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苦悩もあったNFLまでの道のりを振り返るカーディナルス新人CBマシュー

2022年05月16日(月) 12:03


フィールドに置かれたフットボール【Aaron M. Sprecher via AP】

現地13日(金)に行われたルーキーミニキャンプで初めてアリゾナ・カーディナルスの施設に足を踏み入れたコーナーバック(CB)クリスチャン・マシューは、ここにたどり着くまでの道のりや、フットボールから離れる決断をしかけたときのことを、時間をかけて思い返している。

チーム公式サイトによると、マシューは金曜日に「ちょっと時間が必要だった。非現実的だったからな」と話していたという。

高校卒業後、マシューはNFL入りを目指してジョージアサザン大学でカレッジキャリアをスタートさせた。しかし、適任性の懸念やコーチの交代など、さまざまな問題によってサムフォード大学に移籍することになり、そこからさらにバルドスタ州立大学に移ってこれまでの2年間を過ごしていた。

しかしながら、マシューがバルドスタ州立大学ブレザーズに参加した2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行がスポーツ界にも影響を及ぼし始め、バルドスタ州立大学は最大級の打撃を受けている。NCAAフットボールの多くのチームが2020年シーズンを短縮して乗り切ったのに対し、バルドスタ州立大学の体育局はチームの全試合をキャンセルせざるを得なかったのだ。シーズンが終了し、先行きが見えない中で、マシューはカレッジを出てからもフットボールを続ける意味があるのかどうかを考え始めたという。

経営と物流に関連する仕事を目指して勉強していたマシューは、スーパーマーケットチェーンのウォルマートから、ストアディレクターという新卒の若者にとっては絶好のポジションの内定をもらっていた。マシューはこれが経営者としてのキャリアを確立させる第一歩になるかもしれない、そして、こんな仕事は滅多にないというふうに考えていた。

一方でこのとき、家族や友人はマシューに対して、経営者にはいつでもなれるのだからNFLでプレーするチャンスを手放すべきではないと説得した。

マシューは「決める寸前のところまでいっていたんだけど、友達と家族が冷静にさせてくれた。ガールフレンドと率直に話し合ったとき、もし俺が本当にやりたいなら応援すると彼女は言ってくれた。でも、それと同時に、自分の夢を実現して高いレベルでプレーする機会を得られる可能性は、ウォルマートのマネージャーになる可能性よりもずっと低かった」と振り返っている。

長年の夢を実現させるために新たな気持ちで集中し始めたことで、マシューはバルドスタ州立大学での活動が再開した2021年にプロにふさわしい人材であることを証明した。14試合に出場してトータルタックル37回、ソロタックル26回、インターセプト1回、パスブレークアップ15回、ブロックキック1回をマークしたマシューは、ブレザーズが12勝2敗という好成績を収めるのに貢献し、ディビジョンIIナショナルタイトルゲーム出場を果たしている。

そして、数週間前に2022年NFLドラフト3日目に全体244位でカーディナルスから指名されたのだ。バルドスタ州立大学からドラフト指名を受けた史上6人目の選手となったマシューは、今回のドラフトでディビジョンIIの選手としては4番目に指名されている。マシューにとっては、NFLチームからドラフトで指名されるという夢をかなえた、努力の賜物と言える瞬間だった。

53人のロースターに入り、プロの一員としてプレーするという目標を実現させるためにはまだいくつかの壁が待ち受けている。とはいえ、いずれにせよ、これまでに苦労や迷いがあったとしても、実現不可能に思えた夢をかなえることができてマシューはきっと満足しているはずだ。

「(これは)一生物だ。何があろうと、あの(ドラフトの)電話は間違いなく俺の人生を変えた」とマシューは語っている。

【RA】