コラム

今ドラフト最高のエッジラッシャーと評されるニック・ボサとは

2019年04月22日(月) 05:42


2018年NFLドラフト【AP Photo/David J. Phillip】

今年のドラフトではパスラッシュの名手、すなわちエッジラッシャーに人材が多く、5名ないし6名の選手が1巡指名を受けるのではないかと予想される。なかでも最も評価が高く、全体1位指名もあり得るとされるのがオハイオ州立大学のニック・ボサだ。

同じオハイオステート・バックアイズ出身で現在はチャージャーズに所属するジョーイ・ボサの実弟であり、父ジョン(ボストンカレッジ)も1987年ドラフトでドルフィンズから1巡指名を受けた経緯がある。まさにフットボール一家のサラブレッドだ。

1年生時から先発ポジションを与えられ、3年間で26サック、51個のロスタックルを記録した。2年生ではオールビッグテンカンファレンスのファーストチームにも選ばれた。スピード、テクニック、パワー、機動力の全てを兼ね備え、そのパスラッシュはプロボウル選出経験もあるジョーイに勝るとの評価もある。

大学3年間と述べたが、実際には昨季は3試合目にコアマッスルを負傷し、以降の試合には出場しておらず、大学での出場試合は29試合である。

ニックはコアマッスルの負傷後、すぐにシーズン中のチーム復帰断念を発表しており、これには「自己中心的だ」とか「チームを見限った」などの批判を多く受けた。当時のヘッドコーチ(HC)アーバン・マイヤーですらレギュラーシーズン中の復帰を期待していたという。

しかし、最近のESPNとのインタビューの中でニックはコアマッスルが断裂するほどの大ケガであり、医師から手術後も最低12週間はリハビリが必要であると診断されたことを明かしている。日常生活にも支障をきたすほどの痛みに悩まされ、精神的に追い込まれた時期もあったそうだ。兄や両親、高校時代のコーチに電話をかけまくり、ただおしゃべりをすることで精神の均衡を保っていた時期もあったという。

それほどの重傷でありながら世間からの批判を多く浴びたのは彼のアウトスポークンな性分も少なからず影響しているだろう。ニックはドナルド・トランプ大統領の支持者で、それをソーシャルメディアでも表明している。また、NFLへの抗議活動をした元49ersのコリン・キャパニックの行為に対しては「道化だ」との批判をするなど舌鋒は鋭い。

ただ、最近はソーシャルメディアでの発言も少しおとなしくなってきた。それはやはりドラフトで指名される際のチームからの評価を気にかけているためだ。「サンフランシスコに入団することになるかもしれないから」とボサはトーンダウンの理由を説明している。

コアマッスルの故障による影響は心配されるものの、ボサは1位指名のカーディナルスから5番目のバッカニアーズまでどのチームが指名してもおかしくない存在であり、どのチームでもディフェンスの中心選手として活躍することができるだろう。将来が楽しみな逸材の一人である。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。