スーパーボウルへの切符を手にしている。
何より、彼らが1989年以来初めてのスーパーボウルに向かうのは、バロウが今は笑い話となった2連敗や、ベンガルズの呪われた歴史の巨大さに動じなかったのと同じように、ベンガルズが日曜日に直面した状況にも動じなかったからだ。
ベンガルズがこの状況にあること、この試合にいることさえも、驚異的だ。2年前のベンガルズは2勝しかしておらず、永遠の落後者と見られていた。そして、当時のバロウ――LSUでナショナルチャンピオンシップを勝ち取った後に悠々と葉巻をふかしているのが象徴的なイメージだった若者――が全体1位で指名され、途方もない自信と能力を、そのいずれも30年以上持ってこなかったチームにもたらすことになる。
土曜日の夜、バロウはヘッドコーチ(HC)ザック・テイラーに100ヤード走るつもりだと話した。後になってバロウは、ベンガルズがレギュラーシーズンにチーフスを倒した際にあまり足を使っていなかったため、チーフスがそれを把握していない可能性があったのが理由だと説明している。日曜日、バロウのランヤードは100にまったく届かなかった――25ヤードしか走っていない――が、その回避能力はプレーを次々とつなげ、特にベンガルズのこの試合最初のリードにつながったフィールドゴールへと導いたドライブでそれは顕著だった。第3ダウンのプレーでパスラッシュに巻き込まれかけたバロウだったが、どうにかして逃れると左にスクランブルしてファーストダウンを獲得している。
テイラーHCは「彼は決めるべきプレーがないときにプレーを決める道を見つけるんだ」と述べた。
「ドラフトでこのリーグに来たときに、俺たちが今年ここにいると聞いていたら、もちろん衝撃だったね。でも、俺は驚いてはいない。今年ずっとプレーしてきて、自分たちにはここにいるチャンスがあると感じていた」とバロウは言う。
オハイオ州出身で、オハイオ州立大学で出会って以来バロウのことを知っているディフェンシブエンド(DE)サム・ハバードは、2019年からベンガルズにいる。そのハバートとチームメイトの一部は、ベンガルズが苦戦しているときに厳しい日々を過ごしていた。2年前にバロウが全体1位指名される可能性があったとき、ハバードとバロウはある会話を交わしている。
ハバードはバロウに「俺たちにはお前が必要だ。お前なら変えられる。俺には分かっている」と話したという。
実際にベンガルズの運命は変わり、シンシナティには間もなく栄冠がもたらされるかもしれない。ハバードは正しかった。
バロウこそ、その男なのだ。
【RA/A】