コラム

NFL版わらしべ長者? マホームズ獲得のためにトレードされた1巡指名権の行方

2020年02月23日(日) 11:44

2018年NFLドラフト【Perry Knotts via AP】

チーフスに50年ぶりのスーパーボウル優勝をもたらし、自らも試合のMVPに輝いたクオーターバック(QB)パトリック・マホームズがドラフト1巡指名を受けたのは2017年、チーフスではまだアレックス・スミスがバリバリのスターターを務めていた。

それでもアンディ・リードHC(ヘッドコーチ)はテキサス工科大学で全米1位の5,052ヤードパッシング(2016年)を記録したマホームズの指名を決断した。しかし、この年のチーフスの1巡指名順位は27番目。マホームズ指名には難しい位置だった。

そこでチーフスは10番目指名権を持っていたビルズにトレードを持ち掛け、同年の1巡指名権を交換したうえで3巡指名権を譲渡、さらに翌年の1巡指名権を差し出した。この時の交換条件だった1巡指名権がどのように使われたかをたどるとなかなか面白い。

ちなみに2017年のビルズはチーフスと交換した1巡指名権でコーナーバック(CB)トレデイビス・ホワイトを指名し、3巡(全体91位)指名権はラムズに譲渡。ラムズはセーフティ(S)ジョン・ジョンソンを獲得した。

ビルズがチーフスから譲り受けた2018年の1巡指名権はチーフスの成績により全体の22番目と決まった。ビルズがこの指名権をそのまま使っていれば話は簡単だったのだが、2018年のドラフトでこれをレイブンズに譲渡して16番目へとトレードアップしている。これで指名したのがラインバッカー(LB)トレメイン・エドマンズだ。エドマンズは2年間で31試合に先発出場し、計236タックルを記録するなど活躍している。

レイブンズはビルズからもらった22番目指名権をさらにタイタンズに譲渡。こちらは25番とのトレードダウンだ。この25番目指名権はタイトエンド(TE)ヘイデン・ハーストに行使された。ハーストはマーク・アンドリュースに次ぐチームの第2タイトエンドとしての座を確立した。

そして、タイタンズが1巡目22位で獲得したのはルーキーシーズンから先発LBに定着したラシャーン・エバンスだ。

昔話のわらしべ長者のようにいろんなチームの指名権に替わったチーフスの2018年1巡指名権だが、さすがに1巡だけあってそれぞれのチームで中心選手となっている。そして、プレーオフではエバンスのいるタイタンズがハーストのレイブンズを破り、マホームズとチーフスがAFC決勝でタイタンズを退けたのは因縁めいていて面白い。

いけざわ・ひろし

生沢 浩
1965年 北海道生まれ
ジャパンタイムズ運動部部長。上智大学でフットボールのプレイ経験がある。『アメリカンフットボールマガジン』、『タッチダウンPro』などに寄稿。NHK衛星放送および日本テレビ系CSチャンネルG+のNFL解説者。著書に『よくわかるアメリカンフットボール』(実業之日本社刊)、訳書に『NFLに学べ フットボール強化書』(ベースボールマガジン社刊)がある。日本人初のPro Football Writers Association of America会員。