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2023年シーズン中にQB専用ヘルメットが導入可能に

2023年04月14日(金) 12:57


ヴィンス・ロンバルディ・トロフィーとカンザスシティ・チーフス、フィラデルフィア・イーグルスのヘルメット【Ryan Kang via AP】

NFLの選手たちは今シーズンから、クオーターバック(QB)の頭部が地面にぶつかったときの保護性能を高めるために特別に設計された新しいヘルメットを使用できるようになる。

VICIS社製の新ヘルメットは初めてクオーターバック専用として設計されたもので、2022年シーズンの終了からわずか数カ月で誕生している。2022年シーズンには、脳しんとうと診断された件数がリーグ全体で18%増加しており、その多くはクオーターバックの脳しんとうが急増したことに起因していた。

リーグは各チームに送付した覚書で、Zero2 Matrix QBヘルメットにはクオーターバックが脳しんとうで受ける衝撃をシミュレーションした臨床試験がすでに実施されたと明かしている。

NFLによると、クオーターバックが試合中に起こす脳しんとうの約半数はヘルメットが地面にぶつかったときの衝撃によるものだという。また、臨床試験を担当しているBiocore社の機械工学士であるアン・ベイリー・グッドによれば、昨シーズンにクオーターバックから最も人気があったヘルメットと比較して、新しいクオーターバックヘルメットは衝撃の深刻度を7%軽減するとのこと。

コミュニケーション・広報および政策担当副社長のジェフ・ミラーは「クオーターバックと彼らの脳しんとうを特徴づけているのは、脳しんとうの原因となる地面にぶつかったときに頭部に受ける衝撃の数が不相応なことだ」と述べている。「この1年、クオーターバックの脳しんとう件数が増加したが、これも同じようにヘルメットが地面にぶつかったときの衝撃が原因だった。多くの人々はクオーターバックがスクランブルする頻度が高くなったことが原因だと言うかもしれないが、私たちはそのようには見ていない。まだポケットにいるクオーターバックがヒットされ、ボールを持っている状態で頭部を地面に打ちつけているのだ」

NFLとNFLPA(NFL選手会)は毎年ポスターを作成し、臨床試験で判明した性能に基づいてヘルメットの順位を示すとともに、使用を推奨しないヘルメットや使用を禁止するヘルメットを掲載している。今回のクオーターバックヘルメットは先日発表されたポスターで、同じくVICIS社製で特にオフェンシブラインマン(OL)およびディフェンシブラインマン(DL)向けに設計された2つのヘルメットに次いで3位に位置付けられた。これらのヘルメットは、通常、額やヘルメット前面により多くの衝撃を受けるラインマンが吸収する衝撃に対して、どのように反応するかがテストされている。NFLは2022年(導入初年度)にラインマン専用ヘルメットを着用した選手がほんの一握りだったと明かしており、使用者が少なかった理由として、新製品に慣れていないことや、VICISがまだ比較的新しいヘルメットメーカーであることを挙げた。チームの装具マネジャーとのミーティングは毎年実施されており、そこでは新しいヘルメットについての教育が行われている――そして、装具マネジャーが選手にアドバイスすることができるようになっている。

クオーターバック専用ヘルメットは数年前から開発が進められてきた。VICISの製品開発担当副社長であるジェイソン・ノイバウアーによると、2020年からヘルメットメーカーとの間で、衝撃を受ける場所やその頻度に関するデータの共有が始まり、VICISは2022年の大半をヘルメットの開発に費やしたという。

外から見ると、クオーターバックヘルメットは何の変化もないように見えるが、内側は工学的な柱構造となっている。小さな柱は直径1.5mm程度かもしれないが、その直径や使用する数、素材の剛性を変えることで、エンジニアはヘルメットの装着時の重さを変えずに、ぶつかった場所の衝撃吸収方法を変更することができた。VICISの社内テストでは、ヘルメットが地面にぶつかったときの衝撃を緩和するように設計された自社製の標準ヘルメットと比較して、クオーターバックヘルメットは衝撃緩和率が20%以上向上したことが判明したとノイバウアーは話している。

次に待ち受けている問題は、クオーターバックがこの新しいヘルメットを試すかどうかだ。選手たちが慣れ親しんだ装備からの移行に消極的であることはすでに分かっており、だからこそNFLとNFLPAは禁止リストに掲載されたヘルメットからの切り替えに1シーズンの猶予を与えている。ヘルメット着用時の視界を懸念していることから、とりわけクオーターバックは変更に時間がかかるのだ。

近年、特にNFLとNFLPAがヘルメットのテストとランクづけを開始してから、ヘルメットの技術革新は急速に進んでいる。今年、新たに禁止リストに置かれた7つのヘルメット――つまり、新人選手や2022年シーズンに着用していなかった選手からは使われず、2024年シーズンには誰からも着用されなくなる可能性があるもの――は、いずれも性能の良いヘルメットとしてリストアップされ、つい3年前までは許可されていたものだった。

グッドは「それはNFLの環境を中心に設計されたヘルメットが旧モデルを取り込んで、そのモデルをNFLの環境でよりよく機能させる方法を発見したことを物語っている。そうなると、旧モデルは段階的に使われなくなる。性能が違うというわけではなく、他のヘルメットの方がはるかに高性能なため、選手たちが旧型のヘルメットを必要としなくなるのだ」と述べている。

次のポジション専用ヘルメットは、ワイドレシーバー(WR)とディフェンシブバック(DB)のために作られる可能性が高い。2024年には、彼らが受ける衝撃――頻度は低いが、高速で受けることが多い――をシミュレーションして行う特定の臨床試験が可能になると予想されている。

【RA】