NFL経営陣の多様性は過去最高になるも、ヘッドコーチではいまだ不足
2023年03月30日(木) 16:09ヘッドコーチに多様性が不足していることへの批判や訴訟を受ける中、NFLはリーグ全体の多様性を高めるために、オーナーたちが集った会議で新たな一歩を踏み出した。
各チームには今後、多様性、平等性および内包性(DEI)を担当する責任者をチーム内に置くことが義務付けられる。現在、15のチームがDEI責任者を置いており、他に2チームが他の部門とDEIを兼任する担当者を擁している。
NFLの役員であるジョナサン・ビーンは『The Associated Press(AP通信)』とのインタビューで「彼らは実際に職務記述書に記載される特定の役職と成果物を設けなければならないので、これは大きなことだ」と話した。
「それが非常に重要な理由は、オーナーシップと共にこれをチームのシステム全体を通じたプライオリティーとすべく、各チームでフットボール運営、コーチング、ビジネス運営など、組織全体を通して推進していくために、責任を担う特定のポイントを設定する必要があることだ」
リーグはフロントオフィスの雇用における多様性については一つの基準点に達したものの、2022年に黒人選手が56.4%を占めたスポーツにおいて黒人のヘッドコーチ(HC)が3人しかいないという点は批判の対象となっていた。
現在、NFLには黒人5名ならびに女性3名を含むマイノリティーのチーム社長が7名存在し、ジェネラルマネジャーについては8名の黒人を含む9名のマイノリティーがいる。
しかし、マイノリティーのヘッドコーチに関しては、全体で6名しかいない。黒人ヘッドコーチはマイク・トムリン(ピッツバーグ・スティーラーズ)、トッド・ボウルズ(タンパベイ・バッカニアーズ)、デミコ・ライアンズ(ヒューストン・テキサンズ)の3名だ。
『Revelio Labs(レベリオ・ラブス)』のNFLレポートを執筆したデバン・ローリングスは「役員の多様性が高まったことが、サイドラインの多様性向上に繋がる可能性があるものの、この面での前進は数年にわたって停滞している」と記している。
「NFLには選手の多様性とコーチングスタッフのそれとの間に大きな隔たり――メジャーな男性スポーツで最大の――があり、コーチ職が求める才能に見合う可能性のある元選手には多様性が備わっているにもかかわらず、それは変わっていない」
元マイアミ・ドルフィンズHCのブライアン・フローレスは昨年にリーグと3チームを訴え、特に黒人コーチの雇用ならびに昇格においてNFLには“人種差別がまん延している”と述べた。昨シーズンにスティーラーズのアシスタントを務めたフローレスは、ミネソタ・バイキングスの守備コーディネーター(DC)に就任している。
NFLの多様性および内包性担当副社長のビーンは「ヘッドコーチの多様性、特に黒人のヘッドコーチの人数は、確かにわれわれの期待を下回っていると認めるものであり、そういった状況は誰も望んでいないし、そうあるべきだとも思っていない」と話した。
「ヘッドコーチの中にそれを代表する人物をおくために、われわれには本当に多くの才能ある人々がいる。しかしながら、私は他のCEOのようなポジションを見ることが非常に重要だと考えており、それらのポジションが成功か失敗かを分けると思っている」
マイノリティーの社長やGMは、NFLの歴史上で最も多くなっている。現ワシントン・コマンダースが2020年にジェイソン・ライトを起用するまで、リーグには黒人の社長がいなかった。それから2年でケビン・ウォーレン(シカゴ・ベアーズ)、サシ・ブラウン(ボルティモア・レイブンズ)、サンドラ・ダグラス・モーガン(ラスベガス・レイダース)、ダマニ・リーチ(デンバー・ブロンコス)が加わっている。
わずか4年前には、マイアミ・ドルフィンズのクリス・グリアがリーグで唯一の黒人GMだった。今はクゥエシ・アドフォ・メンサ(ミネソタ・バイキングス)、ライアン・ポールズ(シカゴ・ベアーズ)、アンドリュー・ベリー(クリーブランド・ブラウンズ)、マーティン・メイヒュー(ワシントン・コマンダース)、ブラッド・ホームズ(デトロイト・ライオンズ)、テリー・フォーネット(アトランタ・ファルコンズ)、ラン・カーソン(テネシー・タイタンズ)がそれに続いている。
「われわれは、自分たちがもっとやれると分かっている」と言うビーンは次のように話した。
「こういった役割はきわめて重要だ。他の役割よりも重要でなはい役割などない。ヘッドコーチは不可欠だが、GMも同じくらい重要になる。社長も同じくらい大事だ。彼ら全員がオーガナイゼーションの成功を推進するのであって、成功するためにはこれら3つがすべて栄えていなければならない。だからこそ、何であれわれわれが前進させようと思うものを見るときには、組織のすべての役職を確認し、特に上級の役職についてそうしなければならない。したがって、ヘッドコーチだけではないのだ。他のすべての役割も重要であり、それらがチームの成功や失敗を決定づける」
NFLコミッショナーのロジャー・グッデルも、改善の余地があることに同意している。
グッデルは先月に「われわれは今後もより優れた仕事や、もっと多くの仕事が自分たちを待っていると感じている」とコメントしていた。
「前進しており、そういった進歩が見られるのはうれしいことだが、決して十分ではない。われわれは常に、“どうやったらもっとよくなれるか?”といったことを問い続けていく」
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