コラム

公式ライセンス商品の売上ランキングから見る選手の人気とその変化

2018年07月16日(月) 05:38

ニューヨーク・ジャイアンツのセイクワン・バークリー【Ben Liebenberg via AP】

昨年度、1年を通して最も人気のあった選手はペイトリオッツのクオーターバック(QB)トム・ブレイディ。こんなランキングをNFL選手会(NFLPA)が発表したが、その後、選手人気に変化があったようだ。

まずNFLPAが4月に発表したのが2017年3月1日から2018年2月28日までの1年間に選手ごとの公式ライセンス商品の売上額上位50人を発表したもの。NFLPAは四半期毎の売り上げランキングも発表している。

ブレイディは2015年にもトップを獲得していた。ランキングが発表されるようになった2014年以降、四半期毎では12回トップ3に入り、一度もトップ9から外れたことがなく、いかに高い人気を維持しているかが分かる。商品ジャンル別ではボブルヘッド人形と子供向け寝間着、等身大ステッカーで首位だった。

QBはブレイディを筆頭にダック・プレスコット(カウボーイズ)が2位、3位にカーソン・ウェンツ(イーグルス)、6位アーロン・ロジャース(パッカーズ)、8位ラッセル・ウィルソン(シーホークス)、10位デレク・カー(レイダース)と6人がトップ10入りしており、やはり花形ポジションであることが現れている。

残る4人は4位にカウボーイズのランニングバック(RB)エゼキエル・エリオットがつけたほか、スティーラーズのワイドレシーバー(WR)アントニオ・ブラウンが5位、ジャイアンツのWRオデル・ベッカムは7位、ペイトリオッツのタイトエンド(TE)ロブ・グロンコウスキーが9位となっている。4位のエリオットは2016年のランキングで新人選手としては初めてトップを獲得していた。昨年、近親者間暴力による6試合の出場停止をめぐって揉めたが、人気の低下はある程度、抑えられたようだ。

第52回スーパーボウルで優勝したイーグルスの選手は50位までに5人が入っている。試合のMVPを獲得したQBニック・フォールズは22位で2年ぶりにランクインを果たした。興味深いのはドリンクボトルなどの製品の売り上げでは他の選手を10倍以上も引き離してトップという点である。またTシャツとパーカーもトップだった。

女性向けジャージーの売り上げではトップ6人のうち4人をプレスコット、エリオット、WRデズ・ブライアント、TEジェイソン・ウッテンのカウボーイズ勢が占めている。

攻撃ポジション別で見るとQBが18人、WRが14人、RB6人、TE4人となっている。オフェンシブライン(OL)では唯一スティーラーズのオフェンシブタックル(OT)アレハンドロ・ビラヌエバが30位で入った。これは以前に紹介した国歌斉唱時の抗議行動をめぐるアクシデントの影響を受けたものである。

対して守備選手は7人がランクインしている。最高位はブロンコスのラインバッカー(LB)ボン・ミラーの13位だった。やはり人気は攻撃選手が優位と言えるかもしれない。

こうしてライセンス商品の売り上げランキングからいろいろなことが見えるが、あくまでこれは昨年度の人気だ。人気はその後も変化している。そのことが分かるのがNFLの公式販売サイト、NFLショップが6月29日に発表した4月から6月半ばまでに販売したジャージーの販売枚数トップ10である。

なんと1位となったのは今年のドラフトで全体2位指名を受けたばかりのジャイアンツのRBセイクワン・バークリーだ。

さらに2位には49ersのQBジミー・ガロポロ、3位にウェンツ、4位ブレイディ、5位ベイカー・メイフィールド(QB、ブランズ)、6位フォールズ、7位サム・ダーノルド(QB、ジェッツ)、8位マーカス・マリオタ(QB、タイタンズ)、9位プレスコット、10位エリオットとなっている。

まず、バークリー、メイフィールド、ダーノルドと1巡指名を受けた新人選手が3人も入ったのは、いずれも低迷するチームを立て直してくれるはずだという新星への期待が出ているのだろう。

ある意味それ以上に期待の大きさが現れているのが2位のガロポロだ。自分が昨年まで控えを務め、昨年度の最多売上を記録したブレイディよりも売れているのである。これは昨シーズン半ばに49ersにトレードされ、先発した最後の5試合で連勝したことからファンの間でついにフランチャイズQBを手にした名門チームの復活にかける想いが導いたものだと思われる。

イーグルスのウェンツとフォールズの順位が拮抗(きっこう)している点にも注目したい。エースとしてシーズン半ばまで活躍しながらも負傷離脱を余儀なくされ、復活にかけるウェンツと、言わば望外の大活躍でスーパーボウルMVPまで手にしたフォールズ。今シーズンそれぞれの立場はまだ不透明だ。そのことがファンの行動も二分しているといえるだろう。

いずれにせよ、選手たちが期待通りの活躍をしてくれることを願いつつ、今はファンにとっても準備の時期といえそうだ。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。