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陸上で夢破れるもイーグルスのトレーニングキャンプに向けて準備するWRアレン

2022年07月21日(木) 18:24


デボン・アレン【AP Photo/Ashley Landis】

5年間の空白を経て、トラック競技のスター、デボン・アレンはこの夏、フットボールに復帰する。

だが、その前に彼にはトラック上でやるべきことがあった。全米選手権王者に3度輝き、オリンピックに2回出場しているアレンは、2022世界陸上競技選手権大会で実力を出しさえすれば、3つの大会において偉業をコンプリートできるはずだった。

ところが、彼はわずか0.001秒の差で失格となってしまい、自身もそれをまだ信じられずにいる。男子110mハードルの決勝に進んだアレンは、スタートガンが鳴ってから0.099秒で動き出し、彼の陸上シーズン、そしてその輝かしいキャリアで最も重要と言ってもいいイベントで目の覚めるようなスタートを見せた。

だが、合図が鳴ってから0.1秒以内に動くことは認められていない。アレンはあまりにも早すぎた――0.001秒早すぎたのだ。

ルール上、彼のスタートは認められなかった。

「俺のいつもの反応時間を見てみたら、どの大会でも全スプリンターの中で上位1から5%に入っているはずだ。つまり、俺は普段からガンへの反応が早いんだ」と現地19日(火)、『The Dan Patrick Show(ダン・パトリック・ショー)』に出場したアレンは説明している。「そして、オレゴンのユージーンで開かれたこの世界選手権は間違いなく俺にとって大きな大会だったから、いつも以上に早く反応してしまったんだろう。そういうルールなのは、すごく不運だったよ。ルールについては理解しているし、フォルススタート(フライング)がないように決められているものだ。でも、1,000分の1秒といった誤差を認めるわずかな余地もないっていうのは少し納得いかないよ。そのせいで俺は走るチャンスすらもらえなかったんだからね」

このスピーディーなスタートを武器に、今シーズンのアレンは3つのレースで1位になっており、ニューヨークグランプリでは110mハードルで史上3番目に速い12秒84というタイムをマークしている。勝利のチャンスは十分にあった。だが、彼は自分以外の選手たちが走るのを眺めていることしかできなかった。

「ああ、世界陸上で勝てたらうれしかったけど、それはそれだ。ただ、あの出来事について納得いかない部分はあるけどさ」とアレン。「けど、起きてしまったことだし、あまりくよくよしてはいられない。1週間後にはやらなきゃならない仕事があるからな」

来週、アレンは正式にフットボールに復帰する。5年間フットボールを休止していたアレンだったが、春にオレゴン大学のプロデーに参加。彼はそのワールドクラスのスピードでスカウトたちを感心させ、フィラデルフィア・イーグルスに招かれると、ドラフト外のルーキーとして27歳で契約した。

オレゴン大学ではワイドレシーバー(WR)として活躍し、1年目にキャッチ41回、684ヤード、タッチダウン7回を記録したが、その後はプレーの機会が減り、陸上競技に集中することにした。だが、遅れてのリーグ入りを彼はアドバンテージと捉えている。

「6年間、NFLで打たれてこなかったことは利点だと思うし、今までのキャリア全体で今が最速で一番身体的に充実しているのも利点だと思う」と彼はパトリックに話した。「大学時代よりずっと速くなっている。大学でプレーしていたときもそれが俺の強みだった。だから、全体としていいことだと思うよ」

「大変なのはこれからNFLのシステムに戻り、実際にフットボールをプレーすることだ。でも俺は昔からずっとフットボールをやってきたから、調子を取り戻すのは結構簡単だと思う」

エリートレベルの陸上トレーニングからフットボール最高峰の準備への切り替えを素早くしなければならなかったというアレン。息抜きの時間はフェニックスでゴルフをした数日しかなかったという。世界有数の選手たちと並んでトラック上を走ることから、パッドを付けて芝の上に立つのは劇的な変化だが、準備はできているとアレンは考えている。

彼はまた、これからイーグルスのオペレーションや攻撃システムに慣れていかなくてはならない。フィラデルフィアはこのオフシーズンにA.J.ブラウンを獲得してレシーブ陣をアップグレードしており、アレンは2020年のハイズマントロフィー受賞者である2年目のWRデボンタ・スミスを補完する役目が得られることを願っている。

「確実なことはまだ分からないんだけど」とイーグルスの中でどう収まるつもりかと聞かれたアレンは話し出した。「俺のスキルセットはオフェンスの範囲をフィールドの奥まで伸ばすことだ。それからスペシャルチームではリターンゲーム、キックリターンやパントリターンでできるだけのことをやるつもりだし、逆の場合でもしっかり走ってタックルもしたい」

「どういう役割になるかは見てみよう。フィールドで自信がつくにつれて、チーム内での役割も増えると思う。でも、オレのゴールはフットボールのゲームでイーグルスが勝てるように力になることだから、そのために必要なら何でもするよ」

トラックからフットボールにうまくシフトできることを示し、イーグルスの開幕ロースター入りを果たすことができれば、彼は新たなスピードの脅威となり、フロントオフィスの能力が再び評価されることになるだろう。もしうまくいかなくても、彼はいつでもトラックに復帰できる。

それでもアレンはNFLでの時間が一瞬では終わらないことを願っている。

【M】