コラム

2019年版ヘルメット性能テスト結果発表

2019年04月22日(月) 09:44

ニューイングランド・ペイトリオッツのヘルメット【AP Photo/Tony Gutierrez】

4月12日、NFLとNFLPA(NFL選手会)は協働で2019年版ヘルメット性能テスト結果を発表した。これは選手のヘルメット選定の手助けとすべく、カナダ・オタワの独立系ヘルメット・テスト研究所、バイオキネティックスに委託し、2017年から毎年発表しているもの。脳しんとうの原因となる衝撃の吸収性能を測定し、ランキング化している。

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今回最も性能が高いと判定されたのはVICISのZero1。3年連続でトップ評価となっている。同ヘルメットの特徴は手で押すとたわむほど柔らかな外部シェルと内部に配置された多数の円柱形ショックアブソーバー、内部のシェル、さらに頭部にフィットするパッドというユニークな4層構造にある。今回の結果に対し、同社デーブ・マーバーCEOは「Zero1は最初に導入された時技術的なブレイクスルーとなりました。そしてNFLとNFLPAのランキングで3年後にもナンバー1であり続けています。バージニア工科大学によるユース向けヘルメットの格付けでもZero1は最高評価を受けており、VICISは今やあらゆるレベルのフットボール選手にとって最高の選択肢となっています」とコメントしている。

この他、トップ3にはシャットのF7 LTD、リデルのスピードフレックス・プレシジョン、ダイヤモンドが入っている。

今回新モデルを中心に11のヘルメットがテストされ、昨年までの結果と合わせ34のヘルメットがランクインした。うち上位27のヘルメットは「高性能グループ」と評価されている。今回テストされた11のヘルメットのうち6はトップ10入りしており、ヘルメットの開発技術の向上が認められる。昨シーズン終了時点で74%の選手が高性能ヘルメットを使用していたということだ。

一方、昨年11のモデルが「使用禁止ヘルメット」に指定されたが、今回新たに禁止されたヘルメットはなかった。昨シーズンは禁止ヘルメットを以前から使用していた選手のみ継続使用が認められ、最終週の時点で32人、全選手の2%未満が使用していたということである。ただ今シーズンは継続しようも認められず、全面禁止となる。

さらに発表では2015年から2018年にかけて、高性能ヘルメットを使用している選手は評価の低い製品を使用している選手より、報告された脳しんとうの率が低かったという分析結果も明らかにされた。

トップ25のヘルメットをメーカーで分類するとシャットが11、リデルが7、ゼニスが6、VICISが1となっている。

また、NFLとNFLPAはこの研究結果について、NFL以外の大学や高校、ユースのフットボールに適用すべきでないともしている。

こうした脳しんとうなど頭部の負傷や健康に対するNFLの対策は現行製品への評価だけでなく、開発にも及んでいる。新ヘルメットや器具の新たなアイデアを競うコンテスト、ヘッドヘルステック・チャレンジは第6回の優勝企業2社が3月26日に発表された。ウインドインパクトはシャットの既存ヘルメット、エアXPプロQ10で使用でき、あらゆる方向からの衝撃を低減できるクラッシュクラウド技術の開発資金14万8,820ドルを獲得。オークサダインはXPFと呼ばれるヘルメット用新素材の開発で8万6,688ドルを得ている。

こうした地道な取り組みが脳しんとう問題の軽減につながるのだ。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。