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NFLが提案する、スポーツにおける緊急事態への備え

2023年02月03日(金) 14:24

NFLロゴ【NFL】


現地1月31日(火)、NFLのチーフメディカルオフィサー(CMO/医務部長)のアレン・シルズ医師がNFLの各試合で実施されている緊急時行動計画や、他のプロスポーツリーグで実践されている緊急事態への対応方法、あらゆるレベルのスポーツチームや組織が生命を脅かす状況に対してとれる準備についての議論を主導した。

パネリストは異なるリーグの緊急行動計画の性質や、緊急事態に際してメディカルスタッフが選手に最高レベルのケアを提供できるような体制を保証する自分たちの任務について議論した。また、シーズンを通して準備が整った状態にするための戦術(試合前のミーティングや想定されるシナリオに対応するリハーサルなど)や、クラブのメディカルスタッフ、トレーニングスタッフ、コーチングスタッフ間のコミュニケーションと協力の重要性についても議論された。

シルズ医師のほか、参加したパネリストは以下の通りだ。

ダグラス・カサ医師(コリー・ストリンガー研究所CEO)
ジム・エリス医師(NFL緊急事態対応コンサルタント)
ゲイリー・グリーン医師(メジャーリーグベースボール/MLB医長)
デビッド・オルソン医師(ミネソタ・バイキングスチームドクター)
マーゴット・プトゥキアン医師(メジャーリーグサッカー/MLS CMO)
レジー・スコット(ロサンゼルス・ラムズスポーツ医学&パフォーマンス部門副社長)

以下、専門家の意見を厳選してご紹介する。

NFLの徹底した緊急対策のプロセスについて

ジム・エリス医師:「私たちはチームドクターや独立した医療関係者、オフィシャル、チーム運営担当者など、多くの人が参加する非常に具体的な会議を行っている。試合前に責任内容を確認した上で緊急時行動計画を再確認し、万が一、心停止が起こった場合に誰がその処置を主導するのかを決めている。そうすることで、いかなる緊急事態においても、それが非常に混沌とした状況になったとしても、組織は冷静さを保てるようになる」

レジー・スコット:「それには練習が必要だ。オフシーズンでは通常、可能な限り現実的な状況を想定することから始める。SoFiスタジアムに行き、できる限り現実的な最悪のシナリオを想定し、準備する。毎年のように私たちは新しいことを学んでいる。これは私たちがシーズンに向けて成功し、準備するための重要な要素だ」

他リーグの緊急対策への取り組み方について

マーゴット・プトゥキアン医師:「MLSと選手会、そしてすべてのメディカルスタッフが協力して緊急事態に備えており、それは多くの点でNFLの場合ととてもよく似ている。各クラブはすべての会場における緊急対応計画を提出することが義務付けられており、プレシーズンが始まる前にリーグに提出し、審査を受けることになっている。また、シーズン前にメディカルスタッフ全員で緊急時対応計画の見直しと実践を行い、すべての関係者と共有することが義務付けられており、私たちは各試合の前に緊急時対応計画を見直している」

ゲイリー・グリーン医師:「私たちは少し異なる課題を抱えている。メジャーリーグでは1シーズンに162試合を実施し、そこではおそらく約75万球が投げられるが、緊急時行動計画を発動しなければならないのはシーズン中に0回から3回程度だ。たとえ投球数の0.001%であっても、100%準備しておかなければならない。おそらくそれが私たちにとって最大の課題だ。緊急事態が発生した場合、医療で言う症例検討会と同じように批判的な反応の見直しが非常に重要になってくる。実際に行われたことを批判するのではなく、そこから皆が学べるようにするために見直していく」

スポーツのあらゆるレベルでケアを提供するアスレチックトレーナーの重要な役割について

ダグラス・カサ医師:「高校では、600名から700名のアスリート、すべてのコーチ、地域社会との交流、救急隊員、保護者やアスリートのために、免許を持った医療専門家が物事を仕切るようにする必要がある。私たちはその中心人物が必要なのだ」

デビッド・オルソン医師:「アスレチックトレーナーは、すぐそばですべてのことに気を配っている。彼らはサイドラインに必要な人たちだ。私たちのためにこれらの(緊急時行動計画を)書いてくれる人たちであり、私たちはそれをすぐに見直す。NFLの試合では、最初にフィールドに出るのはアスレチックトレーナーだ。何か問題があれば、彼らが先頭に立つ。コミュニケーションをとり、人々を巻き込んでいくのは彼らなのだ」

緊急事態に備え、アスリートの安全を確保するために他レベルのスポーツが準備できることについて

レジー・スコット:「アスレチックトレーナーへのアクセスや即時対応が非常に重要であるにもかかわらず、アスレチックトレーナーがいない高校は全体の約3分の1にのぼる。3分の1。これは大きな割合だ。提供できるリソースは多くあるが、最も重要なのは、こうした状況に対応できる適切な資格を持った人たちがいることだ。生存率を最も高める要素のひとつは、初期対応だ」

ダグラス・カサ医師:「今、このプログラムに参加している人たち全員が、それぞれの地域レベルで参加することが可能だ。影響力のある医師やアスレチックトレーナー、校長、アスレチックディレクター、指導者など、これに参加している人たちが、これらの変更を提唱する必要がある。また、州レベルのスポーツ医学諮問委員会に参加して、これらの変更を推し進める必要がある」

【RA】