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ブロンコスがQBウィルソンに放出を通告

2024年03月05日(火) 10:22

デンバー・ブロンコスのラッセル・ウィルソン【AP Photo/Ed Zurga】

デンバー・ブロンコスでのラッセル・ウィルソン時代はわずか2シーズンで終わりを迎えた。

現地4日(月)、ブロンコスはベテランクオーターバック(QB)のウィルソンに対し、3月13日(水)に新リーグイヤーが始まった後に放出すると通告。
                     
ジェネラルマネジャー(GM)ジョージ・ペイトンとヘッドコーチ(HC)ショーン・ペイトンは、共同で発表した声明で次のように述べている。

「ブロンコスを代表して、私たちはラッセルのチームとコミュニティへの貢献と献身に感謝すると同時に、彼がキャリアを続けていく中で幸運をつかむことを祈っている」

「前へ進むにあたり、私たちは2024年シーズンとそれ以降に向けて可能な限り強力なチームを作ることに集中している。このオフシーズンに改善することを楽しみにしているし、私たちはドラフトやフリーエージェントを通じて、より良くなるための柔軟性を持つことになるだろう」

第一報を伝えたのは『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートだった。

ウィルソンは長い声明の中でデンバーの街に感謝を表明し、“次に何が起こるのか楽しみにしている”とつけ加えている。ウィルソンがブロンコスのジェネラルマネジャーやヘッドコーチについて何も言及しなかったのは注目すべき点だと言えよう。

ウィルソンは声明の中で「困難な時期はいつまでも続かないけど、屈強な人はいつまでも持ちこたえる」とつづった。

高給取りのシグナルコーラーと決別することで、ブロンコスは3,900万ドル(約58億6,693万円)を飲み込むことになる一方で、今月に有効になるはずだった2025年シーズンにおける3,700万ドル(約55億6,635万円)の保証金を支払うことを回避できる。それでも、ブロンコスはウィルソンを放出することで、今後2年間で総額8,500万ドル(約127億8,757万円)のデッドサラリーキャップを背負うことになり、これはNFL史上最大のデッドキャップヒットとなる。

つい先週、ウィルソンはポッドキャスト『I AM ATHLETE(アイ・アム・アスリート)』で将来もブロンコスでプレーしたいと語ったばかりだが、ウィルソンがブロンコスと決別する兆しは以前からあった。

2023年シーズンが残り2週間となった時点で、ブロンコスがプレーオフ争いから脱落したわけではなかったにもかかわらず、ウィルソンはジャレット・スティッドハムと交代してベンチに下げられている。その理由は明らかに金銭的なものだった。つまり、ウィルソンをベンチに下げて出場機会を減らし、致命的なケガをしないようにすれば、ブロンコスはウィルソンと決別する際に、前述した2025年シーズンにおける巨額の保証金を支払うことを回避して財政的な柔軟性を確保できるというわけだ。

先週の時点では、ペイトンHCはウィルソンと袂を分かつと公言していなかった。そして月曜日、ついにブロンコスの将来からウィルソンを排除し、絶望的な同盟から脱却する計画が実を結んでいる。

2022年オフシーズン、ウィルソンは超大型のトレードでシアトル・シーホークスからブロンコスに加入。ブロンコスはスーパーボウルチャンピオンに輝いたことのあるウィルソンの力を手に入れるべく、2つの1巡目指名権含む5つのドラフト指名権と、3人の選手をシーホークスに送った。そして、ウィルソンと5年2億4,260万ドル(約364億9,723万円)の契約を締結。ウィルソンはペイトンGMと、当時新たに就任したナサニエル・ハケットHCの下で、フランチャイズの顔として活躍するはずだった。

その結果は惨憺(さんたん)たるものだったと言えよう。ウィルソンはハケットの下でプロとして最悪のシーズンを過ごし、ハケットは就任1年目のシーズンを4勝11敗でスタートさせた後に解雇されている。ベテランのショーン・ペイトンが形勢を立て直すためにチームに加わったことで、ウィルソンはわずかながら改善を見せたものの、最終的にはベンチに下げられ、ついには退団が迫っている状況だ。

ウィルソンはブロンコスの司令塔として30試合に出場し、チームを11勝19敗に導く中でパス成功率63.3%、6,594パスヤード、タッチダウン42回、インターセプト19回を記録。ブロンコスはウィルソンを司令塔に据えた2022年以降で、試合平均18.9点(26位)、試合平均311.7ヤード(27位)と、攻撃面でリーグの中でも特にひどい成績を残している。

ウィルソンの退団が目前に迫る中、ブロンコスは当面、QBポジションでの通算先発数が合わせて5回のスティッドハムおよびベン・ディヌッチと共に前進していく。ブロンコスは2024年NFLドラフト全体12位指名権も保持しているため、これをQBの有力候補に使う可能性はあるだろう。

35歳のウィルソンはNFLでの13シーズン目を迎えようとしている。デンバーでは低迷していたものの、プロボウルに9回選出された経歴を持つウィルソンは、スーパーボウル時代でNFL屈指のパサーレーティング(100.0)を誇り、キャリア通算で4万パスヤード以上と5,000ランヤード以上を記録しているNFL史上唯一の選手だ。

最近の発言でも示されていたように、ウィルソンはまだプロとしてやり残したことがあると感じている。ただ、ウィルソンがそれをデンバーでやり遂げることはない。

【RA】