コラム

注目のQBカイラー・マレーを射止めるのは?

2019年04月15日(月) 08:04


2018年NFLドラフト【James D Smith via AP】

今年のドラフトほどモック(予想)にばらつきがあるのも珍しい。その原因はクオーターバック(QB)カイラー・マレー(オクラホマ大学)にある。

複数のモックドラフトを見ると今年の1巡予想ではエッジラッシャー、すなわちディフェンシブエンド(DE)やアウトサイドラインバッカー(OLB)のパスラッシャーに人材が豊富であることが分かる。ニック・ボサ(オハイオ州立大学)、ジョシュ・アレン(ケンタッキー大学)、モンテズ・スウィート(ミシシッピー州立大学)、クレリン・ファーレル(クレムゾン大学)、ブライアン・バーンズ(フロリダ州立大学)といった選手が上位指名を予想されており、おそらくその通りになるだろう。

ここでクローズアップされてくるのがマレーの存在だ。昨年のハイズマントロフィー受賞QBで3年生だった昨年は投げては4,361ヤードと42タッチダウンパスで被インターセプトはわずか7回。グラウンドゲームでは1,001ヤードを走り、12回のラッシングタッチダウンを決めた。

野球では外野手として活躍し、メジャーリーグからも熱い視線を注がれて1巡ないし2巡での指名は確実な人材と騒がれた。しかし、野球ではなくフットボールでプロを目指すと宣言し、話題を集めたのは記憶に新しい。

昨年の輝かしい成績の一方で、身長が178センチしかなく、カレッジの3年間でフルタイムのスターターだったのは昨季だけというネガティブな面もある。そのためかマレーの指名順位の予想も専門家やメディアによってまちまちだ。

全体1位指名権を持つカーディナルスがマレーを射止めるとする予想がある一方で、1巡後半まで見送られるとするモックドラフトも少なくない。

今年は例年に比べると1巡で指名されるレベルのQBの人材はそれほど豊富ではない。また、今年のドラフトでQBを指名しなければならない喫緊のニーズに迫られるチームも多くない。これがマレーの指名順位予想を難しくしているのだ。

カーディナルスが本当にQBを指名するならば昨年のジョシュ・ローゼンに続き2年連続のQB獲得となる。オフェンス畑出身のクリフ・キングスベリーが新ヘッドコーチ(HC)に就任したことで新たな人材を求めているのは事実で、ローゼンを断念してマレーに切り替える可能性は十分にある。その一方で、連続して新人QBを先発起用するリスクも負うことになる。

ローゼンのトレード放出が噂されて久しいが、現在のところ信用に足る情報はないままだ。ただし、昨年の成績(14試合で2,278ヤードパッシング、11タッチダウンに対して14インターセプト、レーティング66.7。そのほか10回のファンブルで5回のロスト)を見る限りではキングスベリーの信頼を十分に勝ちとっていないと言われても仕方ないだろう。

13位指名権を持つドルフィンズや6番目、17番目のジャイアンツもマレー獲得に乗り出す可能性が取りざたされているチームだ。ドルフィンズはライアン・タネヒルを断念してライアン・フィッツパトリックを獲得した。しかし、フィッツパトリックも将来をゆだねるべき人材ではなく、ドラフトに人材を求める可能性はある。

ジャイアンツはそろそろ「ポストイーライ・マニング」の人材を確保しておきたい。カーディナルスが指名を見送れば6番目指名権を行使して獲得するかもしれない。

ダークホースはレイダーズだ。まさかとは思うが、一部ではジョン・グルーデンがデレック・カーの放出を視野に入れているとの情報がある。レイダーズは1巡では4番目と24番目指名権を持つ。カーと24番目指名権をカーディナルスに譲渡して1位指名権を獲得し、マレーを獲得する・・・・こんなシナリオもあるだろうか。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。