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下馬評を覆す“仕事をこなした”チーフスのオフェンシブライン陣

2023年02月14日(火) 12:42


カンザスシティ・チーフスのパトリック・マホームズ【AP Photo/Charlie Riedel】

カンザスシティ・チーフスのオフェンシブライン(OL)は、フィラデルフィア・イーグルスのディフェンシブライン(DL)がNFLで最高だということを今週ずっと聞かされていた。どのようにしてサック数でリーグをけん引したのかということや、どのようにしてイーグルスが、同じシーズンでサック10回以上を記録した選手が4人いるNFL史上最初のチームになったのか、またイーグルスの前線がどうやってチーフスを圧倒してくるか、といった話だ。

チーフスのOL陣は、2年前のスーパーボウルでタンパベイ・バッカニアーズと対峙したとき、自分たちが直接的な原因となってバッカニアーズのプレッシャーを許し、パトリック・マホームズにキャリア最低のパフォーマンスをさせてしまったという話も耳にしていた。

彼らはそれらの話を聞き、吸収した。そして現地12日(日)に、OL陣はそれらの問題に対処したのだ。すべての問題に対処した。

目的と情熱を持ってプレーし、オフェンシブラインはチーフスの後半の4回のポゼッションをタッチダウン、タッチダウン、タッチダウン、フィールドゴールと成功させた際に大きな責任を持っていた。特に最後のポイントは、残り8秒でチーフスに38対35の勝利と4シーズンで2回目となる王者の称号を与えるものだった。

オフェンシブラインの選手たちにとって、日曜日はビジネスとしての問題ではなかった。個人的な問題でもあったのだ。

センター(C)のクリード・ハンフリーは「フロントにとっては素晴らしいシーズンだった。Oラインは今シーズン、本当に圧倒的だった。この1週間は、自分たちにふさわしい敬意を払われていなかったような気がして、今夜はそれを証明したかったんだ。俺たちはその目標を追いかけて、それは楽しいことだったよ」と話した。

マホームズにプレッシャーがかからない限り、普段はあまり注目されない選手たちを紹介しよう。左から順に、オーランド・ブラウン、ジョー・トゥニー、ハンフリー、トレイ・スミス、アンドリュー・ワイリーだ。

彼らが5本の指のような存在だとすれば、それらが集まって、力強い拳となるのだ。

イーグルスのディフェンシブラインについて、ワイリーは「もう聞きたくないね。Oラインは、この試合に勝つのは俺たちの責任だとわかっていた。そして、後半に出てきて、自分たちの手で、そのとおりのことをやってのけた。俺たちはとんでもない攻撃計画を立てていて、チームがそれを加速させて、計画がうまくいったんだ」とコメントした。

その計画とはランゲームに重点を置き、マホームズからプレッシャーを取り除こうというものだった。ハーフタイム直前にハイアンクルスプレインを悪化させたマホームズは一瞬、復帰できるかどうかが不安に思われた。後ろからタックルされ、アシスタントコーチの肩に頭を載せたままサイドラインに跳ねながら移動するという苦痛の中でも、クオーターバック(QB)は4つのクオーターでフィールドに残り続けた。

控えQBのチャド・ヘニーはウォーミングアップを始めたが、試合に出ることはなく、チーフスの攻撃はハーフタイム前にフィールドに戻ることはなかった。ハーフタイムのロッカールームでは、オフェンシブラインの間でも何も言う必要がなかった。

「こういうケガをした仲間を見たら、最初に頭に浮かぶのは、“もう誰も彼に触れさせない”ということだ」とハンフリーは語った。

ボールをランで運ぶということが、マホームズを守るもっとも明らかな方法だった。その点でチームは彼らに使命を与えた。わずかラン7回、39 ヤードだった前半の後、決定的なフィールドゴールを演出したマホームズによる26ヤードのスクランブルを含み、後半ではキャリー19回で119ヤードを記録した。チーフスがラッシュでファーストダウンを更新したのは前半わずか1回だったが、後半は6回のファーストダウンをラッシュで更新した。

