コラム

新スタジアム建設で揺れるビルズとベアーズ

2021年10月18日(月) 11:33


ハイマーク・スタジアム【AP Photo/Joshua Bessex】

 
今シーズン、好調なビルズとベアーズだが、同時に新スタジアムの建設を巡りその動向が注目されている。
 
ビルズの現在の本拠地であるハイマーク・スタジアムがオープンしたのは48年前の1973年。1998年と2013年の2回、大規模な改修が行われたものの、老朽化は否めない。このため、ビルズのオーナーであるペグラ夫妻は現在のスタジアムと同じバッファロー市の南、オーチャードパークの隣接地に新たなスタジアムの建設を主張してきた。
 
しかし、現在7万1,608席ある収容人数を6万席に削減するというものの、建設費は14億ドル(約1,600億1,000万円)に達すると見られている。このため夫妻は建設費に公的資金の投入を望み、叶わなければ移転することもちらつかせながら地元自治体と交渉を続けている状況だ。2013年の改修では地元エリー郡が改修費2億2,700万ドル(約259億5,000万円)を出した経緯がある。現在のリース契約には厳格な移転禁止条項があるものの、2023年で終了することになっている。
 
これに対し、ニューヨーク州政府はエンジニア企業『AECOM』と契約し、新スタジアム建設候補地の評価を依頼。これによって、オーチャードパーク以外にバッファロー市のダウンタウン近くも有力地として挙がっていることが10月になって明らかになった。実は以前に新スタジアム建設の話が出た際にも同地が候補になったことがある。ただ、その際は建設費が10億ドル(約1,142億9,000万円)近く高くなるという試算が出たため、候補地から外されていた。
 
また、ビルズは建設費の一部を捻出するため、シーズンチケットを購入する権利、パーソナル・シート・ライセンス(PSL)の発売を計画しているとも報じられている。PSLは全てのシーズンチケット購入者に保有が義務づけられるもので譲渡可能だ。報道ではビルズは最大5万席分のPSLを1席約1,000ドル(約11万4,000円)で販売予定だという。これで最大5,000万ドル(約57億2,000万円)を得られる計算だ。
 
一方のベアーズといえば、シカゴのダウンタウンに建つ本拠地ソルジャー・フィールドが開業したのは1924年、今から97年前である。ベアーズは71年からここをホームとしてきた。2003年には基礎部分を含む大規模な改修工事が行われ、クラシックな外観を残しながらも近代的なスタジアムへと生まれ変わっている。
 
それにも関わらず、ベアーズは同地を離れようとしているのである。そのことが明らかになったのはベアーズがシカゴから北に約48キロ離れたアーリントン国際競馬場を1億9,720万ドル(約224億9,000万円)で購入する契約を結んだことによる。
 
敷地面積は約132ヘクタールあり、そこにチームは収容人数を拡大した閉鎖型スタジアムと豪華な付帯施設を建設する計画だという。特に重要とされているのは合法化により拡大しているスポーツベッティング(スポーツ賭博)のラウンジ設置の模様だ。ベアーズのテッド・フィリップス社長はソルジャー・フィールドに同施設を設けることについて地元自治体から交渉を拒否されたと証言している。
 
ただ、シカゴ市とベアーズはスタジアムのリース契約が2033年までとなっており、このため市は契約満了までとどまるべきだと主張している。2026年にリースが破棄された場合、チームは市に8,400万ドル(約96億円)を支払うことになっているものの、それ以降の金銭的ペナルティは減少する内容になっているということだ。
 
一方で、ベアーズはソルジャー・フィールドの所有者であるシカゴ・パーク地区とさらなる改修で交渉も行っている。2003年の改修では総改修費7億3,300万ドル(約836億円)のうち、4億3,200万ドル(約492億7,000万円)は公的資金だった。
 
新スタジアムを手に入れられるか否か、どちらのチームも紆余曲折が続くのは必至である。

わたなべ・ふみとし

渡辺 史敏
兵庫県生まれ
ジャーナリスト兼NFLジャパン リエゾン オフィスPRディレクター。1995年から2014年3月までニューヨークを拠点にアメリカンフットボールやサッカーなどスポーツと、さらにインターネット、TV、コンピュータなどITという2つの分野で取材・執筆活動を行う。2014年4月に帰国、現職に。『アメリカンフットボール・マガジン』、『日刊スポーツ電子版連載コラム:アメリカンリポート』、『Number』などで執筆中。