コラム

4強出そろう - ミネアポリスへの切符を手にするのは誰だ!?

2018年01月19日(金) 12:28

USバンク・スタジアム【Kirby Lee via AP】

第52回スーパーボウル特集 > カンファレンス見どころ

スーパーボウルへの出場権はいよいよ4チームに絞られた。昨季王者のペイトリオッツはディビジョナルプレーオフでタイタンズを下して7年連続のAFC決勝進出を決めた。対戦するのは第2シードのスティーラーズを破ったジャガーズだ。

一方のNFCは第1シードのイーグルスが第2シードのバイキングスを地元リンカーン・ファイナンシャル・フィールドに迎える順当な顔合わせとなった。イーグルスは2004年シーズン以来のスーパーボウル進出を狙う。バイキングスは史上初となるホームチームの出場を目指すカンファレンス決勝だ。


ジャガーズ(12勝6敗)@ペイトリオッツ(14勝3敗)


AFC決勝でこのカードが実現するのは1996年シーズン以来となる。ポストシーズンでは過去に4回対戦してペイトリオッツの3勝1敗。今年もペイトリオッツ有利は動かない。

ジャガーズの強みはディフェンスだ。積極的にブリッツを駆使してクオーターバック(QB)にプレッシャーを与える。今季55サック、21インターセプトはいずれもリーグ2位の好成績だ。またディフェンスによるタッチダウンは計7個でこちらはNFL最多である。AFC最多の14.5サックを記録したディフェンシブエンド(DE)カレイス・キャンベルの最大の使命はトム・ブレイディにレシーバーを探す時間を与えないことだ。

ファンブルフォースが多いのもジャガーズの特徴でDEヤニック・エンガクエは今季6回をマーク。ペイトリオッツのラン攻撃の柱であるランニングバック(RB)ディオン・ルイスから1回でもファンブルロストを奪えれば付け入る隙が生まれる。

レギュラーシーズン終盤からワイルドカードプレーオフにかけて不調だったオフェンスはスティーラーズ戦で爆発した。新人RBレナード・フォーネットは109ヤードラッシングで3タッチダウン。QBブレイク・ボートルスは214ヤードパッシングと並の成績だったが、第4クオーターの重要な場面でタッチダウンパスを決めるなど勝負強さを発揮した。今季が初めてのプレーオフだが、まだ被インターセプトがない。

ペイトリオッツはオフェンスが盤石だ。ブレイディはディビジョナルラウンドでタイタンズディフェンスの穴を巧みに突くパスを成功させ、パスラッシュにはルイスのランで対抗した。ルイスはスピードが昨年よりも増している印象で、オープンフィールドのランではラインバッカー(LB)を余裕を持ってかわしてゲインをする姿が見られる。ジャガーズの強力なフロント7を回避するランとしては有効だ。

シーズン序盤に苦戦したディフェンスは中盤以降に改善されて安定感がある。それでも時折ランでビッグゲインを許す傾向があり、サイズとパワーのあるフォーネットは要注意だ。

レギュラーシーズンの最終2試合に連敗してプレーオフに入ったジャガーズだが、ビルズに辛勝し、スティーラーズをアップセットした現在は勢いがある。その勢いを駆って序盤からたたみ掛けてリードする展開に持ち込めればアグレッシブなディフェンスとフォーネットのラン攻撃を最大限に生かすことができる。逆に、序盤に失点を許して、ボートルスのパスによるキャッチアップを強いられると厳しい。

ペイトリオッツは大きなミスを連発しない限り、10度目のスーパーボウル出場の可能性は高い。しかし、ディビジョナルプレーオフでのスティーラーズの例もある。相手を甘く見ていると手痛い目に遭うことになる。


バイキングス(14勝3敗)@イーグルス(14勝3敗)


両チームの通算成績はプレーオフを含めて13勝13敗のイーブンとはいえ、ポストシーズンではイーグルスの3勝だ。トップシードでありながらディビジョナルラウンドでは第6シードのファルコンズに3点差のアンダードッグだったイーグルスだが、終盤のゴールラインの攻防でファルコンズの攻撃を封じ込めるなどディフェンスの活躍が目立った。

これはシーズンを通しての特徴と言っていい。QBがカーソン・ウェンツであろうとニック・フォールズであろうと、オフェンスが不調の時はディフェンスやスペシャルチームが奮起して勝ち星を挙げてきた。チーム全体として底上げされているのが今季のイーグルスだ。

レギュラーシーズン最終2週間で不調だったフォールズはファルコンズ戦でタッチダウンパスこそなかったものの、パス成功率77パーセントで被インターセプトゼロの安定したパフォーマンスを見せた。目立ったのはランパスオプション(RPO)の活用だ。ウェンツに比べて機動力にかけるフォールズだが、ディフェンスの動きを見てパスを投げるか自らがボールを持ってオープンフィールドに走るかの判断を行うRPOで活路を見出した。

RPOはキーとなるディフェンダーの動きによってパスカランかを決めるため、言ってみれば“後出しじゃんけん”で、QBにアドバンテージがある。パスターゲットを絞って開いていれば投げ、カバーされていれば走るというシンプルな判断がフォールズに余裕を持たせたようだ。

バイキングスはこれ以上ないというほどの劇的な勝利を経て大一番に臨む。セインツに逆転された直後のドライブ、最後のプレーでQBケイス・キーナムからワイドレシーバー(WR)ステフォン・ディッグスへの61ヤードのタッチダウンパスが決まるドラマティックな幕切れ。長いプレーオフの歴史でも第4クオーター最後のプレーで“サヨナラ”決着したのは史上初だという。

バイキングスの最大のよりどころはリーグ1位のディフェンスだ。1試合平均15.8点(リーグ2位)しか許さず、その守備は鉄壁である。チーム最多の113タックルを誇るLBエリック・ケンドリックス、ランとパス守備の両方で貢献するセーフティ(S)ハリソン・スミス、キャリア最多13サックを記録したDEエバーソン・グリフィンなどスター選手が揃う。セインツ戦でコーナーバック(CB)ゼイビア・ローズが負傷したのは懸念される。

共にターンオーバーを奪う確率の高いディフェンスを擁するため、QBのミスは致命的だ。ロースコアな展開が予想されるが、ターンオーバーによって攻撃機会を奪われると点差が開く可能性もある。プレーオフでは点差を広げられないように試合をマネジメントすることが不可欠で、ターンオーバーは試合を左右する大きな要因となる。より堅実なフットボールをしたチームがNFCを制することになるだろう。

第52回スーパーボウル特集 > カンファレンス見どころ

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。