ワイリーは「俺たちはとにかくボールを運んだんだ。真ん中のハンフリーから始まり、Oラインは仕事をこなした」と話している。

同様に重要なこととして、このユニットがポケットをほぼクリーンに保つことができたことが言える。イーグルスのパスラッシュはシーズンを通して非常に強力だったが、今回の試合では2022年シーズン2回目となるサック0回に終わった。後半はラッシュの影響をほとんど受けず、マホームズは最後の2クオーターでパス14回中13回成功、98ヤード、タッチダウン2回を記録した。彼のパス失敗はエンドゾーンで意図的に投じた一回のみだった。

スミスは「背番号15が動いているのを見ると、常にゲームに勝つチャンスがあるとわかるんだ。そして、彼が足を引きずっているのを見て、彼を守らなければいけないと思った。彼が俺たちを必要としていることもわかっていた。俺たちはその声に応えたんだ。相手が非常に才能のあるディフェンシブラインだとは今週ずっと聞いていたし、彼らは素晴らしい選手たちだ。俺たちは完璧ではなかったが、戦い続け、やり遂げたんだ」とコメントした。

選手とコーチがロッカールームに向かう途中、オーナーのクラーク・ハントは抱き合ったり、握手したり、背中をたたいたりしていた。今回の優勝と3年前の優勝を比較するように質問された彼は、2シーズン前にタンパで行われたチーフスのスーパーボウルでの敗戦を語らずに、比較を行うことはできなかった。

「最初の優勝は、スーパーボウルに戻るための50年の旅路の終わりにあったから、それは常にいくつかの光の中で特別なものだった。しかし、今回は2年前の敗戦が大きいから、特別なものになるだろう。そして、昨年のAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)チャンピオンシップ・ゲームでの失望感もね」

マホームズが3回サックされ、9回ヒットされ、4回タックルされて1回ロスし、2回インターセプトされたあのバッカニアーズ戦。当然のことながら、マホームズのプレーオフ人生で唯一エンドゾーンに到達できなかった試合の後、ゼネラルマネジャー(GM)のブレット・ヴィーチはユニットの再建に取り掛かった。

2021年オフシーズン、彼はトゥニーと5年8,000万ドル(約105億6,624万円)のフリーエージェント(FA)契約を結び、ボルティモア・レイブンズとのトレードでブラウンを獲得し、ハンフリー(2巡目)とスミス(6巡目)をドラフト指名した。彼らはそれぞれ、自分に何が求められているのかを本質的に理解していた。マホームズに前を向かせ、ポケットをクリーンにしておくことだ。

ハンフリーは「それが俺たちをチームに引き入れた理由だ。彼らは俺たちにマホームズを守るように求めた。それが俺たちの仕事だ」と語った。

ハントは「ブレット・ヴィーチはここ数年でオフェンシブラインを立て直すために素晴らしい仕事をやってのけたよ。彼らは一緒にプレーする機会を得て、さらに成長し続けている。イーグルスのディフェンシブラインは明らかにチームの強みの1つだが、後半に入り、われわれのオフェンシブラインはステップアップしてきた。後半にはボールを動かし、パトリックに時間を与えることができた」と話している。

彼らはフィールド上に残って攻撃を継続するのに苦労した。前半の4回のポゼッションは攻撃権継続6回、7回、3回、5回で終わったが、後半は10回、9回、3回、12回と継続することができた。彼らにとってうまくいった一つのプレーとして、ラインに隙間が生まれイーグルスがマホームズにプレッシャーをかけたものの、QBがその隙間を縫い負傷した足首で26ヤード前に進み、決定的な得点の機会を演出したものがある。

ハントは「そのプレーを上から見ていたが、彼は少し姿を消し、その後再び現れたから、私はボールを持って走っているのは誰だろうという感じだった。もちろん、ボールを運んでいたのはスーパーマンだった」とコメントした。

この夜は、スーパーマンよりもバットマンの方がしっくりくる呼び方かもしれない。なぜなら、5人の勇敢なロビンに助けられたと言えるからだ。実際、彼らをそう呼ぶのは、イーグルスのディフェンシブラインが彼らを圧倒するだろうと話していた人たちと同じくらい失礼なことだが。

彼らの名前はオーランド・ブラウン、ジョー・トゥニー、クリード・ハンフリー、トレイ・スミス、アンドリュー・ワイリーだ。そしてこの夜、彼らは彼らのスタークオーターバックまたは相手の強力なディフェンシブラインにも後れを取らないということを示した。

【AK】