ビルズSハムリンについてチームと話した内容を明かしたジャガーズHCペダーソン
2023年01月05日(木) 14:38現地2日(月)夜、バッファロー・ビルズのセーフティ(S)ダマー・ハムリンにまつわる恐ろしい出来事がシンシナティで起こったとき、ジャクソンビル・ジャガーズのヘッドコーチ(HC)ダグ・ペダーソンは非常に心配しながらその様子を見守っていた。
土曜夜に行われるテネシー・タイタンズとの対決――事実上のAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)南地区優勝決定戦――に向けての準備は、ジャガーズの1年目のヘッドコーチにとって、もはや重要なことではないようだ。他のオーディエンスと同様に、彼の視線はハムリンに向けられている。
ペダーソンHCは水曜日に『NFL Network(NFLネットワーク)』の“Good Morning Football(グッドモーニング・フットボール/GMFB)”に出演した際に「テレビで月曜夜の試合を見ていて、最初はよくあるプレーだなと思っていた」と説明している。「残念ながら、われわれは時に選手が倒れる場面を目にすることがある。そして、周りの反応を見るものだ。選手たちからの反応やサイドラインからの注目を見た。その反応は通常通りのものではなかった」
「このゲームには長い間、関わってきた。NFLには30年以上在籍しているが、このような状況に出くわしたことはない。選手やコーチの反応を見れば、想像以上に深刻なことが起こっていることが分かった。そして私にとっては、すべてがそこで止まった。ただテレビに集中して、トロイ(エイクマン)やジョー(バック)、その夜の放送に関わっていた数人からできるだけ多くの情報を得ようとしていた。だが、事態が明らかになるにつれ、状況はすぐに悪化した。そのとき、何もかもがどこかへ行ったような感覚になり、命こそが最も重要なものだと思った」
ハムリンはベンガルズ戦の第1クオーターでタックルした後に心停止に陥った。ハムリンはフィールド上でCPR(心肺機能蘇生)を受け、ビルズはそこで彼の心拍が回復したとしている。その後、ハムリンはシンシナティ大学医療センターに緊急搬送された。水曜日の時点で、ハムリンは依然としてICU(集中治療室)で重篤な状態にあるものの、“回復の兆し”を見せている。
月曜夜、医療関係者がハムリンに駆け寄ったことから、両チームの多くの選手が明らかに感情的な様子を見せていた。ゲームオフィシャルはビルズのショーン・マクダーモットHCおよびベンガルズのザック・テイラーHCの両方と協議している。選手やコーチがフィールドを離れてロッカールームへ戻った後、試合は一時的に中断され、その後、最終的に試合が延期されることが発表された。
ペダーソンHCはほとんど想像すらできないような非常に困難な状況下で両チームのコーチがとった行動を称賛している。
「当然、コーチとしても選手としても、このような事態に備えてはいなかったはずだ」と述べたペダーソンHCはこう続けた。「あの2人の紳士を思い返してみると、コーチが被るハットなど完全になきものになっていた。2人とも父親になったような感じで、あの場で精神的指導者になる可能性すらあったと言える。彼らの対処方法や、彼らがとったコミュニケーション方法は素晴らしかった」
「あなたが言ったように、NFLコミュニティは結束が強く、コーチたちは当然、お互いを理解していて結束の固いグループとなっている。コーチたちが一丸となること。また、彼らが実際にやったように、互いを抱きしめ合うように2つのチームが一丸となること。ダマーとその家族のことを本気で考えること。確実に選手たちが必要とする答えを得られるようにすること――これに関することで多くの質問があったはずだ。2人の紳士はそれに非常にうまく対応していたと思う。明らかにプロ意識が高い。コーチとしての姿は消え、父親としての姿が現れていた。私には3人の息子がいて、あの瞬間、フットボールは彼らほど重要なものではなくなった」
フットボールファンだけにとどまらず、多くの人々がハムリンの健康状態に注目する中、NFLの32チームはシーズン第18週の試合に向けて準備する任務を負っている。ペダーソンHC率いるジャガーズにとって、次の試合は2017年のAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)チャンピオンシップゲーム以来、フランチャイズ史上最も重要な試合となる。地区タイトルをかけてタイタンズを迎え撃つジャガーズは、2017年シーズン以来のポストシーズン進出を狙っているのだ。
NFLの元クオーターバックであり、コーチとしてチームをスーパーボウル優勝に導いたこともあるペダーソンHCは、そうした状況で準備をすることが選手やスタッフにとって特に難しいことを分かっているようで、次のように述べている。
「準備をしなければならない。それがコーチとしては一番難しいことだ。当然、私は月曜夜の試合を見て、コーチングのことはすっかり頭から離れてしまった。ダマーと彼の家族のことを考えていた。ビルズとベンガルズの両サイドの選手のこともね。その後すぐに、自分たちのチームに意識を向けた。これにどう対処しようか、と考えていた。次の日にはメンバーが来る予定だった。どうやってチームの準備を整えようか。何を言えばいいのかと思っていた」
「われわれはAFC南地区タイトルをかけて争っている最中だ。(中略)人間の本質であり、人間らしさでもある。ただ現実的かつ謙虚にならなければならない。現状に対処しなければならないし、それについて話す必要もある。選手も、コーチも、組織の人々も、みな疑問を抱くだろう。聞いてほしい、正直に言うと、私はすべてに答えられない。だが、同時に、われわれは選手たちのためにここにいるということを彼らに知ってほしいと思っている。それが、私がこのスポーツをとても愛している理由だ」
ペダーソンHCはジャガーズのメンバー全員と話す前に、“彼らの状態や、チームの心の状態を測るために”火曜日に選手協議会と会議するところから始めたとGMFBに話している。
「ただ正直に思いを打ち明けた。心の中で思っていたことを共有したのだ。私は1年前に兄弟のことである経験をした。違いはあっても、選手たちが経験したような苦悩、いわば精神的苦痛を味わった。そして、月曜夜に両チームがそれを経験するところを見た。どうすれば私は自分たちのチームを助けられるのだろうか。われわれは心理学者や牧師、組織外の人々をも介して、選手たちが気持ちを話しやすくなるリソースを提供している」
ペダーソンHCは選手やスタッフ間のコミュニケーションの重要性を強調し、今回のような出来事に対する思いや自身の精神状態への影響に関する懸念を声に出すよう促した。
「私が昨日伝えたもう一つのメッセージは、いかなる感情も心に閉じ込めないでほしいということだ。何でも話してほしいと思っている。このような状況や、このような出来事は、それぞれの人に異なった形で衝撃を与えるから、彼らにはオープンでいてほしいと思っている。フットボールの準備をしているのだから、心にとどめてほしくはない。命に関すること、そして自分でコントロールできないことからフットボールの試合に気持ちを切り替えることや、メンバーの気持ちを再びそこに集中させること。その切り替えは一番難しいことだろう」
「うちのメンバーはそれに対処するという面で素晴らしい仕事をしてきたと思う。選手たちからは今回の出来事について、特に医療面での質問がいくつか寄せられた。しかし、全体的に見て、彼らは非常にうまく対応しているし、ハムリン一家をはじめとしてビルズやベンガルズの組織に対しても、ただただ大きな愛情を注いでいる」
【RA】