レイダースがQBカーをベンチへ、残りの2試合ではスティッドハムを先発に指名
2022年12月29日(木) 15:16まだポストシーズン進出への道がわずかに残されている中で、ラスベガス・レイダースはチームのトップクオーターバック(QB)をシャットダウンしている。
現地28日(水)、レイダースのヘッドコーチ(HC)ジョシュ・マクダニエルズは今シーズン残りの2試合でQBデレック・カーをベンチに下げてQBジャレット・スティッドハムに先発を任せると発表した。
「現状に満足している者はいないが、今は出場経験の少ない若い選手を評価する機会だと考えている」と語ったマクダニエルズHCは「素晴らしい活躍をしてくれたデレックとも話したし、彼は今のシナリオや状況を理解してくれている。若い2人に対しても非常に協力的だ。1年を通してこの3人は協力して取り組んできた。彼は2人のためにできることを何でもしてくれるだろう」と続けている。
『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートは水曜日、カーが“ケガに関連のない”理由で練習に参加しない予定だと報じていた。また、カーとレイダースがここ数日間で会話を交わした結果、両者ともにカーが残りの2試合から身を引くのが最良だという結論に至ったのだとラポポートはつけ加えている。
カーを下げることはシルバー&ブラックが白旗を振っていることを意味しているわけではないが、そうなる可能性はかなり高い。成績面で見れば、レイダースはまだプレーオフ進出の可能性を残しているものの、実際にプレーオフに進出するためには他チームの結果も彼らの思い通りになる必要がある。
スティッドハムに移行するというマクダニエルズHCの判断は、レイダースが可能性の低いプレーオフ進出を目指すことよりも、自分たちのロースターにおけるクオーターバックポジションを見つめ直すことに興味を持っていることを示唆している。また、マクダニエルズHCが現時点で明言しなかったとしても、いずれカーから離れる準備をしている可能性を示唆しているとも言えよう。
マクダニエルズHCは「むしろ機会について話している。私たちは皆、自分たちの置かれている状況に対して責任がある。このような状況でプレーするところを見たことがない選手を、優秀な2チーム、本当に優秀な2チームと対戦させる機会になると思っている」と説明している。
「デレックはたくさんプレーしてきた。シーズンが終われば、どうすれば最も進歩できるか、何が全員にとって最も理にかなっているか、どのように前進していくかについて、多くの評価が行われるものだ。いずれそうする必要があることは分かっていた」
「当然、今の状況とは異なるシナリオになることを望んでいた。だが、今日ですべてが決まるわけではない。今回の判断は、話し合って熟考した結果、彼から何を得られるのかを確かめる機会になると思って下しただけだ。将来的にどうするかはまだ分からない。シーズンが終われば、整理しなければならないことがたくさんある」
今年4月、ベテランQBのカーはノートレード条項が含まれている3年1億2,150万ドル(約162億4,668万円)の契約延長にサインした。この契約は巧妙にできており、カーを第57回スーパーボウルから3日以内にカットまたはトレードした場合に2023年のデッドキャップヒットが562万ドル(約7億5,144万円)にとどまるおかげで、レイダースにはカーと離別する道が残されるようになっている。カーが負傷した場合、2023年の年俸の全額(3,290万ドル/約43億9,901万円)および2024年の年俸750万ドル(約10億0,277万円)は保証される。つまり、カーが今季最後の2試合でケガした場合にレイダースはその負担を強いられることになるのだ。
財政的な観点から見ると、この2月に健康なカーと離別することは理にかなっていると言える。また、マクダニエルズHCがカーは“たくさんプレーしてきた”と述べた一方で、たくさん“良い”プレーをしてきたとは述べていないことを留意するのは重要だろう。
2022年シーズンにおけるカーのパス成功率は60.8%であり、これは9年間のキャリアを通して2番目に低い数字だ。タッチダウン対インターセプト比は24対14となっており、2シーズン連続で14回のインターセプトを喫している。さらに、86.3というパサーレーティングもキャリアで2番目に低い記録だ。
