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決勝フィールドゴールで序盤の失敗を挽回したチーフスKバッカー

2023年02月14日(火) 13:41


カンザスシティ・チーフスのハリソン・バッカー【AP Photo/Charlie Riedel】

カンザスシティ・チーフスの選手の中でハイアンクルスプレインを乗り越えてスーパーボウル終盤にヒーローとなったのはクオーターバック(QB)パトリック・マホームズだけではない。彼らのキッカー(K)もそうだった。

ハリソン・バッカーが試合終了まで残り8秒の場面で決めた27ヤードのフィールドゴールは、チーフスがフィラデルフィア・イーグルスに勝利する決勝点となっている。これまでと比べると厳しいレギュラーシーズンを過ごし、今回の試合でも1回目のフィールドゴールを外していたバッカーにとっては最高の結末となった。

「スーパーボウルに出場して、勝利を確定させるキックを決めることは、キッカーとしての夢だった。最高の気分だし、チーフスの組織と一緒にいられてとても幸せだ」とバッカーは話している。

もちろん、バッカーはマホームズと同じようにAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)チャンピオンシップゲームでハイアンクルスプレインに見舞われたわけではない。バッカーはシーズン第1週に勝利したアリゾナ・カーディナルス戦で負傷し、その後の4試合を欠場していた。

バッカーは復帰初戦のバッファロー・ビルズ戦で62ヤードのフィールドゴールに成功。しかし、ケガから復帰した後のレギュラーシーズンでは調子が上がらずに37回のエクストラポイントのうち3回を外し、23回のフィールドゴールのうち6回を外していた。

負傷したのはボールを蹴らない方の(左)足だったが、だからと言って重要度が下がるわけではない。右足で蹴るキッカーは左足で体重を支えるため、そこに痛みがあればバランスやタイミング、パワーが乱れることになるのだ。

チーフスのヘッドコーチ(HC)アンディ・リードは「彼が問題を抱えていた唯一の原因は、ハイアンクルスプレインだった。特に前に出す足は、キッカーにとってはつらいものだ」と述べている。「だから、それを乗り越えることだけが問題だった。ケガしたときから残りのシーズンはその微調整に追われることになる」

ポストシーズンにおける他の2試合においては、ジャクソンビル・ジャガーズ戦で50ヤードの2本、シンシナティ・ベンガルズ戦で3本中3本を決めるという完ぺきな成績を残していたバッカー。スーパーボウルの第1クオーターではチーフスに10対7のリードを与えるチャンスを得ていたが、42ヤードの試みは左にそれてアップライトにぶつかり、失敗に終わっている。イーグルスは次の攻撃時に得点を決めて、14対7とリードを広げた。

マホームズが第2クオーター後半に悪化した足首のケガに対処していた中で、チーフスが前半を10点ビハインドで折り返したとき、バッカーは自分が犯したミスの重大さを理解していた。チーフスが巻き返しを図り始めたときも、チャンスを逃したことは依然として尾を引いており、バッカーはサイドラインで3クオーター以上、自分の犯したミスについて考えていた。

「次のキックに集中しなきゃいけないし、そうしていた」と振り返ったバッカーはこう続けている。「スコアボードを見ると“ああ、あのフィールドゴールを決めていたらもう3点あったはずなのに”と思ってしまう」

「でも、それは次のキックを決める助けになるか? たぶん、ならないだろうね。そんなことは忘れて、ただプロセスと次のチャンスに集中しなきゃいけないものさ」

チーフスも“長年のキッカーを信頼できるのか?”という疑問を踏まえて戦略を練る必要があった。最終的にリードHCは試合の最終ドライブでバッカーを信じることにしている。結局のところバッカーは、今季以前はレギュラーシーズンで90%以上のフィールドゴール成功率を誇る選手であり、今回のミスもこれまでに出場したポストシーズンゲームでの25回のアテンプトの中で4回目のミスに過ぎなかった。

35対35の状況下で、マホームズはチーフスのオフェンスをリードして勝利に貢献。イーグルスのコーナーバック(CB)ジェームズ・ブラッドベリーがディフェンシブホールディングを取られ、チーフスのランニングバック(RB)ジェリック・マッキノンがイーグルスの1ヤードラインで膝をついたことで、チーフスはほぼすべての時間を使い果たすことができた。このとき、リードHCのキッカーに対する信頼が強かったことは明らかだった。

バッカーはリードHCの信頼に応える形で見事なキックを決め、チーフスが勝利を手に入れるのに貢献している。

「それが今起こったと思うと、クレイジーだな」とバッカーはコメントしている。「サヨナラ勝ちって言うのかな? 時間がまだ残っている場合に、それを何て呼ぶのかは分からない。最高の気分だ」

「素晴らしいリーダー、そして俺たちをこの勝利に導いてくれたパトリックがいるチーフスという組織にいることが今はとても幸せだ」

バッカーは今、マホームズと同じように足首を休ませられるようになった。また、ここまでの道のりにはこの瞬間にたどり着くための苦しみや葛藤を乗り越える価値があったと実感しながら、オフシーズンを過ごすことができるだろう。

【RA】