新天地で改心なるか、ペイトリオッツ入りのジョシュ・ゴードン
2018年09月21日(金) 07:05「絶対王者」と「トラブルメーカー」のまさかの合体だ。過去に何度もNFLから出場停止処分を受けてきたワイドレシーバー(WR)ジョシュ・ゴードンがブラウンズからペイトリオッツにトレードで放出された。リーグトップクラスの才能を持つとされながら数々の不祥事でそのポテンシャルを発揮できずにきた問題児が覚醒することはあるのか。
ゴードンは2012年ドラフトで2巡目に指名されてブラウンズに加入。スピードレシーバーとしてすぐに先発の座をつかみ、2年目のシーズンにはNFLトップの1,646ヤードをマークした。スタータークオーターバック(QB)に恵まれないブラウンズでのこの成績はゴードンの能力の高さを物語るものだ。
しかし、その能力はその後ほとんど発揮されないままに現在に至る。薬物関連の度重なる出場停止処分によって、ゴードンが過去6シーズン(今季を含む)で出場した試合はわずかに11試合だ。
ようやく処分が解けた今夏もキャンプには参加せずにブランズの首脳陣をやきもきさせた。そして、ようやく開幕直前にチームに合流して第1週のスティーラーズ戦には出場した。ところが、第2週のセインツ戦の前日になって急にハムストリング痛を訴えてチームから離脱した。
さすがに堪忍袋の緒が切れたヒュー・ジャクソンHC(ヘッドコーチ)は放出を決意。ダメもとでトレードの打診をしたところ、ペイトリオッツが名乗りを上げたということだ。交換条件は来年のドラフト5巡目指名権でペイトリオッツはブラウンズから7巡目指名権も受け取った。
ペイトリオッツはディープスレットのレシーバーを欲しい状況にある。ダニー・アメンドーラ(フリーエージェント)とブランディン・クックス(トレード)が退団し、ジュリアス・エデルマンがあと2試合の出場停止処分が残っているなかで、WRクリス・ホーガンとタイトエンド(TE)ロブ・グロンコウスキーのみが経験あるレシーバーだったからだ。第2週には早くもジャガーズに黒星を喫し、危機感も募らせていた。
懸念されるのは問題児のゴードンがこれまでの行動を反省して心を入れ替え、フットボールに専念するだけの覚悟があるのかどうかだ。ペイトリオッツはブラウンズに比べてプレーオフに出場する確率が格段に高く、NFL選手ならだれでもが手にしたいスーパーボウル優勝も夢ではない。ポジティブに考えるならこの環境がゴードンのモチベーションになって、まじめにプレーするきっかけになるだろう。
一方で、ブランクが長いことからくるコンディション不足の不安も否めない。ゴードンがNFLトップのレシーバーになったのはすでに5年前だ。その後、ほとんど実戦を経験していないゴードンにどれだけ能力が残されているのか。
正確無比で、並のレシーバーでも一流の活躍をさせてしまうトム・ブレイディのパスはレシーバーならだれでもがあこがれる。ビル・ベリチックHCはこれまでにもWRランディ・モスやコーナーバック(CB)ダレル・リービスといった「曲者」を手なずけてきた経験がある。この2人の力でゴードンを再生できるのか。それとも性根は変わらないのか。今後のペイトリオッツとゴードンに注目だ。
いけざわ・ひろし
- 生沢 浩
- 1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。