ニュース

スーパーボウルを重視して“最高額の報酬を得る”よりも“多くの優秀な選手を確保”することを優先するチーフスQBマホームズ

2023年05月25日(木) 13:02


カンザスシティ・チーフスのパトリック・マホームズ【AP Photo/Jeff Roberson】

スーパーボウルMVPに2度輝いたスーパースターのクオーターバック(QB)であるパトリック・マホームズは、NFLの中でも稀有な存在だ。

その能力が一流である限り、マホームズは最高レベルの報酬を手に入れるだろう。現在の年俸はリーグのトップ5に入っていないものの、マホームズは自分の収入を最大化するためだけにチーフスを窮地に陥れようとはしていないようだ。マホームズはチーフスの競争力を維持することを目指しており、それはチームがサラリーキャップの柔軟性を保つために彼の契約を構成するのを認めることを意味している。

しかし、マホームズの報酬額から影響を受けるのはマホームズ本人だけではない。最高峰のクオーターバックであり、リーグの顔でもあるマホームズの年俸は、他のQBたちにとっても重要だ。彼らに配慮したアプローチをとるならば、マホームズは自分だけではなく、全クオーターバックの市場価値の上限を引き上げ続けるために、次の契約で最大の金額を要求することになるだろう。

とはいえ、マホームズはお金で動いているわけではない。

現地24日(水)、NFLで最も高給取りのクオーターバックになる必要があると感じているかと質問されたマホームズは「そんなわけない」と答えている。「それよりも、他のクオーターバックの契約が切れるときに彼らを苦しめないようにしたいだけ。バーは押し上げ続けたい。それは一番高い報酬を得る選手になるためじゃないし、大金を稼ぐためでもない。俺はもう残りの人生も安泰だと言えるほどお金を稼いだ」

「それと同時に、スーパーボウルで勝ち、そうした試合で戦うことができるように、それなりにお金を稼ぎつつも、自分の周りに優秀な選手をたくさん確保しておけるラインを見つけなきゃいけない」

これまで、チームのキャップ管理に関して見事な手腕を発揮してきたチーフスのジェネラルマネジャー(GM)ブレット・ヴィーチは、必要な犠牲(例えば、オフェンシブタックル/OTオーランド・ブラウンのシンシナティ・ベンガルズへの移籍)を払うことで、他のニーズに対応するための十分なキャップスペースを確保している。クオーターバックより平均年収が高いポジションはない上に、チーフスがタイトルを争うためにはマホームズの存在が不可欠であることを踏まえると、彼がロースターにいる限り、その役割は重要であり続けるだろう。

マホームズはこれをよく理解している。彼は長い間、いくつかの肥大化した契約がチームの全体的な強さにどのような影響を及ぼすかを見てきたからだ。マホームズは自分が年間であと数百万ドルを稼ぐためだけにNFLチームのエリート層から脱落することには興味がないが、キャップのバランスをとることに関する課題も理解している。

主力選手に報酬を払いながら競争力を維持するのは難しいかと質問されたマホームズは「ああ、そうだな」と答え、こう続けた。「それはすべての選手にとって同じだと思う。このオフシーズンに報酬を得た選手たちは適切な場所を見つけようとしているんだと思う。誰もが大金を手に入れたいものだろ。自分の技術が最高だと思っていたら、それに見合った報酬を得たいと思うものだ。だけど、それと同時に、リーグの偉大な選手を見てみると、彼らは高額の報酬を得られる一方で、優秀な選手をたくさん周りに確保しておけるような適切な場所を見つけている」

チーフスはマホームズの在籍期間に紆余曲折を経てきた。昨年はマホームズのトップターゲットだったワイドレシーバー(WR)タイリーク・ヒルをマイアミ・ドルフィンズにトレードするという厳しい判断を下している。ドルフィンズに移ったヒルはすぐにNFLの全レシーバーの中で最高額となる年俸3,000万ドル(約41億8,920万円)の契約を手に入れた。

ヴィーチGMにとって、そのような取引は足かせとなる。ヴィーチGMは感情で判断するのではなく、ヒルをトレードし、そこで確保したキャップを別のところに使うという賢明なビジネス上の判断を下した。その結果として、チーフスは4シーズンで2度目のスーパーボウル制覇を成し遂げている。

こうしたアプローチでは主力選手の退団は避けられない。今年はブラウンとディフェンシブエンド(DE)フランク・クラークがチームを離れたが、ヴィーチGMはそれに応じた準備をしており、クラークの後任候補としてDEジョージ・カーラフティスを昨年のドラフトで指名していた。また、ブラウンの穴を埋めるためにOTジャワーン・テイラーとも契約している。

そのような仕事を成功させるには2人が必要だ。マホームズがヴィーチGMと協力して仕事をしていることは称賛に値する上に、マホームズの契約期間はあと10年ほど残っている(2031年シーズン終了後に契約満了)。とはいえ、それはヴィーチGMが将来的にマホームズの契約を再編しないということを意味しているわけではない。ボルティモア・レイブンズのQBラマー・ジャクソンが今オフシーズンに年俸5,200万ドル(約72億6,112万円)の契約を結び、市場をリセットしたことを踏まえるとなおさらだ。現時点でそれを期待してもいいはずであり、問題は契約再編が行われる時期だけだろう。

しかしながら、それは喫緊の課題ではない。年平均額(4,500万ドル/約62億8,367万円)で7位につけているマホームズのキャップナンバーは2027年まで5,000万ドル(約69億8,185万円)を超えない。チーフスは最も重要な選手を比較的手頃な契約で確保している。その契約は将来、サラリーキャップが上昇するにつれて、より望ましいものになるだろう。

マホームズが功績に見合った報酬を得ていないとチーフスが認める時はいずれ来るはずだ。チーフスのクラーク・ハントCEOは今月、すでにそれをほぼ認めている。その一方で、マホームズとヴィーチGMがより多くのスーパーボウル制覇を狙うという同じ目標を掲げている限り、それは差し迫った問題にはならない。

【RA】