トム・ブレイディに多大な影響を与えた10人のプレーヤーとコーチ
2022年02月03日(木) 00:41トム・ブレイディは大勢の人々にとって非常に多くの意味を持っていた。ブレイディの仕事からキャリアが築かれていった。レガシーが生まれた。しかし、その名声によって彼が別の軌道に進み出した後も、彼は常に人々にとって最愛のチームメイトだった。
決して気安く付き合える相手ではない。彼は完璧を要求した。しかし、だからこそ、ニューイングランドでの日々が終わって時間がたった後も、人々は彼に会いたがったのだろう。ブレイディが2021年10月にバッカニアーズの一員としてニューイングランドに戻ってきた時のマシュー・スレイターがそうだった。
「何を話したかは言わないが、俺にとってトーマスを見つけることは重要だった」と2008年から2019年までブレイディとプレーしたペイトリオッツのスペシャルチームのエース、スレイターはシーズン第4週の試合が終わった翌日、ゲーム後にタンパベイのロッカールームをわざわざ訪れた理由について聞かれ、答えている。「言葉では表し切れない――彼は俺にとって本当に素晴らしい友人で、メンターだった。フットボールフィールドの上と外での景色を見せてくれた人だ。本当に親しい友人の1人に会う機会があれば、ハローって言いたいだろう。そうする機会があって良かったよ」
「今後、彼と俺がまた同じフットボールフィールドに立つことがあるかどうかは分からない。それは現実だ。その瞬間を大事にしたいと思ったんだ」
22シーズンを戦ったブレイディが引退を発表した。ここで、キャリアを通してブレイディに多大な影響を与えた10人のプレーヤーとコーチたちを取り上げてみたいと思う。決して彼の仕事相手のベストリストではないことをお断りしておきたい。それよりも、長年ブレイディとペイトリオッツを見守ってきた中で、フィールド上でも実り多く、また彼個人にとって非常に大きな意味を持っていたと思われる関係性について取り上げたいと思う。
1) ビル・ベリチック(ヘッドコーチ/HC)
コーチ:2000年から2019年、ペイトリオッツにて
コーチとクオーターバックの関係でこれほどまでに素晴らしいものは存在しない。彼らは20年近くにわたって前例のない成功を収めた。ディビジョンタイトル17回。カンファレンスチャンピオンシップ優勝9回。スーパーボウル優勝6回に敗北が3回。後にも先にもこのような記録は二度と生まれないだろう。そんな関係も最後はすり減ってしまったのか? それはそうだろう。どんな関係にもあるように、彼らにもハイとロー、その中間が存在した。しかし、ベリチックもシーズン第4週にスレイターと同様の行動を取っており、19対17でペイトリオッツが敗れた後で彼の元クオーターバックに会いに出掛けている。和解はなされた。決して失われることのなかった互いへの敬意は再び強化された。
「僕たちには、20年以上にわたる個人的な関係がある」とブレイディは試合後の記者会見で語っている。「彼がドラフトで僕をここに連れてきてくれた。僕たちはこれまですごくプライベートなこと、個人的な話をたくさんしてきた。それはそのまま伏せられるべきものだ」
「僕たちの関係についていろいろなことが言われている。今週すでに言ったように、プレーヤーの立場から言うと、コーチにはただ全力を振り絞ってほしいと願うものだ。彼もまた、プレーヤーとしての僕に同じことを望んでいたんだと思う」
2) ロブ・グロンコウスキー(タイトエンド/TE)
チームメイト:2010年から2018年にペイトリオッツ、2020年から2021年にバッカニアーズにて
ブレイディがタンパベイにいるというだけで、1年前にゲームへの情熱を失い、体もボロボロだと言って引退したグロンコウスキーが戻ってくるのに十分だった。ランディ・モス(ペイトリオッツの一員となった時にはすでにキャリアの終盤に入っていた)を除き、ブレイディが彼以上に優秀な選手とプレーしたことはなく、それはリザルトに表れている。このデュオは、ペイトン・マニングとマービン・ハリソンに次ぐ歴代2位となる合計105回のタッチダウンを記録している。
