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「俺は本当に幸運だ」とタッチダウン3回でジェッツに勝利し、プレーオフ進出を決めたブラウンズQBフラッコ

2023年12月29日(金) 21:42


クリーブランド・ブラウンズのジョー・フラッコ【AP Photo/Sue Ogrocki】

ジョー・フラッコの復帰ツアーはまだ続く。

プレーオフ進出の可能性を秘めたサーズデーナイトゲームで38歳のクオーターバック(QB)はスタートから灼熱の炎でリーグ2位のパスディフェンスを焼き尽くし、29回中19回のパスを成功させて309ヤード、タッチダウン3回とインターセプト1回を記録。これによってブラウンズは37対20でニューヨーク・ジェッツに勝利を収め、3年ぶりとなるポストシーズン出場を決めた。

「ああ、とにかくゲーム序盤からスクリメージラインを動かし、ボールをどんどん先へと運ぶことができると感じた」とオフェンスのスタートについてフラッコは『NFL Network(NFLネットワーク)』のマイク・ガラフォロに話している。「早い段階からランゲームが好調だった。デイブ(デイビッド・ジョク)にボールがつながり、タックルをいくつかブレイクしてくれた。彼はそれがすごく得意なんだ。そのファーストドライブの勢いを前半ずっと維持して、それが俺たちを駆り立てた感じだ」

フラッコは11月にブラウンズに加わってからわずか5回目の先発でこれらをやってみせた。その良さのほとんどが前半に集約されていた。

それも、シーズン第16週のテキサンズ戦で1試合でのチーム記録となる265レシーブヤードを獲得したワイドレシーバー(WR)アマリ・クーパーがかかとを痛めてサーズデーゲームを欠場した中での出来事だ。

クーパーの代わりにフラッコは序盤にジョクを多用して進撃し、チームの最初の2回のポゼッションで成功させた5回中4回のパスをジョクにつなげて113ヤードを獲得した。

この連携が開始早々の2回のスコアリングドライブをさらに促進し、フラッコもパスの相手を広げていく。

第2クオーター終盤にWRエライジャ・ムーアが頭部のケガで退場してしまったが、それまでにフラッコはムーアに5回パスを成功させ、61ヤードを進んでブラウンズ4つ目のタッチダウンを決めていた。ランニングバック(RB)ジェローム・フォードにも2回得点の機会を与え、ブラウンズのタイトエンド陣をフル活用してハリス・ブライアント、ジョーダン・エイキンスに計3回のパスを通し、42ヤードを獲得している。

前半終了時にフラッコとブラウンズは34点を挙げて、すでにギャンググリーンのディフェンスが今季奪われた最多被ヤードに並んでいた。前半で296パスヤードというのは、この時点ですでにジェッツが2023年のフルゲームで許した最多ヤードだった。

トップ2ワイドアウトを失った最後の数ドライブは、大きくリードしていたこともあって一気にトーンダウンしたが、最終的な309パスヤードという記録によってジェッツディフェンスは2021年のシーズン第17週にトム・ブレイディに奪われた300被ヤードの記録を33試合ぶりに更新されている。

大きなマージンを与えてもらったディフェンスは、今年の常となっている底力を見せた。守りを固めたユニットはヤードこそ与えてしまったものの、第3クオーターのディフェンシブエンド(DE)シェルビー・ハリスのフィールドゴールブロックのような懸命なプレーによって後半の相手の得点を3点に抑えた。

「タフな後半だった」とオフェンスの失速についてフラッコは試合後の記者会見で話している。「ああいう立ち上がりだと、いつの間にかファンと同じになってしまい、とにかく早く時間がゼロになることを願ってしまう。俺たちのディフェンスを大いに褒めてやらないといけないね。ファーストドライブでジェッツがボールを動かしたのは知っているけど、最終的にフィールドゴールになり、そうなるとうちのフィールドゴールブロックチームに任せることになる。ディフェンスは後半に素晴らしい仕事をして、相手に何も与えず、俺たちの勝利を確かなものにしてくれた」

リーグ全体でクオーターバックの受難が続くシーズンにあって、11月中旬にブラウンズがワークアウトに参加させるまで、元スーパーボウルMVPのフラッコに声を掛けるチームは現れなかった。

フラッコが2020年から2022年にプレーしていたジェッツもその1つだ。彼らはアーロン・ロジャースのアキレス腱(けん)断裂によってNFLのパススコアで最下位、パスヤードで31位に沈み、QBのソリューションを是が非でも必要としていたはずだ。

そのジェッツはプレーオフ争い脱落後の3試合目でフラッコに敗北した。

一方でフラッコは11勝5敗のチームで、先発としての記録を4勝1敗としている。12月3日(日)から1,616ヤードを投げてタッチダウン13回をマークしており、『NFL Research(NFLリサーチ)』によると、新たなクラブでの最初の5試合全てで250パスヤード以上を挙げたNFL史上初の選手になるという。

「このチームにいられて俺は本当に幸運だ」と300パスヤード超えを4試合続けていることについてフラッコはガラフォロに話している。「ケガ人も多数いるのに、それでもすごく優秀なグループだ。ケビンは毎週とてつもないゲームコールをしているよ。クオーターバックはみんなにボールをつなげるだけだ。彼らが勝って、正しい位置を獲得することが何より重要。そういうことだよ」

この日のフラッコは完全無欠だったわけではない。後半の停滞もそうだが、第2クオーターではバックフィールドのラインバッカー(LB)ジャーメイン・ジョンソン二世越しにパスをしようとしてはじかれ、ピック6を喫している。

これはフラッコにとって5試合で9回目のターンオーバーを招いたミスだった。

1月にさらなる前進を目指すブラウンズとしてはその点に留意する必要がある。しかし今のところは、ビンテージ級のパフォーマンスの中のささいなミスに過ぎない。

晴れてプレーオフ進出を果たしたブラウンズにはまだAFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)北地区制覇の可能性が残されている。ライバルはこちらもフラッコの元所属チーム、ボルティモア・レイブンズだ。さらにはAFCの第1シードを獲得するチャンスもわずかながらある。

今シーズンのブラウンズディフェンスはずっとトップクラスだった。それでも、プレーオフの懸かった終盤戦に関してはフラッコに大いに感謝すべき点がある。誰も欲しがらなかった38歳のベテランは、今や誰もが対戦を嫌がる存在となった。

「最高の物語だよ」とヘッドコーチ(HC)ケビン・ステファンスキーも認めている。「こういう話はみんな大好きだろう。だが私はジョーのために喜んでいるんだ。彼がこうして成功したことがうれしい。フットボールチームの一員としてね。彼にはまだ力が残っているよ」

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