コラム

不振の原因でゴタつくジャイアンツ

2018年10月21日(日) 15:31

フィラデルフィア・イーグルスのナイジェル・ブラッドハムとニューヨーク・ジャイアンツのイーライ・マニング【AP Photo/Julio Cortez】

チームが長く低迷を続けるとファンやメディアからだけでなく、チームの内部からも批判の声が出て瓦解につながることはままある。現在、その危機に直面しているのがジャイアンツだ。11日に開催されたサーズデーナイトフットボール(TNF)でジャイアンツは地区ライバルのイーグルスに13対34と完敗を喫した。これで今シーズンは1勝5敗となり、NFC東地区最下位に低迷する上、過去22試合で18試合を落としているのだ。

そんなジャイアンツの低迷で議論の的となっているのがクオーターバック(QB)のイーライ・マニングである。今年15年目のマニングは2004年の入団以来、フランチャイズQBとして君臨してきた。2度にわたってチームをスーパーボウル優勝に導き、その2回でMVPも受賞している。ただ、昨年以来、プレーレベルの低下が真剣に指摘されるようになった。今シーズンは6試合全てに先発し、230回中158回のパスを成功させ、1,662ヤードを獲得、6タッチダウンを挙げてインターセプトは4という成績だ。先のイーグルス戦でもパス43回で24回の成功、281ヤード獲得と、数字だけを見るとそれほど悪いように見えない。ただ、この試合でマニングは4回サックされ、さらにプレッシャーがかかった中で成功させたパスはわずか2回で16ヤードしか獲得できなかったのである。

このパフォーマンスにヘッドコーチ(HC)のパット・シャーマーが不満を感じるのも当然だろう。試合後、シューマーHCはスポーツ専門局『ESPN』に対し、「自分が何度も驚いているところをカメラが捉えたのはわかっている」とコメントした。その一方で「われわれはイーライを信じている。クオーターバックの交代は考えていない」ともした。

また、この状況を受けてファンの間では、昨年に指揮をとっていたベン・マカドゥーHCが第13週に不振を理由に210試合連続で先発していたマニングと、現チャージャーズQBジーノ・スミスを交代させたことは正しかったのではないか、との声が高まっている。当時、この交代策にはファンやメディアからの非難が殺到し、その後、マカドゥHCとジェネラルマネジャー(GM)のジェリー・リースが更迭されている。

さらにマニングの問題でとばっちりのような批判にさらされているのが、ランニングバック(RB)セイクワン・バークリーである。今年、ドラフト全体2位指名を受けて入団したバークリーは、その身体能力の高さから大きな期待がかけられてきた。実際、ここまで6試合で438ランヤード、4タッチダウンを挙げ、ジャイアンツ攻撃陣の大きな武器となっている。それでも、今さら感が強いとはいえ、ジャイアンツはバークリーではなく、サム・ダーノルドやジョシュ・アレンといったQBを指名すべきだったのでは、という意見が出る状況なのだ。

そんなフラストレーションのたまるチームの状況に対し、苛立ちを露わにしたのがワイドレシーバー(WR)オデル・ベッカムである。やはりESPNに対し、「自分たちのハートだ。自分たちのエネルギーだ。試合に臨むときに必要なものだ」とチームの士気が下がっていることを示唆したのである。

対してそのベッカムを批判したのがジャイアンツのオーナー、ジョン・マラだった。16日のオーナー会議後、マラは居合わせたメディアに「彼にはオフフィールドで何か言ったり、したりするんじゃなく、フィールドでのプレーで見出しを作ってほしい。彼はもう少し多くプレーすることともう少し発言を控える必要があると思う」と語ったのである。

選手、コーチばかりでなくオーナーまで巻き込んでゴタゴタしてきたジャイアンツ。シーズン終了までに浮上することはできるだろうか。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。