Pアライザ放出という判断を下すも依然として重大問題を抱えるビルズ
2022年08月29日(月) 13:09バッファロー・ビルズは現地27日(土)夜、新人パンター(P)マット・アライザを放出した。最悪の場合、サンディエゴ州立大学の元スター選手であるアライザが昨年10月に17歳の少女への集団性的暴行に加わったとして起こされた民事訴訟に含まれる申し立てが真実であると証明され、大学やサンディエゴ警察、そしてNFLで選手を審査することになっている担当者たちが、アライザを10カ月間にわたってそのまま放置したことについて、多くの疑問が出てくることになる。よく見積もっても、シーズンが始まろうとしている今、アライザはいかなるチームにとっても避けたい存在だと言えよう。
ビルズのアライザへの対応については――申し立てられた出来事について何を知っていたのか、どの程度掘り下げて調査したのか、情報収集と調査を誰に任せたのか、など――ほぼ間違いなくこれからさらに多くの情報が明らかになるだろう。ただし、ビルズのジェネラルマネジャー(GM)ブランドン・ビーンが土曜日に記者会見でアライザの放出を発表した際に、チームにはすべての事実を把握する手段がないと言及していた通り、NFLの各フランチャイズは調査機関ではない。とはいえ、過去の事例を見ると、チームは自分たちが聞きたいことを教えてくれる人に答えを求めることが多いようだ。
おそらく、ビルズはそれ以上の努力をしたのだろう。チームの説明によると、彼らが最初にこの疑惑を知ったのは“7月下旬”、つまり約1カ月前のことであり、被害者とされる人物の弁護士がチームの弁護士の1人と話をしたときだったという。ビルズは状況に関する調査を始めたものの、判断は急がないようにしていたと明かしている。彼らは当初、アライザをチームから離す行動を起こさなかった。アライザは練習に参加していただけではなく、プレシーズンの序盤2試合にも出場している。プレシーズン初戦では82ヤードのパントを決めて幅広く絶賛されており、22日にはベテランPマット・ハックの放出を受けてチームの先発パンターの座も手に入れていた。そして木曜日、訴訟が起こされて『Los Angeles Times(ロサンゼルス・タイムズ)』が記事にしたことで今回の件が知れ渡っている。アライザは金曜夜に行われたカロライナ・パンサーズとのプレシーズン最終戦に向けてノースカロライナ州シャーロットにあるバンク・オブ・アメリカ・スタジアムにチームと共に出向いたものの、試合には出場していない。
ビルズのヘッドコーチ(HC)ショーン・マクダーモットは試合後の記者会見でアライザを出場させなかったのは自分の判断だったと述べ、「最終的に、そうすること(出場させること)は正しくないと感じたためだ」と説明した。ビーンGMは土曜日、アライザの見解はビルズが原告側の弁護士から聞いた内容と異なっていると話しており、チームはまだ全貌を理解できていないとつけ加えている。
それでも、新しい情報を得たからなのか、世間から怒りの声が上がったからなのか、ビルズはアライザを放出するという正しい判断を下した。その点だけを見れば、クオーターバック(QB)デショーン・ワトソンに対するクリーブランド・ブラウンズの対応と比べると迅速な方向転換だったと言える。また、それは簡単な決断でもあった。アライザには自分自身を擁護する権利が確実にある上に、ビルズにも不穏な告発から自分たちのフランチャイズを保護する権利がある。しかし、これは詰まるところ、NFLで最も皮肉的でありながら最も重要な側面である数値面での判断なのだ。つまり、アライザはパンターであり、パントの能力は優れているものの、ドラフト6巡目で指名された新人であり、NFLでの実績もなく、ビルズが支払うべき莫大な額の契約もないということだ。
ワトソンを受け入れたブラウンズはあらゆる批判を受けても仕方がない。とはいえ、多くの道徳的な問題を抱えるクオーターバックであったとしても――少なくともブラウンズにとっては――フランチャイズクオーターバックを手に入れられることに変わりはなく、それはパンターを擁することとは確実に意味が違っている。決して喜ばしいことではないが、いやが応でもプロスポーツチームは――他の企業と同様に――最も重要な人材に便宜を図るために自らを調整するものだ。
ビルズは今シーズン、スーパーボウル出場の有力候補となっている。アライザの訴訟が進むにつれてバッファローに騒動や余計な話題を招き入れるのはばかげている。この2日間のビーンGMとマクダーモットHCを見れば、アライザの状況に対して、彼らがいかに感情的および知的なエネルギーを消耗したかが分かるはずだ。シーズン開幕を目前に控えたチームにとって、首脳陣に時間を費やしてほしい問題はそのようなことではないだろう。
アライザの件に関しては、どれほど優秀なパンターであったとしても、人々がやがて疑惑を忘れ去るのをチームが待つほど必要不可欠な存在ではないということが結論として分かった。簡単に言えば、替えがきくということだ。
ビーンGMは土曜夜、フットボールの試合に勝つことよりもビルズの文化の方が重要だと述べている。それは真実なのだろう。また、パンターが直接勝負を決めることはほとんどないため、より劇的に文化的な側面に重きが置かれたのかもしれない。
【RA】