高い人気を維持しながらも懸念が続いた2017年NFLテレビ中継
2018年01月13日(土) 11:421月2日、調査会社『Nielsen(ニールセン)』が2017年1年間にアメリカで放送されたテレビ番組の視聴者数ランキング、トップ50を発表した。1位に輝いたのはペイトリオッツとファルコンズによって争われ、『Fox(フォックス)』が放送した第51回スーパーボウルで視聴者数は1億1,130万人、世帯視聴率は45.3%だった。視聴者数で見ると2位のディビジョナルプレーオフ、パッカーズ対カウボーイズの4,850万人の倍以上であり、スーパーボウルの人気がいかに突出したものであるかがわかる。
さらに50番組中、NFLの中継が実に37番組あり、割合で言えば74%を占めた。2016年にランクインしたNFL中継は27だったので32%増加したことになる。ただ2016年はアメリカでも人気だったリオ五輪があり、その中継が11番組もランクインした影響を考慮すべきだろう。実際、2015年は2017年と同じ37だった。
3位がAFCチャンピオンシップのスティーラーズ対ペイトリオッツ戦で、トップ3を独占していただけでなく、上位20位のうちNFL中継が13を占めている。NFL以外は4位がトランプ大統領一般教書演説、8位に第89回アカデミー賞、9位はトランプ大統領就任式、13位ワールドシリーズ第7戦、14位トランプ大統領アフガニスタン演説、18位第59回グラミー賞、20位カレッジフットボールチャンピオンシップだった。
一方、20位以内のNFL中継13番組では、やはりスーパーボウルとプレーオフが強く、11を占めている。しかしながら、21位につけたワイルカードラウンドのレイダース対テキサンズ戦の2,530万人を超える中継がレギュラーシーズンでも2つあったのだ。15位に入ったのが第15週のペイトリオッツ対スティーラーズ戦である。AFCのトップ争い、プレーオフ前哨戦と目されていた1戦だけに、全米枠で放送されたこの中継は2,690万人、視聴率15.2%をたたき出した。さらに19位には第2週のカウボーイズ対ブロンコス戦が2,600万人で入っている。またこの2戦で注目したいのはどちらもいわゆるプライムタイムに行われるナイトゲームではなく、日曜午後開催の試合だったことだろう。本来、在宅率が低くなるので不利と見られる枠だが、こんな数字が出るほどNFLはアメリカの社会に定着しているのである。
地上波ネットワーク別で見てみるとFoxの中継が15入っており、『CBS』と『NBC』の13を上回った。ただFoxは第51回スーパーボウルとプレーオフ4試合を放送しており、その点では横並びといえそうだ。
とはいえ、良い数字ばかりではない。Fox、CBS、NBC、ESPN、『NFL Network(NFLネットワーク)』によるNFL中継の平均視聴者数は1,490万人で、2016年の1,650万人より約10%減となったのである。ネットワーク別ではCBSが11.2%、NBCは10.4%、Foxが9.1%、一番減少率が低いESPNでも7.1%と全ネットワークで視聴者数が落ちている。しかも2016年も2015年に比べて8%減だったため、NFL中継は2年連続で視聴者が減ったことになる。
今シーズン、NFLは2016年の視聴者数減少を受け、ビデオ判定をそれまでのブースからサイドラインのタブレット端末で行うように変更し、ネットワークも中継内でのCM枠の削減や6秒という短尺のCMを放送するなど試合時間の短縮をメインにした対策を講じてきた。しかし、今シーズンは視聴者数減少に歯止めがかからなかったことになる。シーズン終了後さらなる対策が練られることになりそうだ。
それでも、前述した通り、アメリカのテレビ放送においてNFL中継は圧倒的な人気を誇り続けていることに変わりはない。視聴者数の減少についても2016年9月からの14週における4大ネットワークにおける夜間の平均視聴者数は630万人で前年同期より9%だった。NFL中継の落ち込みとほぼ同じである。ネット動画の普及などによるテレビ離れが全体的に起こっており、NFLもそれに巻き込まれているともいえるのだ。
また視聴者が減っているにもかかわらず今シーズンのNFL中継内での30秒CMの放映権料は47万3,775ドルで、2016年の46万8,434ドルに比べて1%上昇したとのこと。むしろNFLの人気の高さが再認識されているともいえるのだ。
NFLの人気を支え、拡大し、莫大な収益ももたらしてきたテレビ中継の動向には今後も注意していきたい。
わたなべ・ふみとし
- 渡辺 史敏
- 兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。