だがそれよりも記憶に残るのは、グロンコウスキーが2014年にブレイディに見せた忠誠心だ。ペイトリオッツはシーズン序盤にカンザスシティ・チーフスに敗れ、ブレイディにはゴーストが見えていた。試合の終わりにはルーキーのジミー・ガロポロと交代させられた。ベリチックは“われわれはシンシナティへ向かうのみ”とコメントした。その後、ペイトリオッツとブレイディは崩壊についての質問に答え、翌週にベンガルズに完勝。そこでグロンコウスキーはエモーショナルな反応を見せた。
「ここに来る前、ブラザーに言ったんだ。“今日はもう一度、俺が12をトム・ブレイディにしてやるぜ!”って」とグロンコウスキーはコメントした。「この1週間ずっと、あんたらはよってたかってあいつを批判していたけど、俺とチームメイトたちはみんなの力でトム・ブレイディを本来のトム・ブレイディにしてみせたんだ」
3) ジュリアン・エデルマン(ワイドレシーバー/WR)
チームメイト:2009年から2019年、ペイトリオッツにて
この2人の関係性にはどこか兄と弟のようなところがある。共にカリフォルニア生まれでドラフト後半に指名され、どちらも貪欲なワークエシックとゲームへの熱意で知られている。ブレイディはエデルマンにルートランの方法についてアドバイスしただけでなく、フィールド外でも彼の相談役となった。2人の絆はどのレベルでも結果を生み出したが、特に目立ったのはポストシーズンだ。エデルマンはレシーブ(118回)とレシーブヤード(1,442ヤード)で歴代2位を記録しており、これを上回るのは殿堂入りしているジェリー・ライス(151回、2,245ヤード)だけとなっている。
4)ジョシュ・マクダニエルズ(攻撃コーディネーター/OC、QBコーチ)
コーチ:2004年から2008年、2012年から2019年、ペイトリオッツにて
3年の空白期間を別とすれば、ブレイディより1歳年上のマクダニエルズはブレイディのペイトリオッツ時代のほとんどで最初はQBコーチとして、その次は攻撃コーディネーターとしてコーチを務めてきた。2人はしばしばお互いについて最高の友人だと表現しており、ブレイディは2人が“生涯のブラザー”だと話している。ブレイディが2007年シーズンに当時の最高記録であるタッチダウンパス50回を記録したことで、マクダニエルズの存在はアメリカ中の注目を浴びることになった。そして、その活躍はやがてデンバー・ブロンコスのヘッドコーチ就任へとつながっていく。それが失敗に終わった後、マクダニエルズはペイトリオッツに戻り、さらに3回のスーパーボウルで自らのプレーコールによりチームを勝利に導いた。
5)ウェス・ウェルカー(WR)
チームメイト:2007年から2012年、ペイトリオッツにて
過去20年に活躍した偉大なレシーバーの中で、最も忘れられた存在になっているのがウェス・ウェルカーかもしれない。ウェルカーはドルフィンズとのサイン・アンド・トレード契約でニューイングランドにやってくると、すぐさまレコードブックに残るパフォーマンスを見せ、ペイトリオッツでの6年でキャッチ100回越えのシーズンを5度送った。その数字に届かなかったのは2009年シーズンの終わりにACLを断裂してから戻ってきた2010年だけだ。ちなみに、それでもキャッチ86回をマークしている。ルートを走ってボールをキャッチするウェルカーの意欲に言及し、ブレイディは“ゴールデンレトリバー”のようだと話していた。
6)ダニー・アメンドーラ(WR)
チームメイト:2013年から2017年、ペイトリオッツにて
