コラム

離脱者続出で弱り目に祟り目のベンガルズオフェンス

2019年08月12日(月) 05:30

シンシナティ・ベンガルズのA.J.グリーン【AP Photo/Bryan Woolston】

16年に及んだマービン・ルイス前HC(ヘッドコーチ)時代に終わりを告げ、36歳のザック・テイラー新体制でチーム再建を目指すベンガルズが災難続きだ。オフェンスを中心に主要選手の離脱が相次ぎ、開幕までに万全の体制を整えられない懸念がある。

最も大きいのはワイドレシーバー(WR)A.J.グリーンの故障欠場だ。グリーンはキャンプ初日にコーナーバック(CB)ドレイ・カークパトリックと接触して着地した際に左足首をひねった。カートで運び出される騒ぎとなり、MRI検査の結果足首の靱帯断裂と診断された。すぐに手術をすることになったが、一部報道では6週間から8週間の戦列離脱を余儀なくされるという。

グリーンは故障に強いイメージがあったが、この3年ほどは離脱する試合が多くなった。昨年も右足つま先の故障で数試合に欠場している。再発しやすい箇所なだけに今年のオフは練習のほとんどを免除されてコンディションを整えてきたが、皮肉にも練習が本格化するキャンプで重傷を負ってしまった。

ちなみにグリーンは今季が契約最終年で、延長を勝ちとるにはそれにふさわしい実績を残す必要がある。昨年に続き故障で貢献できないとなるとチームの評価は下がらざるを得ないだろう。

オフェンスライン(OL)も離脱者の影響を大きく受ける。このオフはオフェンシブタックル(OT)アンドレ・スミス、セドリック・オグブエヒ、ジェイク・フィッシャーが相次いで退団した。そこでドラフトでは1巡目11位指名でアラバマ大学のOTジョナー・ウィリアムズを獲得した。ウィリアムズはレフトタックル(LT)の先発になる予定で、ベンガルズも将来のOLの中心になるべき存在として期待をかけていた。しかし、春のトレーニング中に肩を壊してデビュー前に今季絶望となってしまう。

さらにキャンプ直前にはレフトガード(LG)で長くスターターを務めてきたクリント・ボリングが血液疾患のために引退。テイラーのオフェンスプランは大きな見直しを迫られることとなった。

グリーンの穴は昨年ブレークしたテイラー・ボイドで埋めることは可能だが、人材の乏しいOLはやりくりが難しい。現在のところ新たな選手を獲得する動きは出ていないが、間もなく始まるプレシーズンの内容次第ではフリーエージェント(FA)やトレードによる緊急の補強も必要になるかもしれない。

3年連続で遠ざかっているが、それ以前は5年連続でプレーオフに出場した。その原動力になったのは得点力の高いパスオフェンスだった。テイラーも当然その再来を目指しているはずだが、その前途は多難というほかはない。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。