コラム

資産価値で突出するNFLチーム、カウボーイズが5年連続世界一に

2020年08月11日(火) 06:41

AT&Tスタジアム【Ryan Kang via AP】

経済誌フォーブスが恒例の世界のスポーツチーム資産価値トップ50を発表した。これは各チームの収益や本拠地とするスタジアムなどの資産などから同誌が独自に算定しているものだ。

世界に名だたるチームの中でトップとなったのはカウボーイズで、これでその額は55億ドル。昨年が50億ドルだったので1年で5億ドルも上昇したことになる。また1989年にオーナーのジェリージョーンズがチームを買収した額は1億5,000万ドルで、実に32年間で約37倍に増やした計算だ。

2位はMLBのニューヨーク・ヤンキースで50億ドルとなっている。今回50億ドルを超えたのはこの2チームだけだった。

ちなみに3位はNBAのニューヨーク・ニックスの46億ドル、4位がNBAロサンゼルス・レイカーズ44億ドル、5位NBAゴールデンステート・ウォリアーズ43億ドル、6位サッカー、レアル・マドリード42億4,000万ドルと続く。

NFLでは7位にペイトリオッツ(41億ドル)、9位にジャイアンツ(39億ドル)と10位までに3チームが入った。スーパーボウル王者のチーフスが23億ドルで45位なのはちょっと意外かもしれない。

ランクインした50チームの内訳でやはり突出しているのが、NFLだ。27のNFLチームがランクインしているのである。2018年には29チームが、昨年は26チームだった。

平均価値でもNFLは群を抜いている。NBAがここ10年で平均価値を6倍も増やし、21億2,300万ドルとしたが、それでもNFLの28億6,000万ドルには及ばない。さらにMLBは18億5,200万ドル、NHLは6億6,700万ドルである。

平均収益も新型コロナウイルスの感染拡大前にオーナー側に有利な労使協定を結べたこともあり、NFLチームの平均収益は1億0,200万ドルに達した。2位NBAは7,000万ドル、3位MLBが5,000万ドル、4位NHLが2,500万ドルとなっている。

これだけの高収益を上げられている要因だが、まず他のリーグに比べ大型のスタジアムが多く観客からの収入が多いことがある。だがそれ以上に大きいのがテレビ中継による放映権料の高さだ。2019年に放送されたアメリカのテレビ番組トップ100のうちスポーツ中継番組が88を占めたのだが、トップのスーパーボウルを皮切りにNFLの中継は73に上ったのである。アメリカ放送業界において圧倒的な人気を誇るお化けコンテンツなのだ。それ故放映権料は高く、現在NFLには1年に総額65億ドルの権料が契約ネットワークから支払われている模様だ。

さらに現在のテレビ中継契約は2022年までに全て満期を迎える。そのため現在契約更新に向けた交渉がNFLとネットワークの間で繰り広げられている模様だ。既にNBCがサンデーナイトフットボールの継続を望んでいる、Foxはサーズデーナイトフットボールよりも日曜午後の放送権を優先させている、さらに資金を調達するためにゴルフの全米オープンから撤退した、マンデーナイトフットボールを放送してきたスポーツ専門局がカードに不満を持っている、といった交渉内容も漏れ伝わっている状況だ。コロナ禍によってアメリカのスポーツ界も様々な損失が出ているが、先ほど紹介した人気の高さもあって、新たな契約では放映権料の大幅アップは確実、2倍に達するのではないかという予測も出ているのである。そのため来年以降もNFLの増益は続くだろう。

これだけの高収益、成長が望めるのならオーナーになりたいという富豪が多いということも十分推察できる。世界一の富豪、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏が希望しているという報道もある。が、それが4大スポーツの中で一番難しいのもNFLのようだ。記事によればオーナーのチーム所有年数が一番長いのがNFLで39年となっている。NBAとNHLの17年、MLBの20年と比べて圧倒的に長い。さらに過去5年間でオーナーが変わったのはパンサーズの1チームのみである。しかも不祥事絡みでの売却だった。

2018年に前オーナーのポール・アレン氏が逝去したシーホークスや前オーナーのパット・ボウレン氏の遺産相続で揉めているブロンコスも売却に出る可能性があるとされるが、先は読めない。

NFLのすごさが再び数字として出されたランキングだといえよう。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。