ブレイディにはあるタイプがある。ダニー・アメンドーラはそれにフィットした。タフ。恐れ知らず。キャッチをしっかりと決める力。ペイトリオッツがウェルカーに代わって契約を結んだときに期待していたような数字は決して残せなかった――主に負傷とエデルマンの台頭により――アメンドーラだが、ブレイディのお気に入りの選手となり、5年間の大部分でその位置にとどまった。ゲーム終盤やポストシーズンには、何度かヒーロー的なプレーを決めている。ブレイディと共にいるために、年々報酬を減らしたアメンドーラ。彼が「“ペイトリオッツ流”を辞書で引いたなら、そこにはトム・ブレイディのことって書いてあるさ」と言ったのはそれほど昔のことではない。
7)マット・ライト、ダン・コペン、ローガン・マンキンス(オフェンシブラインマン/OL)
チームメイト:ライト/2001年から2011年、コペン/2003年から2011年、マンキンス/2005年から20013年、それぞれペイトリオッツにて
そう、これはずるい。一つのスポットに3人にいるのだから。ともあれ、ブレイディはキャリアの初期からオフェンシブラインとはユニークな関係を築いてきた。自分を彼らの一員だと定め、大男たちとつるんでいそうな雰囲気を持っていたのだ。悪ふざけをしたり、ブレイディがヤギを抱えている写真をあしらったTシャツが存在したりする一方、強い忠誠心もあり、ベリチックHCが2014年にマンキンスをタンパにトレードした際には、ブレイディがあごひげを伸ばしたほどだった。もちろん、卓越したプレーの数々もあり、もしかしたらプロボウルに7度選ばれたガード(G)であるマンキンスに、誰かが正当な殿堂入り候補として注意を向けることがあるかもしれない。
8)ケビン・フォーク(ランニングバック/RB)
チームメイト:2000年から2011年、ペイトリオッツにて
このランニングバックは熱烈なブレイディ派であり、それは自身がペイトリオッツの殿堂入りを果たした際にブレイディがフォークの33番のジャジーを着て登場したことで報われた。12年間共にプレーしてきたフォークに対し、ブレイディは殿堂入りの式典で「ケビン、僕たちは君を愛している。君は信じられないくらい素晴らしい人であり、信じられないくらい素晴らしいチームメイトだ。ケビンは素晴らしい選手だったのと同じくらい、良い友人なんだ」と語りかけた。
9)クリス・ゴッドウィン(WR)
チームメイト:2020年から2021年、バッカニアーズにて
バッカニアーズでの2シーズンでブレイディからキャッチしたタッチダウンパスの数ではマイク・エバンスの方が上かもしれない。しかし、ゴッドウィンとブレイディは、ニューイングランドでブレイディがウェルカーやエデルマンと築いてきたものと同様のつながりを発展させていた。ブレイディがいてほしいと思うところにいるという信頼がゴッドウィンにはあり、最終的にスーパーボウルを制したシーズンの終盤にゴッドウィンが何度かボールを落としていたときでさえ、ブレイディはゴッドウィンに投げるのをあきらめなかった。2021年シーズン終盤、14試合でキャッチ98回をマークしたゴッドウィンが膝を負傷した際、ブレイディは目に見えて苦しんでいた。
10)ブルース・エリアンス(HC)
コーチ:2020年から2021年、バッカニアーズにて
エリアンスがこのリーグでヘッドコーチになったのは60歳になってからだった。そして、2013年から2017年にアリゾナでかなりの成功を収めている。しかし、2017年シーズンを終えていったん第一線から遠ざかったとき、彼の履歴書にはヘッドコーチとしてのスーパーボウル制覇という経歴が欠けていた。エリアンスがバッカニアーズのヘッドコーチに就任してから1年後、ブレイディはニューイングランドを離れてタンパでエリアンスに合流するという決断を下す。それから11カ月、エリアンスとバッカニアーズは王者になっていた。エリアンスの業績に新たなレガシーが加わり、ブレイディはペイトリオッツ以外で初めてのリングを手に入れたのだ。
【M/A】