レイダースは今季、フレズノ州立大学でカーとチームメイトだったワイドレシーバー(WR)デイバント・アダムスをトレードで獲得すべく、グリーンベイ・パッカーズにドラフト1巡目および2巡目指名権を送った。カーとアダムスのコンビには大きな期待が寄せられていたが、彼らはそれに応えられていない。アダムスは今シーズンも1,000レシーブヤードを達成し、15試合を通じてタッチダウン12回を記録してはいるものの、このコンビは毎週、4クオーターを通して質の高さを維持するのに苦戦していた。相手ディフェンスがアダムスを封じるために多くのリソースを割くことで、カーは他のターゲットに投げることを余儀なくされてきた。そのため、レイダース攻撃陣が前半では爆発的な力を見せつけながらも、後半に勢いを失うという試合が何度もあったのだ。
この事実とありえない方法で試合に負ける癖がついてしまった結果、レイダースは6勝9敗という成績になっている。マクダニエルズHCが話しているように、2022年での優勝を明確に目指していたチームにとっては残念な結果だろう。
今、ポストシーズンへの切符を手に入れることは奇跡的なことが起こらない限りあり得ないという現実を、マクダニエルズHCは受け入れている。レイダースは水曜日に、ディフェンシブエンド(DE)チャンドラー・ジョーンズやラインバッカー(LB)デンゼル・ペリーマンを故障者リザーブ(IR)に登録もしている。
マクダニエルズHCは「仕方がないことだ」と強調した。「チャンドラーもデンゼルもいなくなる。もちろん、他のポジションにおいてもこれに対処してきた。今の目的は準備と練習をする素晴らしい1週間を過ごし、試合に出て勝つために全力を尽くすことだ。それこそ私たちがしようとしていることだ。だから、ホームでファンを前にしてプレーできることを楽しみにしている。今年はホームではまずまずの成績を残してきたし、今週もそうなるようにするつもりだ」
スティッドハムはNFLでの4年間でわずかなスナップにしか参加したことがない。2019年から2020年にかけてはニューイングランド・ペイトリオッツで8試合に出場し、パス48回中24回を成功させて270ヤード、タッチダウン2回、インターセプト4回を記録。その後、マクダニエルズHCに続いてレイダースに加入してからは13回しかパスを投げておらず、そのうち8回を成功させて72ヤードという成績にとどまっている。
先発をスティッドハムに任せることで、マクダニエルズHCは控え選手の活躍を見る絶好の機会を手に入れられるはずだ。しかし、残りの試合がわずか2試合しかないということを踏まえると、そこから得られる結果はスティッドハムが2023年にレイダースで先発の座を獲得するのに値するかを決定するものにはならないだろう。
マクダニエルズHCはスティッドハムについて「彼は本当に懸命に取り組んでいるし、とても聡明で、うちの攻撃システムを理解している」と話し、こう続けた。「彼はNFLに入ってからずっと、毎週プレーしているようなつもりで準備している。ルーキーの頃はバックアップだった。その意味では、彼には常に準備を整えておくという経験がある。彼に1週間を与えて、これがどのように準備や練習、日曜日のパフォーマンスに影響するか見ようと思ったし、それは彼にとって良い出発地点になると思う。でも、彼にはいつもと同じように準備してほしいと思っている。彼がそうしようと思っていることは知っているし、そのために一生懸命に働いていることも分かっている」
オフシーズンに、マクダニエルズHCはカーを擁護していた。しかし、こうした発言をするということは、自分の思い描く長期的な計画にカーがフィットしていない可能性があると気づいたのかもしれない。カーを手に入れられるとなった場合、少なくとも数チームは彼に興味を持つはずだ。今後、カーを取り巻く環境が変化する可能性はあるだろう。
カーについて「簡単な話し合いにはならないが、それがこのポジションの本質だ」と述べたマクダニエルズHCは次のようにつけ加えた。「彼の対応方法についてはこれ以上ないほど感心している。彼はA1クラスの人間であり、長い間、この場所にとって重要な存在であったことは明らかだ。すでに言った通り、この先どうなるかは分からない。ここで未来を予測するつもりはない。いろいろなことが起こり得るし、一日一日、それを受け止めていくつもりだ。そして、今は(サンフランシスコ)49ers戦に向けて準備を整える」
【RA】