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「2023年のQBについて話すのは無駄」と今季に集中するファルコンズHCスミス

2022年05月19日(木) 11:20

アトランタ・ファルコンズのHCアーサー・スミス【AP Photo/Brynn Anderson】

アトランタ・ファルコンズはこのオフシーズンに長年チームでプレーしてきたクオーターバック(QB)のマット・ライアンをインディアナポリス・コルツにトレードしたことで、14年ぶりに次のフランチャイズシグナルコーラーを見つけなければならなくなった。

ファルコンズが元1巡目指名選手のQBマーカス・マリオタと契約し、2022年のNFLドラフトで3巡目にシンシナティ大学のQBデズモンド・リッダーを指名したところを見ると、ライアンが去ったことでできた傷にその場しのぎの手当てを施すことはあっても、完治させることはできないのかもしれない。2023年のドラフトでは評価の高いクオーターバックがそろうかもしれないことを考えれば、これはサラリーキャップに余裕のないファルコンズが講じた抜け目のない、費用対効果の高い戦略と言えよう。

とはいえ、今シーズンにファルコンズが将来の可能性に気を取られるあまり、より高い指名権を確保するために2022年に試合に勝とうとしないことまでは期待してはいけない。むしろ、ファルコンズは今まさに勝とうとしている。

ヘッドコーチ(HC)のアーサー・スミスは先日の『The Athletic(ジ・アスレチック)』のジェフ・シュルツとのインタビューで次のように述べた。

「2023年について話したいというのであれば、それは私にとってもあなたにとっても時間の無駄だ。チームがフットボールの試合に勝とうとしないなど、くだらない話だ。勝とうとしなければ、必ず代償を払うことになるだろう。ドラフトの順位でトップになれることの利点は分かっている。だが、今のナショナル・フットボール・リーグではトレードが頻繁に行われる。ドラフトの指名権を獲得するためのトレード、クオーターバックのトレード。1989年にジミー・ジョンソンHCがダラス・カウボーイズを率いていた頃とは時代が違うんだ。あの頃はまだフリーエージェンシーもなかった。かの有名なランニングバック(RB)ハーシェル・ウォーカーのトレードがあっただろう。その年のカウボーイズの結果は1勝15敗と散々で、再建に時間がかかった。今のNFLはまったく違う。当時は指名権よりも先にわが子を手放してもいいという感覚だった。まだ古い考え方の人もいて、見ていて滑稽だ」

「良いチームであれば、毎年どのように立て直していくかを知っている」

ファルコンズはまさにそのような良いチームになろうとしている。このオフシーズンにライアンの穴をマリオタとリッダーで埋めたほか、チームはオールラウンドプレーヤーのワイドレシーバー(WR)コーダレル・パターソンと再び契約し、バックフィールドにRBデイミエン・ウィリアムスを追加。控えのレシーバーとしてダミアー・バード、カダレル・ホッジス、オーデン・テイトと契約し、トレードでラスベガス・レイダースから移籍してきたWRブライアン・エドワーズと最高位のドラフト指名権で獲得したWRドレイク・ロンドンの二人は、スタータイトエンド(TE)のカイル・ピッツと組むことになる。これらの動きによって、ファルコンズがいきなり第57回スーパーボウルを狙うことは難しいが、大急ぎで再建を試みたようには見える。ファルコンズはスミスHCがヘッドコーチに就任した初年度の7勝10敗という戦績を改善しようとしているようだが、分析好きな者からすれば、それは期待以上の結果だったと言える。

2022年にファルコンズが試合に勝てる能力を皆無とするような人たちは、相手にしていられないとスミスHCは言う。

スミスHCは「チーム作りの戦略に多くの時間を費やして、それを愛してやまない人たちが世間にはたくさんいる」とシュルツに話している。「彼らは夢中になってオンライン上でジェネラルマネジャー(GM)になったつもりになるんだ。サラリーキャップを知っているふりをし、ロッカールームがどんなところかを知っているふりをし、ゲームプランを組み立てるのがどんなものかを知っているふりをし、NFLでの生活について知っているふりをする。だが実際は、彼らは何も知らない」

ファルコンズは現在、今シーズンのサラリーキャップの支出が1 億 3,140 万ドル(約168億6,519万円)にのぼっており、NFL の全32チームの中で最下位につけている。その大半はファルコンズが抱える6,300万ドル(約80億8,605万円)のデッドマネーの多さがリーグトップとなっていることに起因しており、ライアンとWRフリオ・ ジョーンズという二人のレジェンドがチームを去ったことが大きな要因となっている。この数字とファルコンズの消費グゼへの影響は、GMのトーマス・ディミトロフ時代から移行し、スミスHCとテリー・フォンテノーGMとの未来を完全に受け入れようというチームの姿勢を反映していると言える。

ドラフト後にフォンテノーGMは「これは一からの立て直しではない」と『NFL Network(NFLネットワーク)』のキャメロン・ウルフに述べている。「残ってもらいたい選手もいる。われわれの努力もまだ十分でないことは分かっている。これから必要な努力を重ね、チームに合った選手を追加していきたい」

スミスHCはシュルツに対して、ライアンと別れた一方でベテラン選手のオフェンシブタックル(OT)ジェイク・マシューズやディフェンシブタックル(DT)グレイディー・ジャレットとは契約を延長した点を擁護し、ライアンの高額契約を見直す可能性を「借金返済のために新しいクレジットカードを作るようなもの」だとした。

「確かに、それをやって、ロースターを大幅に変更することはできただろう。でも、それをやっていたら今ごろはどうなっていた?」とスミスHCは説明する。「どうやってやるにしても、サラリーキャップに2年間は苦しめられることは分かっていた」

現状のファルコンズは、とりわけクオーターバックのポジションにおいて、リーグで最も実績のないロースターを擁するチームだが、それでもスミスHCは2022年に十分に戦えるメンバーであることを願っている。

「私は勝ちたいんだ。どうしても勝ちたい」とスミスHCはシュルツに話している。「もちろん、何も保証はない。一年後にどうなるかは分からないし、この仕事のことだけでなく、健康や人生についても同じことが言える。哲学的なことを言いたいんじゃないんだ」

「だけど、私はこのチームの構成を気に入っている。これからの方向性にも満足している。ハングリー精神があり、競争心があり、1年契約の選手もいて、何か証明するものがあると感じている選手がたくさんいる。われわれには証明すべきものがあるんだ」

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